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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
107/114

Episode:107

 いつも私の出した結論を、認めてくれたタシュア。だから今回も、認めてくれるだろう。

 出た答えは、単純だ。

 もちろん独りが嫌で、だから傍にいる部分も、ゼロとは言わない。だがそれは、主要な理由ではない。


「なんか、納得行ったみたいね。いい顔になった」

「はい」

 視線が合って、互いに笑顔になる。

 と、つぶやくようにお母さんが言った。


「……タシュアもほんと、一途よね」

「一途?」

 さすがに考え込む。

 常に自分が最優先で分かりやすいことを差して、「単純」と言った人は居たが……一途というのは初めてだ。


「だってそうでしょ? 大事な彼女のために、ここまでするんだもの。しかも場所までちゃんと選んで」

「……?」

 悩む私に、お母さんが言う。


「喧嘩した挙句、片方はさっさと帰っちゃって、片方引きこもり。タシュアったら、うちならちゃんと面倒見るって踏んだんでしょうけど、これがどこかのホテルだったら大騒ぎよ?」

 確かにそうだ。


「すみません、ご迷惑をおかけして……」

「あぁ、いいのいいの。ここのみんなも何やかや言いながら、けっこう楽しそうだったしね。滅多に客も来ないから、やり甲斐あったみたい」

 言って明るく笑う。

 この人はきっと、この懐の深さで、好かれているだろうと思った。


「……あの」

 思い切って、訊いてみる。

「見ず知らずの私に、何故ここまで……」

「んー、なんとなく?」

 ちょっと首をかしげながら――ルーフェイアと同じ癖だ――お母さんが言う。


「……っても、あなたじゃ納得しないかな」

 言って、どこか寂しい表情になる。

「タシュアってね、友達の子なのよ。っても、最近までシエラに居ることさえ、知らなかったんだけどね」


 それだけで、何があったかは察しがついた。同時にあのよく分からない契約の内容も、腑に落ちる。

 その友達が亡くなったとき、恐らくこの人は知る機会さえなく、何も出来なかったのだろう。

 罪滅ぼし……とは少し違うだろうが、これもまた自分を納得させるための、ひとつのやり方なのかもしれない。


 ――そこで私まで含めるのは、やりすぎの気もするが。


 ただタシュアからしてみれば、私にも庇護がある方がいいだろう。お母さんもその辺まで読んだ上で、今回の措置を取ったには違いなかった。

 しかもオマケのはずの私を、身内のように可愛がってくれている。これで文句を言っていては、天罰ものだ。

 そのお母さんに、笑顔で問われる。


「これから、どうするの?」

「分かりません。でも一旦学院へ帰って、またよく考えます」

 進路のこと、生きていく理由、考えることは山ほどある。しかもそのどれもが、難関中の難関だ。

 だが時間をかけて、考えていこうと思う。


「もしかするとタシュア、あなたの視野を広げたかったのかもね。もっとも、他のやり方があったとは思うんだけど」

「タシュアですから」

 言って、二人で顔を見合わせて笑う。この会話を聞いたら、彼はどんな顔をするだろう?


「――あの子、いろいろと異常だから。頼むわね」

「はい」

 もう一度、私たちは笑った。





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