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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
87/114

Episode:87

 一人になるのが嫌いなシルファ。

 一人でも生きていくと決意した自分。

 見ているところがあまりにも違うのに、一番近い。


 交友関係が広がり、親しい友人ができ、自然と薄れていけばよかったのだろう。だが、何の巡り合わせか、彼女はタシュアの近くにいるようになった。

 それを見るたび、思うのだ。


 いつでも側にいられるために、逆に一人になるのを怖がっていないか。かえって依存する結果になっていないか。

 自分の隣にいることが全てになってしまい、それ以外の可能性を考えられなくなっていないか。

 シルファが精神的に立ち直る機会を、そうとは知らずに奪っていないか。


 出遭ったころの記憶をたどる。

 最初は、間違いなく偶然だった。

 次でシルファを助けたのも、気まぐれに近い。当時の自分はシルファどころか、他の人間すべてに興味などなかったのだから。


 だがそういったことが重なるうち、気づけば彼女は側に来るようになっていた。

 そして自分も追い払うようなことはせず、時に相手をした。

 ただどれも、偶然の産物だ。


 どこかで何かが少し違ったなら、いまだにお互い、赤の他人に過ぎない。あるいは違う誰かが彼女の側に居あわせたなら、やはり自分は無関係のままだったろう。

 そんな思いが、常に頭の隅にある。


(きっかけは、きっかけに過ぎないということですか)

 シルファとて、近寄らないという選択肢はあったはずだ。なのに側に来るようになったと考えるなら、彼女はその意思で選んだことになる。


 それなのに確信が持てないのは、シルファのトラウマを知っているからだ。

 自分の存在が、そのトラウマを不自然な形で埋めて、歪める結果になっているのではないか。そんな考えが、タシュアの頭からはどうしても離れない。


 なにより、彼女が己の感情を勘違いしてはいないだろうか?

 必要とされたいがために、そのように考え、行動する。実はそれだけの話で、なのに好意と勘違いしていたら?

 どう見てもそれはいずれ歪んだ感情になり、やがて破綻するだろう。


 もしそうなら……何があっても避けたかった。

 そうなれば傷つくのはシルファで、しかもかなりのダメージを負うことになりかねない。


(さすがに、考えすぎでしょうかね)

 思考が一段落したところで、ふと周りが明るくなったことに気づく。どうやら、屋敷脇に広がる林を抜けて、砂浜まで来ていたようだ。


(随分と没頭していたようですね)

 ふと見上げると、満月にほど近い月が存在を主張していた。


(よい月ですし、このまま砂浜をまわって戻りますか)

 闇を映した海に、白い砂浜が浮かび上がっている。暗い中、月明かりに照らされてた砂浜は、ぼんやり光っているようにも見えた。

 その砂を踏みしめ、波の音を身体に満たしながら、感情を整理していく。

 と、遠くに人影を認めた。


(……シルファ?)

 背格好や髪の色から見て、間違いなさそうだ。

 ただ、散策とは言いがたかった。時折反射する光は、サイズ(大鎌)の刃だ。

 早い話、誰も居ない夜の砂浜で、大鎌を振り回して訓練をしている。


(あの時と逆ですね)

 昔のことを思い出す。まったく関係のない二つの事柄が、なのにどこか似た状況になるのは、不思議で興味深かった。

 邪魔をしないよう少し距離をとり、木に背を預けて様子を伺う。





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