Episode:49
「見えると……困るんですか?
――あ、たしかに狙撃されたら、困りますね」
「……」
戦闘向きはいいとして、このズレ加減はやはり問題だ。
同時に、まず着替えさせようと思う。中途半端な状態で止まっているのは、「見えているだけ」よりさらに悪い。
「と、ともかく着替えて。急がないと、いけないだろう?」
「あ、はい」
素直なこの子が、いそいそと服を着る。
その間に私も、急いで必要なものを出した。とはいえ任務で来たわけではないから、用意できるものは限られている。
少々心もとないが、手持ちでどうにかするしかなかった。もっとも精霊と武器はあるから、何とかなるだろう。
「ルーフェイア、行けるか?」
「はい」
あっという間に戦闘態勢になった後輩を連れて、部屋を再び出る。
だがルーフェイアが、私を引き止めた。
「あの、先輩、武器は……?」
私が手ぶらなのを、いぶかしんだらしい。
「そういえば、ルーフェイアは見たことがなかったな」
言って、手にはめていたブレスレットを見せる。
「えっと、あの、これ、武器ですか?」
「まぁ、そうだな」
そう答え、部屋から少し先、広くなっている場所まで来てから、私はブレスレットを外した。
手のひらの中に、光りが灯る。
「すごい……」
ルーフェイアが声を上げるのも、無理はないだろう。ブレスレットが淡い光を纏いながら、形を変え、大鎌へと変化したのだから。
「便利、ですね♪」
「そうでもないぞ……」
この子は何か期待しているようだが、これはこれで意外と不便だった。
「不用意に外すと、元に戻る。だから……場所によっては、危ないんだ」
海やプールでうっかり外れでもしたら、大変なことになる。ルーフェイアの表情が一瞬強張ったのも、似たようなことを想像したからだろう。
「携帯にはたしかに便利だが、常にはムリだな」
「ですね……」
事実安全を考えて、外して問題のなさそうな場所に置いておく事は、けっこう多かった。それも可能なら、武器に戻して置いておくくらい、扱いには気を使う。
まぁそれでも持ち出すのが簡単なだけ、この大きさの武器としては扱いやすいほうだろう。
「でも……これ、あの、どうなさったんですか……? ふつうに手に入る武器じゃ、ないですよね……?」
武器のこととなるとルーフェイアは、興味が尽きないらしい。
「精霊かなにかと、関係が……?」
「よく分かったな」
この子の知識の広さに感心しながら、話だす。
「私の使っている精霊が、いるだろう? 彼女に、もらったんだ」
「もらった……」
ルーフェイアが目を丸くした。