Lesson 3 水の精霊 3
「水の精霊の加護...?」
「さっき君から精霊の気配を感じた。〝加護〟を受けた直後にしばらく続く...オーラのようなものかな。加護を受けた直後で魔力が不安定な状態だから無意識に空間移動したんじゃない?」
じゃあ私、水の精霊の加護を受けたから空間移動出来る様になったって事?...でも水の精霊なんて会ってない...あっ!まさか...?
水面に映った自分の顔...微笑みかけてきたアドリアナーーー
あれか!!あれが水の精霊だったんだ??
そういえば...このコ『ウチの領地の湖』って言ってたけど私何処まで飛んできたんだろ?...はっ!
こんな事してる場合じゃない!!
「私っ早く帰らなきゃ!パーティーに行かなきゃ行けないの」
「パーティーの場所は?」
少年は銀色の狼を帰すと、アドリアナの右手を握ってスタスタと屋敷の大きな扉を開けた。
「え...アルドル公爵邸だけど」
「あー、成人の祝賀パーティーね」
え、知ってるの?
「シエナ」
「はい、若様」
「...任せる」
え、え?任せるって何を!?
「かしこまりました!お嬢様私達にお任せくださいませ」
「あらドレスがビショ濡れですわ!早く温かいお湯に浸からなくては」
「まあ!なんて可愛いらしいお嬢様なのでしょう」
屋敷に入るとエントランスに控えていた〝シエナ〟と呼ばれた侍女と3人の侍女が素早くアドレアナの両手と重いドレスを掴んだ。そして有無を言わさない力で屋敷の奥へ連れて行かれた...
*** ***
アドリアナは4人の侍女達の手によって素晴らしく短時間でパーティー仕様の姿に仕上げられた。
侍女の仕事ってすごい...!
支度が終わり侍女のシエナに促されるまま客間に入ると、自分の姿が映っている大きな鏡が目に入った。鏡に映るアドリアナは、ピンクのパールを襟元にあしらった薄いコーラルピンクのドレス、髪はシフォンのリボンで緩く編み込みをしてピンクと紫の花が飾られていた。耳元はピンクの小さな宝石がついたピアスが揺れていた。
なんかキラキラしてる!!...可愛いっ!...けどやっぱりこの姿慣れないな。
この世界の人ってこうゆうのが普通なのかな?
「その格好ならパーティー行ける?」
客間にはさっきの少年が座っていた。
「うん。あの...有り難う。ドレスまで...終わってから返すから」
今朝も同じようにマレ家の侍女達にされたのに、また此処でも薔薇の花びらが浮かんだお風呂に入れられ、泡だらけになり、香油でマッサージされ...アドリアナはげんなりと疲れた表情だった。
1日に2回もあれは疲れた...
「いいよ、あげるよそれ。返されてもウチ女の子いないし」
「え...でも?」
「気にしなくていい。ウチの領地に不法侵入だけどやってきたお客様をもてなしただけだから>>>」
「...わかった。じゃあ遠慮なく」
なんかこのコいちいちむかつくわね。助けてもらった恩があるからそこは我慢してあげるけど...
「で、パーティーっていつから?」
「えっと...私はティーパーティーも呼ばれてて...3時...とと3の時までに行かなきゃ行けないの」
此処では時間は時で表すらしい。
「フーン...今は陽の0の時だからまだ時間あるよ」
〝陽〟は正午の意味だ。
「此処から時間かかるんじゃ...」
「そんなの、アルドル公爵領は隣だから馬車でも1刻もかからないよ」
〝1刻〟は1時間を意味する。
ここ数日、凛は礼儀作法を習っていた合間にこの世界の常識を本で勉強したのだ。
貴族の令嬢としてのアドリアナのこれまでの評判を落としてしまうのは気が引けるし、元に戻れるまでは此処の生活に慣れなくちゃね。
「それまでゆっくりすれば?昼食用意してるし」
少年は飲んでいた紅茶のティーカップをテーブルに置いた。
「失礼致します」
丁度良いタイミングで侍女が昼食を乗せたワゴンを運んで客間に入ってきた。
美味しそうないい匂い〜!
食事用の窓際にある丸いテーブルに次々と並べていく。
一口サイズのサンドウィッチや小さくカットされたフルーツなど、この格好でも食べ易いものが多くある。
「コレ食べた後にアルドル公爵邸に送ってあげるよ。そういえば家の人に此処にいる事伝えた方がいいんじゃない?」
そういえばそうだ!!今頃私が居ないって大騒ぎになってるかも...あ〜でも携帯みたいな連絡方法ってこの世界は無いよね...
このお屋敷は何家なんでしょう?少年はここの御子息のようですが...
※更新は不定期になります。




