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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
102/114

Episode:102

◇Sylpha

 潮騒の音が、響いていた。

 あの日から何日経ったのだろう? 何度か夜があった気がするが、よく分からなかった。


 ――タシュアが、いない。


 思うのはそればかりだ。

 クラスや学年が違うから、常に一緒というわけではないが……それでも私が望めば、任務でもない限り一緒に居られた。

 なのに、行ってしまった。ずっと恐れていたことが、起こってしまった。


 怖かった。また独りになるのが怖くて、だから置き去りにされないよう、隣に立っていられるよう、必死に勉強し、訓練を重ねてきた。

 それでもこうなったということは、やっぱり私では、ダメだったのだろうか……?


 彼の言葉を思い返す。

 自分が死んだらどうするのか、立ち直れるのかと、タシュアは訊いてきた。

 訊いてきたからには、何か答えるべきだったのだろう。けれど、考えることさえ出来ない。

 タシュアが死ぬということは、私が独りになるということで……。


 思っただけで、身体が震えて涙がこぼれる。あの辛さが甦る。

 良くない状態だということは、自分でも分かる。何かの拍子にこうなるようでは、先々問題だろう。

 けれど、どうすることもできない。どうしたらいいのか分からない。


「私は……」

 誰にともなく、言葉が口をついた。

 何かにすがりたくて、視線をめぐらす。

 と、タシュアの置き手紙が視界に入った。


 手を伸ばして、引き寄せる。

 『新学期が始まるので、一足先に学院に戻ります』。そう始まって、『時間をかけて、よく考えてみてください。自分のやりたいこと、そして自分の生きる道を』と続く文字。


「私は……何をしたいんだろう……」

 言葉にしてみたが、よくわからない。

 タシュアに追いつきたい、横に並んで歩きたい、その一心だった。

 それではダメなのだろうか……?


 今までタシュアは、私の決めたことを、そのまま認めてくれていた。

 明確に反対の色を示したのは、武器を変更すると決めたときぐらいだ。それでも結局は、認めてくれた。

 だから、今回が二度目になる。


 ――だとしたら、何故。

 あるいはもう愛想が尽きて、行ってしまったのだろうか?

 自分で考えたことに怖くなって、それでも泣きながら考える。


 なぜタシュアは、ここに居てくれないのだろう? 何を考えろと言うのだろう?

 堂々巡りをするばかりで、答えが出ない。

 ただ確かなのは、隣に居てほしいという私の思いが、彼の思う「何か」と食い違っていることだ。


 どうにも考えがまとまらなくて、ぼうっとしてくる。

 テーブルの上には、食事が置かれていた。記憶と違うから、眠っている間に取り替えてくれたらしい。

 私が食べないせいだろう、冷たいスープやムースなど、口当たりのいいものばかりだ。


 その中からなんとなく、ゼリー寄せを手に取る。甘くしたお菓子ではなく、煮た野菜などが入ったタイプだ。

 ひと口食べてみると、予想以上の美味しさだった。さすが、この屋敷の厨房を預かるだけはある。





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