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Episode:66

「あら、黙っちゃってどうしたの?」

 そしてもうひとつ引っかかるのが、このカレアナだ。

 見かけと言動はともかくとして、彼女は名実共にあのシュマーのトップだ。当然それだけの権力を――是非は別として――有している。


 その彼女が、何故わざわざここまで出てくるのか。

 たとえ派遣要請でも、シエラはお金が支払れたのさえ確認できれば、対面交渉せずに済むのだ。むしろそうでなければ、有事のときに間に合わない。

 それなのに、たかが「上級傭兵1人」に対してカレアナが来ると言うのは、大げさに過ぎる。


 そもそもタシュアに用があるのなら、彼女の元に呼び出せば済む話だ。カレアナは学院と、そういう契約を交わしている。

 なのにわざわざ、ここへ来るというのだから、相応の理由があるはずだ。


(契約内容の修正、もしくは新規契約……)

 いくつかの仮説が思い浮かぶ。

 あの口のきき方からして、シルファのことも何か関係しているのは、間違いなさそうだ。


(もっとも、考えるだけ無駄かもしれませんが)

 この女性に、理屈は通じない。その場のノリと勢いだけで行動するような輩だ。

 タシュアが思考に沈んだのを何か勘違いしたのか、カレアナが言った。


「言っておくけど、ここであたしに何かしても無駄なことくらい、頭のいいあなたなら分かるでしょ?

なにしろシルファの居場所、ここから遠いんだから」

 言葉の裏に何があるのかは、聞かなくても分かる。だがなお、タシュアは応えなかった。


(手を出せば、少なくとも私の気は晴れるのですがね。けれどまずは、シルファですか)

 

 幾つかシミュレートしてみる。

 シルファがルーフェイアと一緒という推測が正しいなら、シュマー関連の施設とはいえ、身に危険が及ぶことはないだろう。


 一方でこの推測が外れていたとしても、カレアナがこの場でシルファの名前を出した以上、何らかの形で関わっているのは確かだ。ならばやはり安全は、確保されていると見ていい。

 人質は手元で生きていればこそ、人質になりうるのだ。そしてシルファのことを持ち出す以上、カレアナの手の届く範囲に、切り札として置かれているはずだった。


――かといって安心できないのが、シュマーのシュマーたるところだが。

 形を変えられるサイズ(大鎌)の件といい精霊の完全憑依の件といい、シルファはその筋の人間からすると、垂涎の的であるのは間違いない。そしてシュマーは、「その筋」の人間ばかりだ。


 シルファが自ら漏らすことはないだろうが、いつどこで感づかれるか分かったものではなかった。

 ここまで沈黙を保つタシュアに対して、さすがに疑問に思うところが出てきたのか、訝しげにカレアナが言う。


「うーん、聞こえなかったかしら? もう一回言ったほうがいい?」

「結構です。それよりシルファの名前を出して、私に何をしろと?」

 振り返って、カレアナの意図を問う。

 だが何を思ったか、彼女は笑い出した。


「やっぱりあなた、面白い子ね。うちに欲しいわぁ」

「お断りします」

 これは本音だ。こんな人間(?)たちの仲間入りなど、虫唾が走る。


「あら残念。ま、本人にその気がないのは仕方ないわね。

――で、シルファどうする?」

 珍しいことに、ずれかけていた話が元へ戻った。

「どうするも何も、シルファに何かしているのは、そちらだと思いますが?」

 答えながら、毒舌だけは突き返す。





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