表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/114

Episode:51

「遥かなる天より裁きの光、我が手に集いていかずちとなれ――」

 同属性の呪文が、精霊のふるう力とほぼ同時に発動する。

「ケラウノス・レイジっ!」


 二重に発動した雷撃が、辺りを薙ぎ払った。あの独特の、大気の焼けるにおいが漂う。

 さすがに効いたのだろう、動きを止めた竜たちの中へ、私は踊りこんだ。

 1匹の首をかき切り、返す刃でもう1匹の胸を突く。


 向こうでもルーフェイアが、残る1頭の懐へもぐりこみ、太刀を急所へ突き立てる。

 念のために3頭の竜の首を落とし、絶命したのを確認して……それですべて終わりだった。

 ルーフェイアと二人、緊張を解く。


「だ、だいじょうぶかい?」

 まだ興奮しているのだろう、少しうわずった声で、先輩が訊いてくる。


「問題ありません。まだもしかしたら、別のやつが残っているかもしれませんが、今は平気です。

 ケガした方を連れて行くなら、いまのうちにお願いします」

 私の言葉にうなずいて、 先輩が診療所へと車を出す。ただ言葉とは裏腹に私自身は、とりあえずここまでだろうと思っていた。


 このタイプの竜はたしかに知能は低いが、学習能力がないわけではない。仮に他にいたとしても、一瞬で3頭も倒されれば、とうぶんは人間を警戒する。

 だから当面は、問題ないはずだ。


――それにしても。


 当たり前の顔をして、太刀をざっと手入れしているルーフェイアに、舌を巻く。この子が強いのは分かっていたが……ここまでとは思っていなかった。

 やったこと自体は、誰でも出来ることだ。力を発動するまでに時間がかかる精霊と、もっと早く発動する通常の魔法。この2つを組み合わせたに過ぎない。


 通常の魔法はもちろん、威力のある精霊でも、範囲を広げれば効果は落ちる。だからさっきのように竜を3頭もとなると、精霊でもダメージは薄かった。

 それを通常魔法で補強して、一時的にでも動きを止める。いい戦術だ。


 だがとっさに判断を下し実行出来る人間は、そうはいないだろう。私も今まで思いつきもしなかったし、今すぐやれと言われれば不安が残る。

 周囲の人間に被害が及ばないかどうか、じっさいに間に合うかどうか、重なった威力がどうなるか。そういったさまざまな要件を加味した上で、一瞬で判断しなければいけないのだ。


 いつ覚えたのかは分からないが、この子の年齢を考えると驚異的だった。

 そしてまた、疑問も覚える。

――何故、と。


 強いのは分かる。戦場育ちなのも分かった。鍛えているのもたしかだし、何よりこの子は場数を踏んでいる。

 だがそれでも、疑問が残るのだ。


 タシュアの強さは、たしかに同じように桁外れだが、理解できる範疇だ。パワー、スピード、魔力、それに冷静な分析と頭の回転の速さ。加えて、いままでにくぐった修羅場の数。こういったものが組み合わさることで、常人離れしたレベルに達している。


 だがこの子は……アンバランスすぎた。

 泣き虫で繊細で優しいルーフェイアが、戦闘となるとなぜこれほど的確に行動し、敵を屠っていけるのか。

 先日の病院テロでのことといい、得体が知れない部分があるとしか、言いようがない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ