Lesson 11 巫女になる前の恋愛論 1
「う〜ん・・・」
アドリアナはアルバアラス寮に帰り、自室の机に向かって座っていた。
『セシリア皇女が好きなお店』って...明らかに高価な品っぽいよね?テオドールは気軽に...って言ってたけどほんとに普段身につけていいもの?
両肘を机につき、両の掌を合わせた上に乗せた金とターコイズ色の石の髪飾りを横から上から斜めから...とあらゆる角度から眺めてみる。
やっぱりどう見てもいい仕事してる・・・石のカットもキレイだし雑なところもないし精巧で丁寧な仕上がりだ。
...なんか高価そうだけど...和瀬君の顔でプレゼントされるなんて夢だな...幸せな夢に違いない!
ふとその時、テオドールの真剣な表情が至近距離まで近づき、長い指先がアドリアナの髪に触れた時の光景が頭の中をよぎった。
わあっ!?...なに思い出してんの!!
あれは...テオドールにとっては何ともない事だから!!
再び紅潮した頬を手のひらで押さえながら自分に言い聞かせる。
...大体4つも下だし!従妹だし!
皇女様のショッピングに同行してたまたま目に付いて買っただけだから!!そうっ!たまたまよ!!
アドリアナは持ってきたバッグからビロードの布を取り出し、髪飾りを丁寧に包んだ。
「ふう...勿体無いから大事にしまっとこ」
コレ見ると思い出しちゃうし、心臓に悪い...
髪飾りを仕舞うと改めて机の上に置いている3冊の書物に視線を移した。
*
『ルシウス帝国建国の成り立ち』
〝昔、大陸にはルシウス、ミラーン、トレイヤール、トリトン、キルケ、メルクアースの6つの小国に分かれていた。
ルシウス前暦14○年、トレイヤールとトレイヤールの同盟国であるミラーンはトリトンへ侵攻を始めた。トリトンは同盟国であるメルクアース、ルシウスと協力し、トレイヤールとミラーンは最終的に降伏した。
侵攻から戦いの終結まで約10年という年月がかかった。戦いに無関係であったキルケを除き、5つの国の人々は長きに渡る戦いの為、疲弊しきっていた。
トレイヤールとミラーンの国土はそれぞれ分割し、3国に吸収され、ルシウス、トリトン、メルクアースの領土は広がった。
広大だが荒れた土地であったトレイヤールをルシウスが吸収し、優秀な魔導師達により土地改良を行った。〟
ふ...む。これはマレ家の歴史の先生が教えてくれたのと同じだ。
アドリアナは開いている書物をパタンと綴じると、次の書物に手を伸ばした。
『歴史における巫女達』
〝《巫女》とは神の声を聴き民に伝える聖なる乙女のことを言う。
巫女は巫女の能力が顕れる以前は普通の人間である事が多い。
巫女の婚姻は巫女の能力が失われる事を意味する。その為、巫女が現れた場合直ちに保護し、中央で管理する必要がある。
皇族と婚姻した巫女は、稀に能力が失われない場合がある。
巫女の能力は子には遺伝しないが巫女が出た家系で巫女と似た能力を持つ子が現れる場合もある。〟
全て読破するのには時間がかかりそうだと感じたアドリアナは、自分に関係のありそうな重要な部分だけざっと目を通した。
えーと...じゃあ私、神の声が聴こえるようになるって事?
それで...巫女の能力が消えたらダメだから監禁されて...とりあえず皇族とお飾りの結婚をさせられるって事??
やだやだ!絶対嫌っ!!
・・・そうだ!!巫女の能力が発動したら国外に逃げようっ!
あ...悪い事してないのにお尋ね者みたいになるかな?
ここで警察みたいな組織って多分騎士団だよね?
・・・騎士団に捕まらないくらい強い魔法使いになるか、超強い騎士になって逃げる!?
...ううーん...でも私剣に自信ないな。この間の試験も18位だったし...
いや、女子の中では十分上位である。アドリアナの周りが上位の人間ばかりで麻痺しているようだが...。
入学してから始めたとは思えない剣捌きだとアンバーはジャスパーに言っていたが、当然アドリアナの耳には入っていなかった。
ま、まあいいや。
巫女になるにしてもまだ先だし。
とりあえず魔法と剣の訓練頑張るぞ!!
アドリアナは3冊目の書物の頁を捲った。
3冊とも巫女についてあんまり詳しく載ってないなあ...
誰に聞けば詳しい事教えてもらえるんだろ?
※ 更新は不定期になります。




