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第六十六章 ちょっと皆の能力いってくる

 俺はどこまでも落ちそうな暗鬱な思考を、薙刀を大きく振りかぶって払った。


「こんなとこで凹んでいてもしょうがない」


(特に得意なものが無いのなら、私は剣が元の型が。それが望ましい)


「剣は……無理だ」


(そうか)


 アトゥなんとかは、俺と同化し、なにか察したのか、その返答を咎めず、特に異論も唱えなかった。ありがたいことだが、もしも俺の心が読めているのなら、腹立たしい。

 ふと、そこで自分の方に集中していたので、美影ちゃんや仁冶が何をやっているのか気になった。


「あれ?」


 美影ちゃんはまだ突っ立ったままだった。でも、その手には、細身の剣――レイピアが収められている。剣技の練習をしているようには見えない。ただ、ぼぉーっと立っているだけだ。


「美影ちゃん?」


 少し離れた位置から声を掛けてみたが、反応は無かった。もしかしたら、意識を集中させ、これから何かをするのかもしれない。

 邪魔をしては悪いと、仁冶の方を見てみた。

 仁冶は実に分かりやすい稽古をしている。手に槍を持って、それを使って、足運びや攻撃の態勢のチェックをしていた。


「槍か」


 変異体との戦いに使用したが、やっぱり、専門の人が使うと随分と違うものだ。動きに無駄は少ないし、恐らくだが、仁冶は相手に人をイメージして動いている。そう考えると、すぐに相手側の人間が想像でき、繰り出される攻撃は素人の俺にもすべて効果的だとわかる。若干、甘い部分があるが、それは見ていて指摘できるだけで、あそこまでの動きは俺には出来るわけがない。

 この戦いに巻き込まれてから槍を学んだのなら、関わったのが、高校時代と言ったから十分、十二分な腕前だと思う。


「ふぃーっと! 休憩!」


 傍観を続けていると、疲れたのか、仁冶はその場に寝そべった。

 言葉とおり、休憩に入っているようなので、俺は少し話をしようと思った。アトゥなんとかは何も口出ししないので、仁冶の元へと靴を履いて移動する。


「仁冶はどうして槍なんですか?」


 荒い呼吸をしている仁冶に尋ねる。


「んん? ああ、日下部か。槍がどうした?」


 仁冶の武器は赤茶色の柄をしていて、先端の刃は銀色に輝いている直槍だ。柄と槍頭の境目に赤い紐が巻かれている。俺の万能特技な目算で見るに、柄は150センチほどで、穂先は20センチほどある。


「どうして槍なのかな、と思いまして。やっぱり、水潔獣の型なんですか?」


 大分呼吸が落ち着いてきた仁冶が、首を捻った。


「そうだな。特に武道とやっていたわけじゃねぇから、なんでもよかった訳で、それなら水潔獣の望む武器でいいやって感じだよ」


「そうですか……」


 武器は槍。あれ? なんか引っかかるな……。んん? あ……そうか! 能力だ! 俺って考えてみれば、水潔獣の力ってのは、アトゥなんとかのマジックしか見た事が無い。


「仁冶の能力ってなんなんですか?」


 もう気になってしょうがなかったので、正直に聞くことにした。アズハに関しては、最初に会った時、光みたいなものを出して、それを俺がアトゥなんとかに当てた。あの光が能力だったのかもしれない。

 まぁ能力なのかどうかは謎な訳で、アズハの杖、美影ちゃんのレイピア、隊長の刀、それで仁冶の槍、と今まで出会った『ダイバー』の武器はほんとど見た事があるのだ。局長のも見てみたいなぁ、と思うが、それよりもやっぱり能力だ。


 仁冶は、ククッと怪しい笑みを覗かせて、立ち上がった。


「見ていろ」


 右手の人差し指を天井へと向けて立てる。そこを見るように促され、俺は言うとおりにした。


「シュポッと!」


「おおっ!」


 仁冶の妙な掛け声で、指先にライターが出すぐらいの微弱な赤い火がともった。


「これが、オレの能力さ。端的に言えば、『火』って訳だな。なんつーか、アニメとか漫画でメジャーな能力だろう? まさか現実でそれを自分が得るとは思わなかったけどさ」


 人差し指にともる火を、フッと吹き消し、仁冶は苦笑する。


「もっと大きな火は出せないんですか?」


「ん? もちろん出せるけど。オレの体から直接出せるのは、まだあれが限界」


 そう言って、左手に握られた槍を俺に突き出す。


「でも、この槍を通せば、それなりの火は出せるぜ。あと、小さな火球も出せっかな。まあ、後は俺の修行次第だね。最初に比べるとこれでも随分な進歩なんだよ。最初は槍の先から、ちょびっと、ほんともう可愛らしい火が出せただけだったからさ」


「へぇ」


 そうなると、水潔獣の能力を使いこなすのには、相当な時間を要するわけだ。考えていたより大変かもしれない。

 俺の場合は、どういう風に成長するんだ? よりスムーズに瞬間移動ができるようになるのかな?


「まあ、ぼちぼちとやりゃあいいんだよ。練習たってさ、自分の命を削るわけだし」


 へろーんといった感じに、というかサラリと言ったが、確かにそうなんだよね。能力を使うわけだし……。なんというやっぱり、俺の努力って矛盾してるな。生きたいから戦う、でもそのための準備をすれば、自らの命を削る。

 これが、俺のジレンマって訳だ。


 なんとなく、薙刀を叩きつけたくなった。


(主が何を考えておるのか、大体想像はつく……。しかし、)


「わかってる」


 俺は苛立ちを隠さず即座に答えた。わかっているから困ってんだよ。

 一人、苛々する俺を見て、仁冶が苦い笑みを浮かべる。


「どうした? アトゥムになんか言われたか?」


 どうやら、同化中に水潔獣との会話できるのは、特別な事ではないらしい。


「いえ、ただ、俺の問題です」


「そっか。まあ『ダイバー』の問題は煮詰めずに、かるーく考えていた方がいいぞ? 考えれば考えるだけ、逃げたくなるもんだ」


「はい……」


 仁冶は大きく伸びをして、槍を構えた。


「そんじゃあ、オレは訓練にもどっから」


「すいません、邪魔して」


 俺は頭を下げて、すぐにその場を離れた。

 手に握る薙刀、苦ではないが、見てるとなんとなく嫌気が差してくる。俺は、武器を光へと戻し、体内(?)へと還らせた。


 さて、なんかまたモチベーションが下がってきたけど……。次は、美影ちゃんの能力でも聞いてみようかな?

 美影ちゃんの方へと目を向けると、まだボーっと突っ立っていただけだった。


「あれってなにやってんのかな?」


 俺は首を傾げつつ、もう一度靴を脱ぎ捨てて、畳の上に乗る。そのまま、美影ちゃんの側まで歩いていこうと思った。

 だが、予想外な事態が俺を襲った。

 美影ちゃんに、後数歩で到達、という所で、急に景色が変わった。


「な、なんだよ、つーかどこだよ?」


 聳え立つ高層ビル、行き交う人の群れ、駆け抜けていくたくさんの自動車。

 俺は、都会の公道に立っていた。


「アトゥなんとか!」


 その突然の景色の変化を、俺はアトゥなんとか種無しマジックと判断し、問う。


(私の力ではない。これは、あの少女のものだ)


「美影ちゃんの……?」


 美影ちゃんは他人をワープさせる能力を持っているのか? それとも、これは……。

 推論が正しいか確かめるために、俺は行き交う人々の一人に触れた。


「あっ……」


 俺の考えは正しかった。確かにこの世界は、余りにリアルだ。だけど、何かが足らないように思える。視覚情報は文句無しに、音や匂いも忠実に再現されている。だけど、何かが足りず、違和感を感じた。

 そして、現に足りなかった。この世界に、感触は無い。さっき触れようとした人も、すり抜けて、歩いていってしまった。恐らくは、周りのビルなどにも触れられないだろう。


 俺が視線をさまよわすと、一人の少女が目に入った。

 混雑するその都会の真ん中の景色の中、ポツンと美影ちゃんは立っていた。疾駆する車を一切気にせずに、レイピアを握ったまま目を瞑ってたたずんでいる。

 能力を使うにあたって集中しているのかな?


 邪魔しては悪いだろうと思い、とりあえず俺は一歩、二歩と下がる。

 すると、景色は元に戻り、訓練ルームが広がっていた。


「これが、美影ちゃんの能力か……いや、ルーメイの力」


 水潔獣は、人と同化する事でその力を真に発揮できる、と局長は言っていた。それは、偶然なのだろうか? それとも、水潔獣とは誰かが作り上げた生物兵器?

 もしも人間が作ったのなら、一体、なんのために……いや、それは考える必要は無い。戦いのためなのだろう。


 水害獣とはなんだ?

 水潔獣とはなんだ?

 『水の世界』とはなんだ?


 俺は、何も知らない。考えると何もわからなくなってくる。

 この戦いに、俺自身が抱く決意はハッキリとしていないが、そもそもは、この戦いの意味を理解していない俺は……余りに、滑稽じゃないか?

 負へと向かいつつある思考を俺は抑えようとした、だけど、止まらない。なんというか、気に入らない。何も知らないままで、局長は俺を戦わせようとしている。それが、気に入らないんだと思う。


「あの、直輝さん……大丈夫ですか?」


 困惑が怒りへと転じ始めた頃、不意に右肩に手を置かれた。俯き気味の俺の視界に、アズハの桃色の髪がちらついた。見ると、肩にちょこんと置かれた手は、アズハのものだった。見上げてくるアズハの顔は不安げに、眉が垂れ下がっている。


「あ、大丈夫だよ。えっと……なんか、すいません」


 そう答え、笑みを浮かべると、幾らかは不安を取り除けたのか、アズハも儚げに微笑んだ。

 肩に置かれた手が離れる。ちょびっと残念だ。


「いいえ。どうですか、訓練の方は」


 いや、そんな事を尋ねられても……正直、困る。アトゥなんとかはこういう時に限ってずっと大人しいし。


「正直に言うと、何をやればいいかサッパリで」


「あっ、そうですよね……す、すみません、私が何かしらフォローを入れるべきでした」


「アズハが気にする事じゃないです。訓練といっても、きっと人それぞれだと思うので」


「それは……そうですけど。でも! やっぱり、何かしら方向性のようなものを」


 うだうだ言うアズハに対応しつつ、俺は考えていた。

 美影ちゃんの能力についてとか、アズハの能力についても気になるな。今はあんまり暗い話題はノーサンキューだから、そういう話題のが助かる。

 そこで、会話内容をちゃっかり逸らせつつ、自分の望む展開へと運んでいく。


「美影の能力ですか?」


 よしっ! 流石は俺の紳士的会話技術。この卓越した話術により、幾人もの女性方を……落としてたら、今頃は幸せなんだろうなぁ。ってやべぇ、暗黒面に引っ張られるとこだった。

 まぁ、なにはともあれ能力についての話へと持って行けた。

 アズハは美影ちゃんの方を見ている。


「俺の想像だけど……その、幻覚を見せたりとか、そういうのですか?」


 アズハは、美影ちゃんの方を見たまま軽く頷いた。


「はい、そうです。えっと、もしかして、美影に近付きましたか?」


 淡緑の両眼が俺を見上げてくる。やっぱり、上目遣いは、なんか、こう……いや、なんでもない。


「ずっと、あのままなので、少し気になって」


 俺はまだ突っ立ったままの美影ちゃんを見て、息をつくように答えた。


「そうですか。確かに、美影の能力は、簡単に言うならば、『幻想』です。内側に描いた世界を、周囲の者と共有することができるんです」


「だから、集中することが必要なのか……」


「簡単なイメージなら、行動しながらでも、同時進行で可能なようですけど、緻密な想像を能力として共有するには、やはり、相応の苦労があるみたいです。だから、戦闘向き、とは言えないかもしれません」


 アズハの言うとおり、確かに戦いに使う、というよりは、それ以前の、トラップや駆け引きの時に用いるのがおもだろう。だけど、どのような原理だかはわからないが、使い方によってはバリバリの戦闘能力になりえると思う。

 単純に、攻撃を幻覚によって隠せば、それだけで恐ろしいものだ。


「あ、あの、それで直輝さん……」


「はい?」


 アズハが急にもじもじし出した。なんだ? 告白か? ってあぁぁ、くそ! 俺の頭はそれしか考えつかねぇのか!

 半ば、自分のピンクな思考に呆れつつアズハを見やる。瞬間、抱き締めたくなった、と思ったのは、秘密だ!

 だってさ……前もこんな事あったけど、その体つきでもじもじすんのは反則だって……紳士モードを見事に打ち壊してくれるぜ。ああ、抵抗時間はコンマ一秒にも満たない。


「えっ、あ、え? ど、どうしたんですか直輝さん?」


 不味い、淫らな感情を堪えるのに、俺の完璧な笑顔が崩れようとしている。

 耐えろ! 耐えるんだ、俺! お前は出来る子だ!

 ……ふぅ…………はぁ…………よしっ! 行ける!


「大丈夫れふよ?」


 ダメだったよ……。『れふ』って何? ねぇ何!?


「れふ?」


 予想通り指摘してきました。ごめんなさい、父さん、母さん、先立つ不幸をお許しください。こんな不肖な息子でごめんなさい。

 俺は、困惑するアズハに背を向け、膝を抱えて現実逃避した。

 

「直輝さん!? お腹の調子でも悪いんですか?」


「あはは、気にしないで下さい。俺は、もう生きる価値なんてないんです。そうです、紳士失格ですよ。もう除名されちゃいますよ」


 もう自分が何を言ってるのかもよくわからない。


「ええっ!? そ、そのよくわからないですけど、元気出してください」




 数分後、俺はアズハの必死な介抱によって、社会復帰を果たした。もう少しで、満員電車に乗り込んであんなことやこんなことをする所だった。本当に危なかった。


「それで、アズハ、さっき何かを言いかけてましたけど、なんですか?」


 復活した俺は、今後をまっとうに生きようと、硬く決意した。一々、女の子の可愛らしい仕草などに過剰反応しないように気をつけなくては……。

 現実へと戻ってきた俺に安堵していたアズハだったが、俺の訊かれて、何故かビクンと震えた。そして引き攣り気味の笑顔で見上げてくる。


「えっと……そ、それは……その……」


「はい?」


 中々ちゃんとした返答が得られない。正直、対応に困る。


「そのぉ……能力……で、美影のは……だから、あのぉ」


「んん……?」


「つまりぃ……」


「え?」


 一体なんなんだ? 何か言いたい事があるんだろうけど、そんなに言い辛いことなのかな? だったら無理に言わなくてもいいんだけどな……。


「アズハ、言い辛いなら、無理に言わなくてもいいですって」


 俺がそう言うと、アズハは表情を凍りつかせ、俯いた。

 あれ? 何かミスった?

 だけど、すぐに顔を上げて微笑んだ。


「はいっ……」


 ……やっぱり、何か間違えたっぽいな。

 アズハは、さっきの一言を言って完全に下を向いたままになってしまった。

 どうしよう、やっぱり俺が悪いんだよね? でも、何が悪かったんだ?


「直輝さん、やっぱりデリカシーゼロです」


「ふえっ? ってイテ、イテテテテッ!」


 背後から掛けられた……多分、美影ちゃんの声、そして、すぐに耳に激痛が走った。小さな指が耳を引っ張って、俺を誘導する。半端無いほど痛いです。


「えっ? 直輝さん? 美影?」


 アズハの声が聞こえた……ような気がする。耳が痛い。

 俺は、耳を引っ張られ、そのまま訓練ルームの外へと出された。


「はぁ……」


 廊下へと出て、耳が開放された。予想通り、犯人は美影ちゃんだった。

 美影ちゃんは廊下に出ると、俺の顔を見て盛大に溜息をついて、挙句、教育を放棄した教師の目をして首を横に振った。

 えっ!? 俺って手遅れ!? とか考える空気じゃないので、真面目な顔をする。


「どうして、こう、ヘタレなんですか……」


「へ、ヘタレ?」


 俺、遂にヘタレに落ちぶれた……。


「とりあえず! 美影から全部言うのは嫌ですし、悔しいですから、自分でどうにかしてください」


 苛立たしげにそれだけ言って、美影ちゃんは訓練ルームへと戻ろうとする。


「ちょっと、美影ちゃん! 俺、何がなんだかサッパリなんだけど……」


 なさけないが、俺は美影ちゃんを呼び止める。

 すると、また溜息する声が聞こえた。


「直輝さん、美影の能力はわかりましたよね? アズハのはわかりましたか?」


「いや、まだ」


「それを聞いてください」


「それになんの意味があるの?」


 俺がそう尋ね返すも、返答は来ず、美影ちゃんは訓練ルームへと入っていった。


「意味がわからん」


 よくわからないけど、とりあえずはアズハに能力を訊けば解決なのかな。


「それなら、訊くとしますか」


 ほとんど自分で考える事を放棄しつつも、俺は選択を取った。




 訓練ルームに戻ると、アズハは美影ちゃんと話をしていた。

 俺が入ってくるのを確認した美影ちゃんは、すぐに畳みに上がって、訓練へと戻っていった。

 一人ポツンとしているアズハに声を掛ける。


「聞きそびれちゃったんですけど、アズハの能力はなんですか? 最初に会った時に、光の球を出してましたけど、あれがそうなんですか?」


 そこはかとなく尋ねてみる。

 すると、アズハは、明るく笑い答えてくれた。


「はいっ、私の能力は、あの時使っていた、『光』です。使い方は色々ですけど、主な用い方は、バリアです。他にも、探知能力としても使えますよ」


 便利だな。それに、難しいな。使用者には、能力の感覚というのが掴めるのだろうか?

 よくはわからないが、まぁ使えているのだから、慣れはあるのだろう。


「それより、直輝さんは、アトゥムの能力を練習しましたか?」


「あ……なんというか、失念してた。そうか、俺も……『ダイバー』か」


 ディスなんとかの感触に、水潔獣の力、それが、俺も戦いの参加者なのだと嫌でも教えてくる。


「なら、少しでも慣れておいた方でいいですよ。水害獣は、やっぱり手強いですから」


「じゃあそうします」


「えっと、コツというのは、やっぱりアトゥムにしかわからないと思うので、私からは、なんとも言えませんが……。何事も、集中です」


「了解です」


 アズハは、「それでは、私も自分の訓練に戻るので」と言って訓練ルームから出て行った。最初に訓練へと入った時も部屋から出て行ったので、別の部屋でやっているのだろうな。


(ふっ……主は、滑稽だな)


 俺がアズハを見送り終わると、頭に直接声が響く。

 ずっとだんまりしてやがったのに、このタイミングでか。まぁ訓練に入るから、ちょうどいいんだけど。


「どういう意味だ?」


 同化するアトゥなんとかに聞き返す。


(…………いや、なんでもない。それより、私の力を使うのだろう?)


「なんでもないってか……。まぁいい。力、一度だけ使ったけど、あのイメージでいいのか?」


(問題があれば出来はしなかった)


「左様で。ま、いっちょやってみますかね」


 俺は、出来るだけイメージがしやすい場所を探す。

 やっぱり、何かしら目印があった方がいいだろうな。だけど、どこがいいだろうか? あの、なんだかよくわからない武器が立て掛けられている壁の方がいいかな?

 訓練だ。そう、気張らなくて大丈夫だろう。あそこで決定。


 剣やら斧やら槍やら……と接近武器から、銃や弓などの遠距離武器まで壁に、押さえがあって、それで飾られている。

 そこの前に立つ自分をできるだけ忠実にイメージする。


 それが、現実であるかのように、鮮明に頭に描く。描いたものこそが、現実で、今ここに居る自分のが虚像、そういう考え方をしてみる。

 極限まで、その想像をリアルに描く。


 次の瞬間、俺は……種無しマジックの起こる感覚を感じた。

 なんとも表現しにくい感触が全身を包み込み、世界から隔絶されたような孤独感が一瞬だけ通り過ぎ、俺は瞬間移動した。


「成功だぁ……ってうぉぉ、ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」


 ドガシャ! ガゴン! ズゴ! ズドン!

 もうなんか物凄い音が聞こえた気がする。全身が痛い。これは、瞬間移動による副作用……ではない。単純に、座標がずれて、壁に立て掛けられていた武器たちが俺に大量に降り注いだというだけの事だ。


 死んでないことから、武器は偽者でただ飾られていただけのようだ。助かった。心底ホッとする。

 美影ちゃんや仁冶が、凄まじい音を聞いて、俺の方へと駆け寄ってくる。



 二度目のマジックは、どうやら大失敗のようだ……。


ふひぃ……疲れましたぁ。

更新が遅くなりましたが、長めなので勘弁を。

それぞれの能力について軽く触れてみました。詳しい能力の解説は、戦闘中やら、各々が勝手に語ってくれると思うので、それまでは我慢でお願いします。


それにしても、直輝、遂にヘタレって言われちゃいました。それに、マジック失敗という事態に……。

頑張れ主人公! と応援してやってください。


次回予告?

遂に、隊長の能力が明らかになる……かな?

そして、更なる敵が来る……のかな?

(かな? かな? ってひぐらしのあの子みたいだ)

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