Episode:27
「何が食べたい?」
「えっと……」
辺りに出ている屋台を、この子が見回す。
と、珍しく視線が止まった。
――なるほど。
目の前の海で獲れる小魚を串に刺し、ただあぶり焼いた物がこの辺りの名物らしいのだが、そこに視線が行っている。
そういえば今までも食事の時は、この子は魚をよく選んでいたから、きっと肉より好きなのだろう。
「あの魚でいいか?」
「いいん……ですか?」
「ああ。行こう」
答えて歩き出す。
だがその私たちを、人影がさえぎった。
「君たち、2人だけ?」
若い男性が3人。
ルーフェイアと顔を見合わせて囁き合う。
(お知り合いですか?)
(ルーフェイアの、知り合いじゃないのか?)
つまり、どちらの知り合いでもなかったらしい。
男たちが着ているのは、ブランド物の水着と上着のようだ。だがトレーニングで鍛えただけの身体は、どう見ても無駄なだけだった。実戦で鍛えた身体は、こういうのとは全く違う。
そう思った瞬間、なぜか余計に腹が立った。
当の本人たちは強いつもりでいるらしく、妙な自信とおかしな笑い方とを見せている。
「……ルーフェイア、行くぞ」
「あ、はい」
無視して歩き出すと、また行く手を遮られた。
「どうせ暇なんだろ?」
男のその口調が、妙に気に障る。
「せっかくの海なのに、カレシもいないじゃつまんないぜ」
「………」
何も知らない相手に、こんなことを言われる筋合いはない。
私の怒気を察したのか、ルーフェイアが1歩下がった。
「ホラそんなコワい顔しないで、行こうぜ」
男はそう言いながら、私の手首を掴んでくる。
「――放せ」
言葉と同時に、身体が動いていた。捕まれたのを逆に利用して相手の腕を手繰り、そのまま投げ飛ばす。
「こ、こいつ――」
「調子こいてんじゃねーぞっ!」
残る2人が襲い掛かってきた。
――本当に素人だな。
喧嘩には慣れているのかもしれないが、所詮はそれだけだ。
身体を入れ替えながらみぞおちに肘打ちし、もうひとりに蹴りを入れる。
なぜか周りで喝采が上がった。
「っきしょう……おい、こっち見やがれ!」
倒れている2人に気をつけながら、最初の男の方へ視線を向ける。
「ルーフェイア、何を律儀に捕まっているんだ……」
華奢なこの子が、腕の中に捕らえられていた。




