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空(うつほ)なる真実 ルーフェイア・シリーズ11  作者: こっこ
Chapter:9 閑話休題、孤島にて
101/114

Episode:101

「まぁそのうち、何がホントか分かるんじゃないか?」

「そだね」

 元が噂話だから、棚上げすることで落ち着いたらしい。これ以上は追求されなさそうで、ほっとする。


 ――それにしても。


 最初にこの噂を言い出した人、何を考えてたんだろう? 浮気とか別れたとか、あの先輩じゃありそうにないの、分かりそうなのに。

 何より、あの母さんを捕まえて浮気相手とか、先輩が可哀想だ。


 だいいちこの話だって、母さんが強引に着いて来たところから始まってる。せめてケンディクまでにしてくれれば、こうはならなかった。

 母さん的にはなかなか一緒に居られないから、少しでも一緒に居ようっていうんだろうけど、けっこう迷惑だ。


 そんなことを思いつつ食べていて……周りを見回して気づく。

「人……少なく、なってない?」

 いつの間にか、食堂の中ががらがらだ。


「え? あ、やだ。話してたらこんな時間!」

「ヤバいね。急いで食べて、教材持って行かないと」

 話に夢中になって、時間を忘れてたらしい。みんなで慌ててご飯を食べて、立ち上がる。


「1時間目、なんだっけかね?」

「えっと……魔法物理学」

「きゃー、予習してないっ!」

 そんなことを言いながら、ともかく遅れないようにと、あたしたちは走り出した。



 放課後日も暮れたのに、あたしはまだタシュア先輩を探してた。

 教室にも二度ほど行ってみたけど、どうも時間割が合わないらしくて、どちらも空振り。昼休みも会えなかったし、そのあと今日はいろいろやることがあって、けっきょくこの時間だ。


 少し考えて、図書館へ向かう。タシュア先輩は、ここがいちばん確率が高い。

 けど先輩の姿はなかった。もう時間が遅いから、どこかへ行ってしまったのかもしれない。

 かといって、部屋は分からないし……。


 誰か男子を捕まえて訊けばいいのだろうけど、なんだか気後れする。

 しばらく考えて、あたしは食堂へ行ってみることにした。

 先輩がどこにいるかは分からないけど、食べにこないってことはないだろう。だったら食堂で待っていれば、捕まえられるはずだ。


 食堂のおばさんにわけを話して、入り口近くの席で、待たせてもらうことにする。

 少しづつ人が増えていく、食堂内。

 それを眺めながら、どのくらい経っただろう? 見間違えようのない銀髪が、やっと入ってきた。


 先輩が食事を揃えて席に着くのを待って、急いで立ち上がる。

 タシュア先輩はなんのだか分からないけど、フォークを片手にもう資料を見ていた。

「あの、タシュア先輩……」

「なんの用です」

 顔を上げた先輩の、いつもどおりの声。けどシルファ先輩を心配してないわけじゃ、ないと思う。


「その、シルファ先輩のこと……なんですけど」

「彼女が何か?」

 言っていいのかどうか、ここまで来て迷っている自分が居た。でもシルファ先輩のことを一番知りたいのは、タシュア先輩のはずだ。

 だから、言う。


「シルファ先輩……かなり具合が、悪いらしくて。まだしばらく、帰せないって……」

「そうですか、ありがとうございます」

 ただそれだけの返事。先輩がどんな気持ちでいるのかは、見ているだけでは全く分からない。


「まだ何か?」

 そのまま立っていたせいだろう、先輩に言われる。

「え? あ、 すみません」

 謝ってテーブルから離れかけて……でも振り返って見たタシュア先輩は、少しだけ悲しそうにも見えた。





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