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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
104/114

Episode:104

「頑張る子ねー。まぁだから、タシュアも離さないんだろうけど」

 また頭を撫でられる。


「タシュアに、何言われたの?」

 思わず身体が硬くなった。思い出すだけでも辛い。

 様子に気づいたのだろう、お母さんが私を強く抱きしめた。


「大丈夫、怖いことなんてないわよ」

 やわらかい胸と、暖かい腕。まるで小さな子供のようだが、安心している自分が居た。


「で、何があったの?」

 促されて、私は話し始めた。

「タシュアが、自分が死んだらどうする、って……」


 つっかえながら話していく。こんなこと普通に考えたら、赤の他人に言う話ではないはずなのだが、この人になら言ってもいいと思った。

 もしかしたら誰かに、聞いてほしかったのかもしれない。

 ずいぶん時間をかけて、途中でまた怖くなって泣いたりしながら、ようやく話し終える。


「タシュアもしょうがないわねぇ、大事な彼女にそんなこと言って」

 私を抱きしめながらお母さんが言った言葉は、それだった。

「焦る気持ちも分かんなくはないけど、こういうことは焦ってもダメなのに。

――ねぇシルファ?」


 突然呼びかけられて、顔を上げる。

 お母さんが優しく微笑みながら、訊いてきた。


「あなたにとって、いちばん大事なものって、なに?」

「それは……」

 考えるまでもない。

 けれどタシュアに、それを否定されてしまって……。

 お母さんがまた笑った。


「ねぇ、じゃぁあなたそれ、捨てて納得できる?」

 思わず首を振る。

 捨てられるわけがない。納得なんか出来ない。そんなことをしたら、一生後悔する。

 私の額を、ちょんとお母さんが突付いた。


「なら、それでいいんじゃない?」

「え……?」

 あまりに単純な答え。

 言ったお母さんのほうは、にこにこ顔だ。


「だってそうでしょ? どうやったって捨てられないって分かってるもの、捨てたってしょうがないし」

 確かに言うとおりだ。

 ただ問題は、タシュアがそれではダメだと言ってることで……。


「――シルファ?」

 急に身体を離されて、視線を合わされる。


「自分が譲れないものは、譲っちゃダメよ。そもそも譲ったとしても、納得できないでしょ。

 そういう時はね、反対押し切ったっていいの。それで何かあったって、むしろ納得がいくってもんだわ」

 そこで一旦切って、お母さんが真剣な表情になった。

 海のような、綺麗な碧の瞳。


「あなた、その大事なものが何故大事なのか、分かってるでしょ?」

 一瞬置いて、うなずく。

「なら、迷うことないわ。それでいいじゃない」

「はい」

 答えた瞬間、久々に澄み切った気持ちになる。この数日が嘘のようだ。




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