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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
91/114

Episode:91

「よく分からないが……買われるとどうなるんだ?」

「特には。時々急に呼び出されて、よく分からない任務まがいのことを、させられることはありますが」

 シルファがあきれた顔になった。


「それじゃいったい、何のために買うんだ? 意味がないじゃないか」

「私に訊かれても。買った当人に聞いてください」

 そうは言ったものの、だいたいの見当はついていた。おそらく、母親がらみだろう。


 タシュアの養母であるローズとカレアナは、かなり親しかったらしい。

 そして、あの性格のカレアナだ。友人に子が居た――ルーフェイアからの連絡で気づいたのだろう――と知って、保護のために策を立て、こんな形で庇護を与えようと思いついたに違いない。

 それがシルファにまで及ぶとは、さすがに思わなかったが……。


 当のシルファはまだ、不思議そうだった。

「ともかく、買われたんだな……。何を、どうすればいいんだ?」

「何も。なにしろこの買い取りは、保護が目的ですから」

「保護? 意味が分からないんだが……」


 当たり前だと思う。こんな常軌を逸した話など、分かるほうがおかしい。

 その「常軌を逸した話」を、シルファに順を追って説明していく。


「買取りというと分かりづらくなりますが、これは言うなれば、無期限の任務のようなものです。ですからこれを盾に、他の任務を断れるのですよ」

「え……?」


 任務を断る学院生は、まずいない。断れば何らかの不利益が発生し、最悪の場合退学となるからだ。

 それが可能ということが、どれほどの特権なのかは、上級隊のシルファにはすぐ分かったようだった。


「もちろん、限度はあるでしょうがね」

「そうだろうな」

 いくら盾があるにせよ、生徒の面倒を見ているのは学院だ。その学院が損失をこうむるようなことは、さすがに許されないだろう。


「それにしてもそんなこと、誰が、何のために……」

「『誰が』は、ここの主ですね。

 何のためにというのは先ほど言ったとおり、当人にでも訊いてください。まぁ状況から察するに、保護を与えたくなった、と言ったところでしょうが」

 シルファが考え込む。


「理由はともかくとして、ここの主というのは……あの車椅子の人か……」

「違いますよ。ルーフェイアの母親のほうです」

 一瞬の間。

 そしてシルファは、納得したように何度も軽くうなずいた。


「あの人なら……確かにやるかもしれないな」

 どういうわけか、あっさりと受け入れてしまったようだ。

(何をしたのやら)

 カレアナの行動は常に常識外だが、シルファに対しても、そういうことをやったらしい。


「だがこれじゃ、ちゃんとした保護には……ならなくないか? 断れない任務は、危険なものが多いだろうし」

 シルファの問いに、感心する。いつの間にかこういうことを、瞬時に気づくようになったようだ。


 実際シルファの言うとおり、断れない任務があるとすれば、「他の生徒では代えが利かないもの」だ。

 当然そういうものは、名指しされた生徒の能力でしか為せないもので、それだけに危険も伴う。

 その点を、シルファは指摘したのだ。





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