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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:8 閑話、屋敷にて
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Episode:85

「たしかに能力があるのは認めますけど、シュマーに加わるとも思えませんし。

 孤児が理由なら、学院にはほかにもたくさんいるわけですし」

「そうねー、あなたには言っといたほうがいいわね」

 珍しく神妙な口調。いつもこうなら楽なのですけれど。

 おばさまが、話し始めて。


「昔の大戦の頃、前線でヴァサーナの正規兵と知り合って、意気投合しちゃってね」

「……ちょっと待ってくださいな。おばさまが雇われてたロデスティオ、ヴァサーナと敵対してたじゃありませんか」

 あの当時のヴァサーナ国は、ロデスティオと敵対してたアヴァンを裏から支援してたわけで。ですから直接じゃないとは言え、ロデスティオとは敵味方の関係だったはず。


「なのにどうして、意気投合してるんです」

「それがね、運悪く両軍遭遇して交戦になったのがニエナム国で。でもあそこ、外国排斥でしょ? だから横から全力で攻撃されちゃったのよー」

「両軍とも、不注意すぎますわ……」

 おばさまのようなことを、軍団単位でやらなくてもいいでしょうに。


「ともかくそんなわけで、散り散りになって取り残されちゃってね。出会ったのも何かの縁、一緒に国外出ようか、って」

 それで納得できてしまう、相手の方もすごいと言うか。

 というか、毎度のこととは言え、話が横道へそれ過ぎてますし。


「で、そのことと今回の件、どう関係ありまして?」

「だから、彼女の子」

「あら……」

 そこまで素性が分かっていて、なおかつタシュアさんがシエラに居るということは。


「――亡くなられましたのね、その方」

「そゆこと。

 向こうが切羽詰ってたときに、うちもほら、ちょうどルーフェが大怪我してゴタついてるときでね。だから知らないまま、何もできなくて」

 寂しく笑って、おばさまが視線をそらす。


「タイミングも悪かったし、どうすることもできなかったのは分かってるのよ。

 でもほら、どうしても引きずるのよね〜」

 つかの間悲しげな表情を見せた後、一転、いたずらっぽい微笑み。


「悪いわね、自己満足につき合わせて」

「あら、おばさまはいつも、自己満足が基準じゃありませんの?」

 お互いの視線が合って、思わずどちらも笑い出す。


 でもこれで、例の契約がこちらに不利なのも納得。要するにあれは、2人をうちで使うことではなくて――保護が目的。

 シエラの本校は、噂じゃけっこう厳しいのだそう。それに学院からの派遣要請は、生徒はまず断れないとも。もちろんそんな任務で、中には命を落とす生徒も居る。


 けれどこの契約があれば、それを盾に断ることが可能。学院がこちらへ確認を取っても、おばさまが口裏を合わす気満々だから、ばれないでしょうし。

 いまさら引き取るわけにもいかない友人の子を、彼女と2人まとめて間接的に庇護を与えた。つまりはそういうこと。


「っていうのが、今までの主な理由だったんだけど」

「あら、他にも理由がありまして?」

 この方にいくつもの理由が出る事のほうが、珍しいのに。


「なんて言うのかしら、敵に回したくないっていうのも出てきたかしらね。まったく、どこまで情報掴んでいるのやら……」

「通信網にあるのは、ほぼ全部かと。まぁ、どうにかなりますわ」

 ルーフェイアの一件から、出入りしているのはこちらも分かっていて、監視してたりしますし。


「ったく、ローズったらどんな育て方をしたのかしらね」

「おばさまと、意気投合するような方ですのよ? 推して知るべしでは?」

「あー、確かにそうね」

 とりあえず確かなことは、さらに厄介ごとが増えた、ということ。


「例の経費、一部はおばさまのところから、出していただきますからね」

「はいはい。

 さて、かわいいルーフェの様子でも、見てこようかしらね」

 とってつけたようなことを言いながら、おばさまも部屋を出て、扉が音を立てて閉じた。





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