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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
93/114

Episode:93

「どうすると言われても……夏休みはもう、終わりだろう? 学院へ帰るしか……」

 少々ズレたシルファらしい答えに、思わず苦笑する。


「そういう意味ではありませんよ。もっと先、学院を出てからどうするか、ということです」

「出てからって、学院で就職の手配をしてもらって、働くのだろう? あるいは、ルーフェイアのお母さんに頼んで」

 予想通りの答えが返ってくる。


「そうですね。ではどういった場で働くのか、端的に言えばやりたいことはないのですか?」

「え……」

 シルファが答えに詰まった。やはり、心配していたとおりだったらしい。

 彼女がいま目標にしているのは、タシュアだ。目の前に居る相手に、少しでも追いつくことだけを考えている。


(それが悪いとは言いませんが……)

 ただ、将来へはなかなか繋がらない道だ。ひたすら追いかけて、結局何にもならなかった、ということも考えられる。

 当然だが、そうなって欲しくはなかった。


「漠然としすぎてわかりづらいですかね。具体例を出しましょうか」

 困惑しているシルファに、順に説明していく。


「例えばより専門的な知識や技術が身につけられる、大学へ進学という道もあります。あるいはこのまま学院に残り、士官候補として各国の軍に進むこともできます。もし、やりたいことが見つからなければ、それを探すために各地を見て回るのも、良い経験になると思いますよ」


 状況が変わった今、選択肢は多岐にわたる。本人がただ遊んで暮らそうというのでなければ、ほとんどのことでサポートが受けられるはずだ。

(まったく、たいしたお節介ですこと……)

 だがそれが、的確に働いているのは事実だった。シュマーで采配を振るっているのは、伊達ではないようだ。


「やりたいことは別に、学院や軍と、関係がなくてもいいのです」

 シルファがはっとした表情になった。何か思い当たったらしい。

 本来なら、シエラに来ることもなかったシルファ。あんなことさえなければ、財のある両親に守られ危険を冒すこともなく、不自由のない生活ができていただろう。


 そして今、そういう生活へ戻る選択肢までも、彼女の目の前にはある。

 何しろあの性格のカレアナだ。シルファが本気で望むなら、彼女が追い出された武器商の実家を、強引に買い戻すくらいやってのけるに違いない。


 ――やや癪に触るが。

 だがそれで彼女の望みが叶うなら、タシュアとしては受け入れられる範囲だった。


「目標、夢、野心、言い方はこの際何でも良いでしょう。ともかく、そういうものです」

「……考えたこともないな……」

 一途なシルファにとっては、遠大な話に思えたのだろう。どこか遠くを見るような瞳になる。


 実際、学院生が最終的な進路を真剣に考え出すのは、最終学年かその前の年くらいだ。まだ少し間があるシルファが実感がないのも、そうおかしなことではない。

 それでもタシュアは、そのままにしておけなかった。自分たちが在籍しているのはMeSのシエラ学院、それも本校だ。何があるか分からない。


 タシュアはかつて身内と呼べる存在を、目の前であっさりと亡くした。それ故に、「何もないだろう」と楽観視できない。

 ここから先は、彼女のトラウマに触ることになるかもしれない。そう思いながらもタシュアは、核心へと話を進めた。






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