表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女になりたくないので回避します。  作者: 天ノ雫
【第1章】 ルシウス帝国転移編
7/177

Lesson 3 水の精霊 2


 ドレスが重くて池からなかなか上がる事ができずもたついているアドリアナの目の前に、同じくらいの年齢(とし)に見える少年が冷ややかな目で立っていた。


 え...


 「だ、誰よ?さっきまで誰もいなかったはず...」

 

 「それはこっちが言いたいね...とりあえず上がったら?」


 ライラックの花のような薄い紫色の髪、冷ややかな視線とは逆に静かに燃えるような赤いガーネットのような瞳。綺麗な整った顔立ちだが『面倒な事に関わってしまった』という表情(かお)だ。


 綺麗な顔...でも見下ろされてるせいかなんかムカつく。


 「ドレスが重くて上がれないのっ!見てないで手伝ってよ!」


 「はあ...」


 面倒臭そうな返事だ。少年は仕方ないといった表情(かお)でアドリアナが出した右手を取ると、空いている左手の人差し指を立てた。


 「〝浮遊(クラビータ)〟」


 少年がその言葉を発した途端、アドリアナの身体は赤いオーラに包まれフワリと浮いた。


 「えっ!...ええッ??」


 浮いてる!!


 少年が立てた人差し指をそのまま地面に向けるとアドリアナの身体は無事池から出てゆっくり着地した。


 「・・・・・・」

 

 アドリアナは茫然とその少年を見つめた。前世の記憶の中で知ってはいたが、目の前で実際に魔法を見るのは...しかも自分自身にかけられたのは初めてだった。


 「...何?」

 

 「今の...魔法っ?君、魔法使いなの?」

 

 「魔法使いっていうか普通に一般人でもあれくらい使えるでしょ」


 「普通って...」


 知らないわよ、最近この世界に来たんだから!魔法って魔法使いだけが使えるモノじゃないの?


 「今のは魔法の中でも初歩でしょ。まあレベルによって浮かせる重さは変わるけど?」


 「じゃあ私も魔法使えるようになる?」

 

 「素質と訓練が必要だよ?...ああ、でも...」


 少年はアドリアナをじいっと凝視して何か考えているようだ。

 

 この子の深い赤色の瞳に見られると、何だか全てを見通されている様な気分になる。...まさか魔法使ってないでしょうね?


 どきどきしながら次の言葉を待っていると何かが走って近づいてくるような音がした。アドリアナはパッと振り向き、目の前の存在に目を見張った。


 其処には美しい銀色の毛色の大きな狼が居た。狼は少年に頭を撫でられて気持ち良さそうに目を閉じている。


 大きいっ。2メートル位はある?


 怖い...けど慣れてるみたいだしもしかしてペットとか?


 「乗って」

 

 「え...〝乗る〟ってまさか...」


 この銀狼に乗れっての!?無理ッ!怖いし絶対ムリ!


 「いいから...〝浮遊(クラビータ)〟」

 

 「キャアッ??ちょ、ちょっとッ!?」


 少年は銀狼に乗ると右手の人差し指を立ててクイっと自分の前を指差した。


 ストンッ


 アドリアナは宙に浮くと銀狼の背中に乗っている少年の前にフワッと着地した。


 「その格好じゃ帰るに帰れないでしょ」


 銀狼は空高く駆け上がった。急上昇の為、アドリアナの身体は斜めになる。ジェットコースターに乗っているような感覚だ。

 

 「キャ〜〜ッ!?落ちるッ!落ちるう〜ッ!?」


 「あー...うるさいな。落ちたくなかったらしっかり掴まってて」


 銀狼は怖いが死にたくないアドリアナは銀狼のたて髪をしっかりと握りしめた。

 森の木々より高く昇った空の上で銀狼は一旦停止して、今度は真っ直ぐ走り出した。


 イヤ〜!!空翔んでるんだけど!!??


 恐怖のあまりアドリアナは声も出ず、一刻も早く地上に降りたいと切に願った。


 なんでこんな事にっ!?それよりティーパーティーに間に合うの?いや、こんな時にもうどうでもいいか...取り敢えず降ろしてよっ!!


 「このお嬢さんなんで濡れてるんだ?」

 「ああ、湖に落ちたみたい」


 ん?湖?池じゃなくて?というか誰と話してるの?


 あまりの怖さに目をぎゅっと閉じていたが、もう1人別の声が聞こえて不思議に思った。


 「君、別の場所から移動したみたいだね。さっきの湖はウチの領地内だよ」


 「...移動?」


 そお〜っと片目を開けて見ると地上が近くに見え、アドリアナは〝死なずに済んだっ〟とほっと胸を撫で下ろした。


 フワッと銀狼が地上に降りた所は、マレ侯爵邸よりも大きく豪奢な造りの屋敷だった。


「...君、水の精霊の加護受けてるよ」


銀狼使いの謎の少年...というかこのコ、初対面なのに態度悪くない?


 ※更新は不定期になります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ