Lesson 4 落ち着かない... 1
魔法門とは長距離を短時間で移動するための入り口である。
ルシウス帝国の主要な都市や町には魔法門が設置されていて、通行料を払い、簡単な身体検査の後使用する事が出来る。
例えば馬車で5刻(5時間)かかる距離を魔法門を使えば1刻(1時間)で済む。大きな荷など馬車に乗せて移動出来る所も魔法門の良い所だ。
今回のアルドル公爵邸のパーティーは、招待客が魔法門を自分の邸で発動させ、到着地のアルドル公爵邸に行けるように魔法が招待状にかけられていた。
貴族の公式なパーティーは成人している貴族は殆ど全員招待される。今回アドリアナは、成人前だが親戚という特別枠らしい。
アレックスと馬車に乗って魔法門に入るとそこは揺れも動きもない時間が止まっているような空間だった。
オレンジと黄色が混ざったような綺麗な空に馬車ごと浮いてる感じ...でも全然揺れないし超快適!
「テオドールは卒業した後、来期から騎士団に所属する事が決まってるんだよ」
アレックスは騎士団の後輩になる事もあってテオドールを知っているようだ。
「あ、学校に通ってると伺いました。私はその...詳しく知らないんですが、どんな所なんですか?」
テオドールが学校に行ってると聞いた時、どのような所なのか凄く興味が湧いた...が礼儀作法のレッスンで忙しくてすっかり頭から抜けていたのだ。
「学校は色々あるけどテオドールが行ってるのは首都のデュ・アンカーズ帝国学院だよ。ここは皇宮や帝国の中枢で働く人材を育ててる。僕も学院の卒業生なんだ」
なるほど、この学校がルシウス帝国のエリートコースなんだ?さっすが公爵家。
「魔法の素質があれば学院に入れるよ?マレ令嬢も行くと良いよ」
「えっ...私?」
魔法?
私にも魔法の素質あるの?
「この国では魔法は一般的に使われてるからね。一定レベル以上の魔力を持つ者には魔法を使う者の常識を教えているんだ。その為の学校だよ」
なるほど...そうだよね、悪い事に魔法使われたら大変だし。
その時、馬車の窓から真っ白な光が入ってきた。
「眩しっ...」
「そろそろ着くよ...アルドル公爵邸に」
*** ***
魔法門を出ると目の前にアルドル公爵邸が見えた。大きな門扉が馬車の速さに合わせてゆっくり開いて、中に入るとまた門扉は自動で閉まった。
あの門も魔法がかけられてるのかな?
馬車を降りた所でマレ侯爵夫妻が立っているのが見え、アドリアナは2人の元へ駆け出した。
「パパっ!ママっ!」
「アドリアナ!!」
「勝手にいなくなってゴメンなさい!」
「良かった...無事で...!」
エレノアはアドリアナをギュッと抱きしめた。
「フォルティス卿、有難うございます」
「いえ僕は送る役目を任されただけで、助けたのは弟ですから」
アレックスはアドリアナに「またね」とだけ言うと軽く手を振って去っていった。
*** ***
アルドル公爵邸に入ると、アルドル家の執事や侍女達がエントランスに待機していた。パパが(2人ともこの呼び方が好きみたい)執事と目が合うと、すぐに屋敷の奥へと案内された。
成人のパーティーの会場とはかなり離れた、温室が見える静かな部屋に、アルドル公爵とテオドールは居た。
「エレノア!マレ侯爵も!よく来たわね」
アルドル公爵は何とエレノアの姉である、ディミトラだった。ディミトラは3人の元へ駆け寄った。
「此方がアドリアナね。ディミトラ・ディ・アルドルよ」
「アドリアナ・ステラ・マレでございます」
アルドル公爵から挨拶を受けてアドリアナはすぐに挨拶を返した。
よしッ!今回は自然に言えたわ。今日は沢山貴族達が集まるし、失敗しないように頑張らなきゃ!
アルドル公爵の斜め後ろに立っている青年は前に出てアドリアナをじっと見つめている。
アドリアナはパーティーに初めて参加するだけでもかなり緊張していた。そしてアドリアナの親戚で久しぶりに会うとはいえ、凛にとっては初対面の相手である...《もしアドリアナじゃないとバレたら?》と考えると真っ直ぐ相手を見る事が出来ず、アドリアナは2人の顔ではなくとりあえず首元を見ていた。
「テオドール・ディ・アルドルです。...覚えてる?俺の事」
どくんっ
え...この声...聴いた事...ある?
あー...誰の声だっけ?
※更新は不定期になります。




