Episode:59
◇Rufeir
強い陽射しが、波間できらめいていた。
青い空が、不思議と近く見える。
いまいるのは、アヴァン大陸の南部で大陸列車の終着駅、ワサール国のプラジュだ。きれいな砂浜で有名で、温暖な気候なのもあって、一年中観光客が絶えない。
先輩との旅は、予想以上に長かった。
学院を出てアヴァンへ渡ってから、イマドのいるルアノンを通って、さらに列車で南下。とちゅうで2回ほど下車して、古代遺跡で有名なチメネーアや、世界最大級のノネ湖で泊まったりしている。
ただ、それもそろそろ終わりかな、と思った。
このプラジュからは、ケンディクへの直行航路がある。どちらも知られた観光地だから、両方回るツアーは人気があるんだそうだ。
休みもそんなに残っていないし、ここから船で学院へ戻るんだろう。
いろいろ見られたな、と思う。いままでずっと前線で、そのあとは学院の寮住まいだから、観光なんて初めてだ。
戦地を渡り歩いていろいろな国へ行ったけど、まだまだ世界は広いと、碧い海の中で思う。
「ずいぶん泳げるようになったな」
「はい!」
先輩の言うとおりあたしはこの夏で、だいぶ沈まなくなった。アヴァンに始まってあちこちで泳いだ――シルファ先輩、泳ぐのは割と好きらしい――から、さすがに身体が覚えた感じだ。
――まだ上手く進まないけど。
ただ浮いているだけならどうにかなるのだけど、息継ぎするとバランスが崩れてしまって、前のように沈んでしまう。
それでも泳げそうな手ごたえが出てきただけ、自分としては嬉しかった。
「一回あがろう。少し、頑張りすぎだ」
「え、そうですか?」
言った矢先、運悪く来た大波でバランスを崩す。
「――!!」
でも溺れかけたあたしを、即座に先輩が引き上げてくれた。
「ほら、疲れているんだ。あがろう」
「……はい」
たしかに海から出てみると、身体が重い。浮力が消えたのもあるだろうけど、それ以上にだるい感じだ。
「水の中は、意外と疲れるんだ」
「ですね……」
先輩がついていてくれて、ほんとうに良かったと思う。もしあたし一人なら、ムリをしすぎて溺れていたかもしれない。
あたしの様子を見ていた、先輩が言う。
「泳ぐのはまた明日にして、ケーキでも食べに行くか?」
「あ、はい!」
ほんとうは先輩が作ったケーキが食べたいけど……こんなところでそれを言うのは、さすがにワガママだろう。それに知らなかったけど、ケーキはいろいろ種類があってとてもきれいで、どれも美味しい。
シャワーを浴びて服に着替えて、先輩と二人町へ繰り出す。
「どこにするかな……」
土地勘がないから、行き当たりばったりだ。けど目抜き通りを歩くうち、小奇麗な店が見つかった。
中には工夫を凝らした手作りお菓子がいっぱいで、美味しそうだ。奥には席があって、食べられるようになっている。
同じ事を先輩も思ったみたいで、立ち止まってあたしを見た。