Lesson 21 見てはいけない 1
第11の月の終わりーーー
大陸の中でも北の地にあるルシウス帝国は冬が早く訪れる。
今日はルシウス帝国建国の日だがアドリアナ達はいつも通り学院で授業を受けていた。
帝国中がお祭りムードになるのは建国記念日より第3の月の三国平和デーである。この時は三国平和デー当日だけではなく1週間前からルシウスだけではなくトリトン、メルクアースでもお祭り一色になる。
建国記念日は国のお祭りというよりは貴族達の社交の場であり、皇宮で行われる為、成人を終えた若い貴族から高位の有力貴族まで出席する事ができる公式パーティーが開催される日なのだ。
「寒い〜〜」
リリと2人並んで歩いていると私達の真ん中に割って入るようにティナが後ろから腕を組んできた。私達の真ん中に入って暖を取るつもりなのだ。
「ふふ、ティナったら」
「こんなに寒いのにお父様とお母様、今日は建国記念のパーティーに行くって〜」
「ウチもですわ。勿論アドリアナのご両親もですわよね?」
「うん」
パーティーの事は昨日通信用の魔石でパパとママ2人と話したばかりだ。パパとママが出会ったのは建国記念パーティーだったらしい。
今でも仲の良い2人だが、初めて出会ったこの建国記念パーティーへは何があろうとも毎年参加するようにしているそうだ...こんな大きな娘がいるというのに未だラブラブって...なんか羨ましいな。
「いいなあ、私もパーティー行きた〜いっ!」
そう。3人共まだ成人していないから行けないのよね。...まあ私は皇宮に近づきたくないから行けない方が嬉しいけど。
「ところでさあ、冬の休暇はリリのお家に行きたいな〜?ねっ、アドリアナ?」
「え?そうね、行ってはみたいけど、リリがお邪魔じゃないなら」
「私はいつでも大歓迎です。今度は私がおもてなし致しますわ」
「今回は男の子達には内緒にしとこ?リアムいたらうるさいもん」
うーん、確かに。
**
「え...と?誰?」
「マレ侯爵令嬢ですね。第1騎士団のミーシャ・ルブラ・ハミルトンと申します。お迎えに上がりました」
え、何で第1騎士団が私を迎えに来るのよ?
「マレ侯爵令嬢、どうぞ乗ってください」
授業が終わり寮へ戻るために学院の建物を出た所で、白地に紺碧色の第1騎士団の団服を着たハミルトン卿ともう1人、同じ格好をした騎士が立っていたのだ。
一緒にいるリリとティナも突然の出来事に何も言えずにただ見守っている。
それに、これって皇室の馬車だよね?何でわざわざ私を迎えに来るわけ?
訝しげに馬車と騎士を交互に見つめると、ハミルトン卿はどうやらアドリアナの考えている事が解ったのだろう、アドリアナの警戒を解こうと笑顔を作ってみせた。
「ご安心を。フォルティス卿からの指示でして...マレ侯爵夫妻もいらっしゃいます、詳しくは皇宮に到着してからお話し致します」
はあ!?フォルティス卿の指示って...何で?フォルティス卿が私に用があるって事!?...何も思い当たる事が無いんだけど?
**
「はあ〜〜〜」
とんでもない所まで連れて来られちゃった...
心配そうに見送るリリとティナを後ろ髪引かれる思いで寮に置いてきて、私が1人皇室の馬車に揺られ到着した場所は...もちろん皇宮だ。
ハミルトン卿に手を取られて馬車から降りると目の前には見覚えのある豪奢な建物...ああここ、私歩いた事あるんだ。
アドリアナは初めて訪れたはずだが、凛の前世の記憶があった。
初めて歩いてるはずなんだけどここ、私何故か道順解る...此処を真っ直ぐ歩いて左は蔵書室で...右は騎士達が休憩する食堂...
ハミルトン卿の後ろを歩きながらアドリアナは自分の記憶に照らし合わせつつ確認した。
「マレ侯爵令嬢!」
パーティー会場となる大広間があるのは今いる建物の奥にあるクリスタル宮のはずだけど、何故ここに彼女が居るのだろう?
サファイアブルーのキラキラした瞳、海の深い青色をした豊かな長い髪は今日はサイドを編み上げて花飾りを挿している。ドレスアップした彼女は以前出会った時よりも何倍も美しかった。
「待ってたわ、こっちに来て!マレ侯爵令嬢」
クリスタル宮へ続く回廊に居たセシリア皇女が此方に気づいて駆け寄ってくるとすかさずアドリアナの左手をぎゅっと握った。
えっ、な、なに!?
訳わかんないんですけど?
セシリア皇女にぐいぐいと引っ張られてクリスタル宮じゃなくて庭園が見えるルビー宮の方へ連れて行かれてる?
そして何故か私達の後ろからフォルティス卿と侍女が1人...後を追うように走っていた。
ああ〜〜...此処に来るとか有り得ないでしょ?
でも皇宮の中、何処に何があるのか全部解っちゃうって...不思議。ちょっと懐かしいな...
※ 更新は不定期になります。




