Episode:13
ともかく考えてるヒマもなさそうで、部屋へ飛び込むとあたしは急いでクローゼットから着替えを出した。
2・3日分の下着と着替えと……あとはいざとなれば、どこかで買えば済むはずだ。それにいつもまとめてあるツールキットと戦闘服、タオルと現金とカードを放りこんで終わりにする。
あとはもう急げるだけ急いで、案内板のところへと戻った。
シルファ先輩の姿が見える。
「あの、すみません、お待たせして……」
「用意が終わったなら、行くぞ」
それだけ言って先輩が歩き出して、あたしはまた慌てて後ろに付いていった。
――ほんとに、どうしちゃったんだろう?
普段からじゃ考えられないくらい、シルファ先輩の機嫌が悪い。
「ほら、早く」
「は、はいっ」
言われるとおり、急いで連絡船に乗り込む。
「あの、どこに……」
「どこでもいい」
座る場所を訊いても、そんな感じだった。
結局空いている席へ、そっと座る。シルファ先輩も隣に座って、それだけはほっとした。
船が動き出す。昨日帰ってきたばっかりなのにもう出かけるなんて、なんだかおかしな気分だった。
湾を出て、外海が見えてくる。高くなった陽が遠い海面で、きらきらと踊っていた。
――どこ、行くんだろう。
ケンディクへ向かってる以上、そこから列車でどこかへ行くんだろうけど……。
けどとてもじゃないけど、先輩に訊けるような雰囲気じゃない。
ぼんやりいろんなことを考えているうち、船が止まって、波止場へと降りた。
青い風が、流れていく。
夏色の海。朝色の空。
でも先輩は、それさえ目に入ってないみたいだ。
「行くぞ」
「は、はい」
学院の時と同じで、ただ真っ直ぐに歩っていく。
どこへ訊きたかったけど、訊いたら怒られそうだ。<
「あの……」
でも途中でさすがに不安になって、声をかける。
「なんだ?」
「え、あ、あの、えっと……なんでも、ないです……」
やっぱりできるのは、後ろを付いてくことだけみたいだ。
「そうか」
先輩の方は当たり前だけど、行き先が分かってるんだろう。迷いのない足取りだ
でも方角から、やっぱり列車に乗るらしい。だったら行き先はたぶん、客船の出てるアヴァン方面だ。
夕べそっちのほうから帰ってきたのに、ホントに同じ場所へ、また行くことになりそうだった。




