Episode:23
「このカーディガンなど、いかがですか? 可愛らしいデザインですから、お似合いと思いますが」
「………」
先輩があたしと服を交互に見ながら黙ってるから、店員さんが慌てて次を出してる。
そのうち先輩、全然違う棚から服を引っ張り出した。
「ルーフェイア、ちょっとこっちへ来て、後ろを向いてくれないか?」
「あ、はい」
あたしの背中に合わせて、サイズを確かめてるみたいだ。
「大丈夫そうだな……着てみてくれるか?」
「はい」
渡されたのを見たら、カーディガンじゃなくてパーカーだった。
「こっちの方が、ショートパンツに似合うだろう?」
「……?」
そういうもんなんだろうか。
そのほかに先輩は、タンクトップやら袖なしのワンピースやら、ショートパンツなんかまで選び出す。
何度も呼ばれては大きさを合わせて、試着して先輩がそれをながめて……その繰り返しだ。
「あの、先輩、こんなにいっぱい……」
「いいんだ」
きっぱり言われて、何も言い返せなくなる。
旅行に連れ出された時もそうだったけど、思ったよりシルファ先輩、強引なところがあるみたいだった。
それから水着を選んで、やっと先輩、服選びをやめる。
「そうしたら、これで」
「かしこまりました」
店員さんが、丁寧にたたんで包み始める。
慌ててあたしは、先輩に駆け寄った。
「あの、あたしが払いますから!」
「私が買うんだ。気にするな」
先輩、とりつくしまもない。
「でも、あの、悪いですし……」
あたしが自分で、大して着替えを持たずに出てきたのが悪いのに、先輩にお金を使わせるわけにはいかなかった。
「いいと言っただろう? だから、いいんだ」
でも先輩、よく分からない理由で却下する。
「けど……」
「――ルーフェイア」
鋭く言われて、一瞬すくみあがった。
「あ、あの、ごめんなさい……」
思わず謝ったあたしの頭を、先輩がそっとなでる。
「謝らなくていい。
私が買いたいんだ。着てくれるな?」
綺麗な紫の瞳。
覗き込まれてそう言われると、あたしももう反論できなかった。
「すみません……」
「いいから。
さぁ、ホテルに帰って着てみよう」
先輩がお金を払って、紙袋を持って歩き出す。あたしも先輩と並んで、ホテルへと戻った。
フロントに挨拶して鍵を受け取って、昇降台に乗って……。
部屋に入るとさっそく先輩、袋を開けて服を引っ張り出す。