Episode:10
渡り廊下を過ぎ、学院の廊下を急ぎ足で抜ける。
「し、シルファ、血相変えてどこへ行くんだ……?」
「旅行です!」
途中で話しかけてきた教官にそうとだけ答える。
「りょ、旅行って、どこへだ?」
「書類見て下さい!」
ちゃんと事前に提出してあるのだ。ごちゃごちゃ言われる筋合いはない。だいいちこのために、任務の当番も何もかも、すべて先に済ませたのだ。
そんなことさえ教官のくせに覚えていないのかと、また腹が立つ。これでよく、生徒の面倒などみられたものだ。
「――あの、先輩?」
途中でまた、見知った顔に出くわす。
「どう、なさったんですか……?」
柔らかな金髪に、澄んだ碧い瞳。ヒヨコのように懐いている後輩が、不思議そうな表情で私を見ていた。
「えっと、あの……?」
言葉が出てこないらしく、困ったようなしぐさを見せる。
そのとき、不意に思いついた。
「ルーフェイア、予定は空いているな!」
「え、あ、は、はい……」
目をしばたたいて、少女が答える。
「だったら旅行へ行くぞ!」
どうせ1人分余るのだ。なら誰か代わりに連れて行っても、構わないはずだ。
「え、え……?!」
意味がよく分からなかったのか、ルーフェイアがきょとんとした表情になる。
「旅行へ行くんだ!」
「は、はいっ!!」
言い切ると、慌ててこの子が返事をした。
「ほら、早くっ!」
連絡船が出てしまったら、その先で乗り遅れる。
「あ、あの、そしたらあの、荷物……」
「ん? ――あ、そうか」
確かに切符やなにかは全部私が持っているが、この子も着替えくらいは要るだろう。
いくらなんでも、手ぶらというのはムリだ。
「じゃぁ正門のところにいるから、早く荷物を持ってくるといい」
「あのっ、すぐ、戻りますから!」
身を翻すようにして、金髪の後輩が寮のほうへと駆け出す。その姿を見送りながら、私はまっすぐ玄関まで行った。
おだやかな朝の陽射しに、また腹が立ってくる。
本当ならいまごろ、2人で出ていたはずなのだ。
「ばかっ!」
姿のない彼に向かって、言い放つ。
タシュアなんか、タシュアなんか――!