表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
105/114

Episode:105

 お母さんが満足そうな表情で、言う。

「世の中なんてね、突き詰めちゃえば簡単なのよ。いろいろ混ざってこんがらかって、ややこしく見えるだけ」

「……そうですね」

 ひとつの真理だろう、と思う。原点に立ち戻ってみれば、見えてくるものは多いのだから。


「自分の信じるところを、思う存分行きなさい。いつ死ぬか分からないなら、なおさらだわ」

 あっさりと言っているのに、なぜだろう、不思議な迫力がある。ある意味、タシュアにも通じるような……。


 そこまで思って気づいた。そういえばこの人は以前、「手合わせ」と言っていなかっただろうか?

 あまりにもさらっと言われたので気づかなかったが、こちらは曲がりなりにもシエラの上級隊だ。それを知っていて「手合わせ」と言うのだから、腕には自信があるのだろう。

 だとすると、この人は実戦か何かで、相当鍛えていることになるわけで……。


「ん? どしたの?」

 私が考え込んだからだろう、お母さんが訊いてきた。

 少し迷ったが、訊いてみる。


「あの、私と手合わせって……どこかで、格闘技でも?」

「あら、言ってなかった?」

 言われて初めて気がついた、そんな顔でお母さんが言った。


「あたしね、これでも現役で傭兵やってるの」

「……え?」

 思わず、そんな間の抜けた答えになる。


 このお母さん自身はいい。言われてみればそうかもしれない、そんなふうに納得させてしまう何かがある。

 ただ問題なのは、そういう人がこんな屋敷の持ち主で、私たちを買い取るほどの資産家ということで……。


「まぁいいじゃない、世の中っていろいろあるのよ。なにせ、あのルーフェの親だしね~」

「………」

 これではいけないのだろうが、納得してしまう自分が居た。ルーフェイアといい、このお母さんといい、常識で測るほうが間違いの気がする。


「だからちょっと、手合わせしてみたかったんだけど……今日はまだムリそうね。元気になったときの、お楽しみにしとくわ。

――とりあえず、食べられそうならなんか食べたら?」


 テーブルの上に起きっぱなしの食事を見る。さっき食べていた野菜寄せでなく、その隣のデザートに目が行った。

 崩した薄水色のゼリーと、上に載せられたクリームが涼しげだ。それに、何かが小さく弾けている。

 不思議に思いながら手にとって口に入れると、驚いたことに口の中で炭酸がはじけた。


 ――どんなレシピなんだろう?


 そう思ってから、可笑しくなる。こんなときでもまだ、お菓子のレシピを気にするだなんて、我ながら大したものだ。

 面白い舌触りを楽しみながら炭酸ゼリーを食べ終えて、他の物も少しづつだが口をつける。

 どれも素直に、美味しいと思った。


「それだけ食べられれば、もうだいじょぶね。あーあたしもお腹空いた。なんか持ってきて貰おうかしら」

 言いながら通話石を出し、どこか――たぶん厨房――と話しはじめる。「早く早く」と相手を急かしている辺り、まるで子供のようだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ