表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/114

Episode:50

「精霊って、武器、くれましたっけ……?」

「ふつうは、ないらしいな」


 ただ私の精霊は、どうも少し変わっているらしい。個性がはっきりしているのか、好き嫌いがきちんとあるようで、向こうから私についてきた。

 武器は、そのときに一緒にもらったものだ。だから正確には私のものでなく、精霊の物だった。


 話を聞いたルーフェイアが、うらやましそうな表情になる。自分も欲しいのだろう。

「ルーフェイアもいつか、見つけられるといいな」

 頭を撫でてやると、この子が嬉しそうにうなずいた。

 武器を一旦、元のブレスレットに戻して、歩き出す。


「あ、良かった、ちょうどいいところに」

 歩いている途中で、受付けの人と鉢合わせした。


「迎えが来ましたから。いまご案内します」

「すみません」

 彼女の案内で用意された車に乗り込み、さらに現場へと急行する。

 辺りはあちこち血に染まって、すでに到着していた先輩が、手当てに奔走していた。


「だいじょうぶですか?」

 ブレスレットを外して武器に戻しながら、声をかける。

「いま村の若いのが、足跡を追ってるらしい。すぐ連絡が入ると思う――ザムスさん、そっちを持って!」

 重傷者のことで、先輩は頭がいっぱいのようだ。


「仕方ない、少し待機だな……ルーフェイア、どうした?」

 隣のルーフェイアが、険しい表情を見せている。

 視線は……少し先の、林だ。


「――来ます」

 言ってこの子が、太刀に片手をかける。

 近づいてきたのだろう、こんどは私にも気配が分かった。


 次の瞬間、茂みを突き破るようにして、竜が現れる。一気に迫ってくるのを、進路へ割り込んで大鎌サイズを振るい、けん制した。

 だが。


「2匹目?!」

 幸い訓練の成果で、考えるより先に身体が動く。いちばん近いものを薙ぎ、勢いを利用して反転、もう1頭の手を切り払った。


「クーノ先輩、出られますか?!」

 車に乗ろうとしている、先輩に声をかける。

「今もう――うわっ!」

 悲鳴。こちらの2匹を相手にしている間に、もう1匹が回りこんだらしい。

 一瞬のためらいもなく、ルーフェイアが呪文を放った。


「トォーノ・センテンツァっ!」

 小さな雷撃が命中して、3頭目の動きが止まる。

「いったい、何匹いるんだ?」

「分かりません。血の臭いで、集まってきたのかも……」

 もっともいまは、悩んでいる暇はない。


「先輩、精霊――いきます!」

 防御呪文を車にかけながら、この子が言う。

「分かった。

――先輩! 車から出ないで下さい!」

 私が警告している間に、ルーフェイアが召喚の呪を唱え出した。


「鳴り響く時の内に棲む者よ、その稲妻持ちて我が敵を打ち砕け――来いっ、アエグルンっ!!」

 呪に誘われて、虚空から精霊が姿を現す。力が発動すれば、どれか1匹は動きが止まるだろう。

 この状況で数が1つでも減れば、戦局が変わる。

 だがルーフェイアは、それでは済まさなかった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ