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Episode:63

「何か用ですか?」

 例によって感情のない冷たい声だったが、シルファとよく一緒に居て慣れているのだろう、彼女は気にする様子もない。


「用がなかったら、声かけないってば。

――シルファ、いま部屋?」

「知りません」

 即答。これで会話は終わるはずだった。


「知らないわけないでしょ、一緒に旅行行ってた人が」

「彼女とは行っていませんよ。別行動です」

 タシュアの返答に、ディオンヌが考え込む。


「じゃぁシルファ、どこ行っちゃったんだろ……」

「行き先など、提出された書類を見れば分かるはずですが」

 日帰りでケンディクへ行くだけでも、外出の許可は必要なのだ。ましてや長期の旅行なら、許可なしはあり得ない。


「上級隊の資格を持つあなたが、その程度も知らないのですか?」

 ついでに毒舌を付け加えたが、ディオンヌはやはり気にしなかった。

「そりゃ知ってるわよ、そのくらい。じゃなくて、居場所が分かんなくなってるの!」

 予想もしない答えに、耳を疑う。


「どういうことなのです?」

 問いに「細かくは知らない」と前置きをしてから、ディオンヌが話し出した。


「元々は一昨日、戻ってくる予定だったらしいんだけど。でも帰る直前に、予定が変わって数日延びるって、連絡があったんだって」

「別段、問題があるようには思えませんが」

 全く連絡がないなら大問題だろうが、上級隊のシルファなら、この程度の事は許されるはずだ。


「それはそうなんだけど」

 ディオンヌもその点は認める。

「でも、おかしくない? あなたならともかく、真面目なシルファがそんなことするなんて」

 他意はないのだろうが、ずいぶん失礼な言い方だ。

 だが言い返す前に、彼女は言葉を続けた。どうやら話は続いていたらしい。


「しかもいまだに、そのあとの連絡がないって言うのよね。学院がちょっと用事で連絡しようとしたけど、ぜんぜんダメだったらしいし」

 さすがにタシュアの表情がわずかに変わるが、ディオンヌは気づかなかった。


「いつでも連絡が取れるようにするのが、上級隊の原則でしょ? それをシルファが、知らないわけない。

 まさかとは思うけど、何か事件に巻き込まれてたりして……」

「話はそれだけですか?」

 長くなると見て、強引にさえぎる。結論の出ないことで、これ以上時間を取られるのは願い下げだった。


「ちょっとタシュア、心配じゃないの?」

「こんなところで立ち話をしていても、何も進展しませんね。時間の無駄です」

 切り捨てて、その場を後にする。

 ただそうは言いながらも、ディオンヌの言葉は引っかかった。たしかに、シルファが居場所も分からなくなるというのは不思議だ。


(いちおう、調べてみますか)

 手早く食事を終え、自室へと戻る。

 魔視鏡を立ち上げて、学内の通信記録をざっと当たると、すぐにシルファが入れた連絡が見つかった。だが内容はディオンヌが言ったとおりで、予定が延びるというだけのものだ。





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