Episode:07
明けて翌日。
「おや、おはようございます」
だいたいの見当をつけて食堂へ行くと、案の定タシュアが朝食を食べている最中だった。
「まだその本を……読んでいるのか?」
彼の手元に例の分厚い本があるのに気付いて、さすがに呆れる。
「もう少しですから、出かける前に一通り読み終えようと思いまして。
貴重な本ですからね、さすがに持ち歩くわけにはいきませんし」
「え……」
あれだけ慎重にしていたのに、気付かれてしまったのだろうか?
「その、出かけるって……どこへだ?」
なるべくさりげないように、尋ねる。
「ええ、ちょっと。
それよりシルファ、朝食を取ってきてはどうです?」
「あ、ああ」
あまり突っ込んで尋ねるわけにもいかず、私は一旦朝食を取りに行った。
適当に揃えて、タシュアのところへ戻る。
「――シルファ、どうかしたのですか?」
タシュアの方を窺いながら食べていたのがまずかったのだろう、すかさず気付いてそう言われた。
「い、いや、なんでもない。
それより、本当にどこへ行くんだ?」
「少々気になることがありまして。
――おや、もうこんな時間ですか」
時計を見たタシュアが、本を手にすっと立ち上がった。
「どうしたんだ……?」
「今出ないと、ケンディクで乗り遅れますからね。
そうそうシルファ、しばらく留守にしますので」
「――えっ?!」
「出かける」というから、てっきり旅行の計画に気付いたのかと思ったが、まったく違うことだったらしい。
いや、それよりも、今からしばらく留守では……!
「た、タシュア、確か……しばらくは空いてるんじゃ、なかったのか……?!」
「ええ。任務の夏休み当番は、もう終わりましたしね。もっともだからこそ、簡単に出かけられるわけですが」
完全に見当違いの言葉が帰ってきた。
「――シルファ、本当に大丈夫ですか?」
多分そうとううろたえた顔をしていたのだろう。タシュアが心配げに尋ねてくる。
「あ、ああ……」
私はそう答えるよりほかなかった。
「――? それならいいのですが。
では、これで。乗り遅れるわけにもいきませんので」
それだけ言い残して彼が食堂を後にし、ただ呆然とする私だけが取り残される。
そして出かけるまでの数日間、私はおろおろしながら、タシュアからの連絡を待つばかりだった。