Episode:22
◇Rufeir
ホントに夢みたい、だった。
「博物館、すごかったですね♪」
「ああ、そうだな」
向かいに座った先輩が、微笑みながら答える。
今あたしたちがいるのは、アヴァン博物館近くのカフェだ。店の外の石畳、日よけの下にもテーブルが出してあって、風が流れてる。
テーブルの上には、先輩が頼んでくれた昼食が並んでて、2人で食べてるとこだ。
歴史が長いだけあって、国立博物館はホントにすごかった。
――先輩はあんまり、興味がなさそうだったけど。
だからなんだか悪い気がして、実はこっそり途中で切り上げた。なにより、先輩とこうしてる方が楽しい。
「このスープ、美味しいぞ」
「あ、はい♪」
勧められるままに、口を付ける。
「……♪」
先輩の言うとおり美味しい。あとはサラダとサンドイッチだけど、きっとこっちも美味しいはずだ。
「ほら、こっちは辛くないから」
「はい」
先輩がいろいろ、あたしのお皿に分けてくれる。なんだかサリーア姉さん――ほんとは従姉――と一緒にいるみたいだ。
だいたい食べたところで、先輩が言った。
「それを食べたら、買い物に行くぞ」
今朝言ってた予定通り、水着を買うらしい。
残ってたのを食べ終えて、急いで立ち上がった。
「いや、そんなに慌てなくても……」
「え、でも……」
なんだか悪い事をしたみたいで、視線を落とす。
と、あたしの頭を先輩が撫でた。
「気にしなくていい。行こう」
「……はい♪」
嬉しくなって、先輩の後をついていく。
真昼の日差しに照らし出されたアヴァンの街は、とても華やいだ感じだった。観光や買い物らしい人たちが、たくさん行き交っている。
落ち着いた石畳。どっしりした造りの両側の建物。
目抜き通りなせいだろう、ほどんどが1階は大きなガラス張りの、お店になっていた。
その中を覗き込みながら、先輩と2人で並んで歩く。
と、先輩が立ち止まった。
「行こう」
一軒の店へ入っていく。
中は子供の服がたくさん並んでいた。赤ちゃんのからあたしより大きい位まで、一通り揃ってる感じだ。
「――この辺かな?」
先輩が探し始める。
「何かお探しでしょうか?」
店員さんがすかさず、声をかけてきた。
「この子の上着と、あと……水着があれば欲しいんだが」
「あら、可愛い妹さんですね。
少々お待ち下さい。今出しますので」
なぜか妹にされる。
確かに、この年で先輩後輩で、旅行に出るのは珍しいけど……。
けどそんなあたしの感想は関係なしに、先輩と店員さんは服選びに夢中だ。