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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
90/114

Episode:90

 歩いてすぐの屋敷へ、二人して戻る。

「部屋はどこです?」

「こっちだ」


 さすがにシルファの部屋は分からないため、彼女の先導で廊下を歩いていく。

 暗くて足元が見えづらいのだろう、シルファの歩調はゆっくりだった。


(せめて客が居る間くらい、明かりを点ければいいものを)

 夜目の利く自分はさほど困らないが、シルファはそうは行かない。だいいちこれでは、夜中に部屋を出た客が、何かにぶつかって怪我をしかねない。


 そんなことを思いながら着いた部屋は、タシュアにあてがわれたのと同じ階だった。どうやらこの階すべてが、客用になっているらしい。

 鍵を開け中に入ったシルファに続いて、タシュアも部屋に足を踏み入れる。


(……おや)

 点けられた明かりに目を慣らしながら、見回した室内は、タシュアの部屋より立派だった。ルーフェイアの客ということで、最上位の部屋が充てられたのだろう。


「それで、話とは何だ?」

 声を少し尖らせて、シルファが言う。先程はだいぶ気持ちの整理がついたように見えたが、違ったようだ。


「その前に、着替えを。風邪をひきます」

 促すと、彼女はうなずいてクローゼットを開けた。しばらく逗留しているせいで、持ち物は鞄から出してあるらしい。

 着替えを持って、部屋に備えられた浴室へ、彼女の姿が消えた。


 扉ごしに響く水音を聞きながら、どう言えばいいのか考える。

 シルファが向けている好意がどんなものかは、分かっているつもりだった。彼女自ら身体を許すのが、どういう意味を持つのか、さすがのタシュアでも理解できる。


 むしろ、だからこそ、だった。

 それだけの好意を向けてくれているのに、何かの形で彼女の成長を邪魔するようなことは、あってはならないと思う。

 いまのうちにと呼び鈴を鳴らし、温かい飲み物を頼み、待つ。

 やがて水音が止み、髪を纏め上げたシルファが姿を見せた。


「それで、話というのは……」

「二点ほど。ですがまず、かけてはどうです?」

 椅子を勧め、落ち着いたところで話し出す。


「一点目ですが……あなたの学院内での立場が、変わったのは知っていますか?」

「何のことだ?」

 どうやらカレアナは、まだこの件を話していなかったらしい。


(真っ先に当人に言うべきでしょうに……)

 もっともタシュアのときも、頭越しに決めて事後通達だったことを思うと、今回もそうなのだろう。


「私が卒業までの期間、すでに買い取られていることは知っていますね?」

「ああ、聞いた」

 タシュアもこの件については、シルファに話している。それをきちんと、覚えていたようだ。


「推測ですが、シルファ、あなたも同じ状況になっています」

 彼女が、いぶかしむような表情になった。

「……どういうことだ?」

「そのままとしか言いようがないのです」


 言って、簡単に説明する。

 学園長室であった、幾つもの意味ありげな会話と行動。加えて先程のカレアナの、「シルファはうちで預かる、これでいいじゃない」の台詞。

 これらから考えられる結論が、シルファの買取しかない。そう彼女に言う。





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