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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:10 三度、学院にて
108/114

Episode:108

◇Tasha side

 学院に戻ってから、すでに10日近く。タシュアは連日、旅先から集めてきた資料を元に、調査に没頭する日々だった。

 とはいえ授業その他は通常通りあるし、自主訓練も手を抜くわけには行かない。そのため睡眠時間を削って、時間を作り出している状態だ。


 今日は新学期が始まってから初めての休日で、タシュアは少しでも調査を進めようと、朝からかかりきりだった。だがずっと徹夜に近いせいだろう、どうにも進まず一旦切り上げる。

 昼には少し早い食堂は、まだ空いていた。

 さっさと食事を取ってきて、適当な席に座る。


 いつもと同じ、高級料理店のようには手が込んでいないが、素朴で温かみのある味。

 だがデザートは、物足りなかった。食堂のものも十分美味しいのだが、シルファの作ったもののほうが、タシュアには好みだ。


 シルファはまだ、帰ってきていなかった。

 先日ルーフェイアから聞いた話では、状態もあまり思わしくないようだ。恐らくは精神的なものが原因だろうが……ともかく、帰れるような状況ではないらしい。


(何も言わず、待つべきだったのですかね)


 最初出会った頃は何に怯えているのかと思うほど、自信がなさそうだったシルファ。

 けれどいつの間にか、それは薄れていった。実力をつけるにつれ、自信もつけたのだろう。

 だとすれば、何も言う必要などなかったのかもしれない。あのまま待っていれば、そのうちトラウマも克服できたのかもしれない。


 ただ、自分の性格からすると、言わずに済ますことができたかどうか。

(無理でしょうね……)

 最後に残った飲み物に口をつけながら、思う。

 そもそもが、居る学校が学校だ。何が起こるか分からない。そして危険が分かっていながら対処しないのは、自分にはできない相談だった。


 空になった皿を所定の位置に片付け、食堂を後にする。

 午後からは、少し身体を動かすつもりだった。自主訓練は日課だし、何より全く動かないと、かえって身体が辛い。


 校舎を抜け、島内の森へと足を向ける。

 訓練施設へ行くつもりはなかった。あそこに居る敵は弱いものばかりで、タシュアほどのレベルになると全く相手にならない。しかも狭うえに他の生徒も多くて、存分に訓練など無理だった。


 いつも使っている、森の奥に着く。ここは丘の影になっていることもあって、ほとんど人は来ない。

 ――イマドが授業をサボって、寝ていたことがあったが。

 とはいえそのくらいで、滅多に人は見かけなかった。


(さて……)

 一旦身長ほどの両手剣を置いて、身体をほぐしにかかる。が、その動きが途中で止まった。

 ともかく眠い。元から訓練を終えたら仮眠するつもりだったが、逆にしたほうが良さそうだ。

 まだ暑い日差しを避け、木陰へ座り込む。

 またシルファのことが、脳裏をよぎった。


(帰ってこないかもしれませんね……)

 トラウマにあえて触った結果、あの取り乱しようだ。かなりのショックを受けたのだろう。

 用意したシルファへのプレゼント――もう誕生日は過ぎた――も、無駄になりそうだ。





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