Lesson 13 北の森 3
頭ぽんって...
そりゃ見た目は12歳だけど?
テオドールとはホントは1つしか年齢違わないのに幼い妹の様に接してこられると...なんか複雑。
あ〜っ、それよりあの鳥の巣を暗くなる前に見つけないと!テオドールにヘアアクセの事言われたら上手に言い訳できる自信ないっ!
「え...っと〜パーティーの予行練習してたんだけど急にソラが散歩したいって...」
ああ、我ながら言い訳が下手すぎる...
ソラ、使ってゴメン!!
アドリアナは何も知らずぺぺ達と楽しそうに遊んでいるソラに心の中で謝った。
「リリアーナ・ウィリデ・フォンスと申します...アルドル卿には初めてお目にかかれて光栄ですわ」
「え〜っ?アルドル卿!?学院出身の先輩ですよね〜!?第1騎士団に入られたんですね?おめでとうございますっ!!」
ん?
「えっ?あの雷使いの!?...アルドル卿、是非お話伺いたいですわ」
んん?
ティナならまだしもリリがこんなに強引に話に割って入ってくるなんて珍しい...
「騎士団のお話聴きたいです〜!お茶しながらどうですかあ?」
「え...っと...あ!フォルティス卿も一緒に如何ですか?」
テオドールは推しの強い2人に(特にティナ)後退りしながらアレックスに助けを求めた。テオドールはアドリアナとは普通に話しているが、女子と会話をするのはあまり得意な方ではないようだ。
「あー...私はまだ任務の途中だから行けないんだ...アルドル卿すまない」
テオドールはアレックスの言葉に明らかに落胆した表情になった。
「アドリアナ、先に帰ってるわね」
リリは軽くウィンクして見せるとテオドールを引っ張って連れて行くティナの後ろを歩き出したがピタリと立ち止まり此方を振り返った。
「フォルティス卿達に手伝ってもらうといいですわよ?お2人共優秀ですから」
リリがぺぺに乗る前に手招きで呼び寄せてそっと耳打ちしてくれた一言を聞いて...私はやっと理解した。
リリとティナは、鳥に奪われたヘアアクセサリーがテオドールからのプレゼントだと言うことを私がさっき話してるから知っている。
そっか...
ヘアアクセを鳥に奪われた事をテオドールに気付かれないで探せるように、先にテオドールをコテージへ連れて行く流れに話を持っていったんだ?
テオドールは女子の相手は慣れてないみたいだしリリとティナの推しの強さに断れない感じだったみたいだし...
リリとティナはアドリアナに向かって後ろ手で親指を立てて合図を送るとテオドールと共に一足早くコテージへ飛び立って行った。
**
「マレ令嬢、君も一緒に行った方が良いんじゃないか?」
アドリアナ達は空を見上げて3人を見送っていたが、見えなくなるとアレックスが心配気に言った。
フォルティス卿は〝任務の途中〟と言っていたしここはパパに近づかないように言われていた北の森だ。危険な場所なのかもしれない...
「あ...えっと実は探し物があるんです」
「探し物?...それはどんな物?」
「あの...アクセサリーなんです。金の髪飾りで石が埋め込まれてる...」
「あー...それ...」
マレ令嬢の物だったのか。
「...君はああいう顔が好きなんだ?」
フォルティス卿が何か言おうとしていたのに、今まで隣で黙っていたフォルティス公子は被っていたフードを「鬱陶しい」といった表情で外しながら言った。季節的には初夏の気候で暑いはずなのに汗1つかかずに涼しい表情をしている。
「?」
ああいう顔?って誰の事...?
「君の従兄殿、成人したから16歳か...騎士としてはまだまだだね」
「...は?」
何言ってんの、この人!?
アドリアナはルークが誰の事を言っているのか理解した。
私も此処に来てまだ数ヶ月だしテオドールの事全然知らないけど...
「なんで貴方にそんな事言われなきゃなんないの?」
あ...いけない...つい口に出ちゃった。
辺りの空気が凍りついたのがわかる。
でもムカつくんだもん。テオドールは優しいし騎士になる為には学院でも上位の成績を取らないとなれないってリリに教えて貰った事がある。騎士でも何でもない人にそんな言い方されたくないんだけど?
「おま...言い過ぎだろ!」
アレックスは慌ててルークを制しようとするがルークは素知らぬ表情である。
ルークの奴機嫌悪いのか?いつもこんなに感情出さない奴なのに...
そういえばあの日...マレ令嬢をアルドル公爵家まで送った後だったかーーー
*
「ルーク、マレ令嬢を無事にアルドル公爵邸まで送り届けたぞ」
「兄上...お早いお帰りですね。パーティーは楽しくなかったですか?」
「楽しかったよ?メンバーは変わりないし挨拶だけして帰ってきたんだ」
「...令嬢達に囲まれるのも毎回ですからね...また恋文でも渡されたんですか?」
ソファに座った拍子に懐に仕舞い込んでいた手紙がカサカサと音を立ててしまったようだ。
「まあね」
「その中に居ましたか?意中の相手は?」
「〝意中の相手〟って...まだ1人に決めるのは難しいかな。まあ時期が来れば父上が決めるだろう」
ルークに、僕には好きな女性がいると思われているのだろうか...
フォルティス公爵家の長子として生まれてきた僕には結婚相手を選ぶ事なんて許されない。帝国や家の為になる女性を妻にする事が僕の役目だと幼い頃から常々思ってきた。
だけど時々考えてしまう。生涯を共にする相手を選べたら...僕は...
そんな事を思い浮かべながらふと窓の方を見ると、窓の側に居たルークが外を眺めている。
何を見ているんだろう...
僕はそっとルークの背後に近づきルークの視線を辿った。
あの方向は...フォルティス領の森じゃないか?
ルークが時々薬草を取りに行く森だ。ルークがペットの銀狼と会ったのもあの森だった。そういえばマレ令嬢はあの森の湖に瞬間移動してきたと言っていた。
え...!?
僕は窓に映りこむルークの表情を見て茫然とする。
涙!?
森の方向を眺めているルークの瞳からは、涙が流れて頬を伝っていたのだ。
え?アレックスに意中の相手いるの!?
本人はいないと言っているけど、ルークは何か知ってそう...
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