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第三十一章 ちょっと修羅場作りいってくる

 昼食を食べ終え、今はまたリビングでボォーっとしている。

 友貴からメールの返信が来て、どうやら2時頃に明良を連れて来るそうだ。今はまだ1時半でもう少し余裕がある。

 だが、退屈でしょうがない。


 午前中は友貴のゲームと死闘を繰り広げ、正直苛立った。1時間の時点でギブアップしようとしたが、なんだか負けた気がしてその後も続行してみたが、合計79回のバットエンドを味わいながらも、やっとメインヒロインのルートへと入れた。

 シナリオは少なくとも俺には理解出来ず、キャラの立ち絵は仕上げが甘く、見てて不快だ。BGMもセンスが無いし、シーンにあった曲調じゃないことが多々あった。テキストも見辛くて目が疲れるし、途中で入るCGも適当で立ち絵より酷かった。

 よくもまぁ販売できたねって感じだ。

 OPだけに感動する物凄い詐欺ゲーであった。


 今はもう体力を使い切ってのボォーっとかもしれない。

 あぁぁ……もうダメ。

 30分の仮眠を取る事にして寝る。リビングの椅子に深く腰掛け、深いまどろみへと落ちて行く。



 玄関のチャイムが鳴る音で目を覚ます。壁に掛かっている時計を確認すると、寝始めてから30分ほど経っていた。

 友貴かな? と寝惚けていてまだ完全に活動しない脳で考える。

 起きたばかりで酔っ払って千鳥足のような足運びで、玄関へと向かう。その間に何度も催促するようにチャイムを鳴らされイラッとしてくる。

 なんとかこけずに玄関へ辿り着き、扉を開け、訪問者を中へと導く。


「遊びに来たぞ〜」

「お邪魔します」


 予想通り&予定通りにそこには私服姿の友貴と明良の姿があった。

 友貴はラフで動き易さを追求したような格好で、革色のジャケットに若草色のスラックスを着ている。微妙にミリタリーっぽい感じなのは友貴の趣味だろう。

 そのミリタリーマンの横に、黒のパーカーで黒のシャツを包み、下は黒のジーンズ…と黒塗れの明良が居る。それぞれの服の黒は明暗の度合いが違い、黒一色ながらも違和感が無く、寧ろ明良の雰囲気に合った服装だ。


 そんな友貴と明良が何かが大量に詰まった袋で両手を塞がせている。コンビニの袋だったり近所にあるデパートの袋だったりで、それぞれ別の場所のものだ。


「それ何が入ってるの?」


「色々だ!」


 友貴の即答。いや、色々って…。まぁ中で見せてもらえばいいか。

 俺はこのままここで話を続けるのもなんなので、二人を自分部屋へと案内した。


「それで、今日は何しに来たの?」


 部屋に着き、荷物を床に置き終わった友貴たちに俺が質問をするが、友貴が目を丸くする。


「何をしにって、昨日話したよな? 直輝の家でクリスマスパーティー開くぞ! って」


 そんな話したっけ? あーでも昨日は疲れてたから、軽く流してたかも。

 

「そうだっけ」


「そうだよ」


 友貴ではなく明良がポヤーっと力の抜ける声で答えた。

 そこで会話を打ち切り、二人は両手に抱えていた袋をガサゴソと漁り出した。中には大量のお菓子とパーティーグッズが詰まっていて、それを俺が予め用意していたミニテーブルの上に並べていく。

 並べて行く内にどれほどの金を掛けたのか不安になってくる。


「これはまた……随分とお金を掛けたな」


 その不安感からか、その言葉が自然と漏れた。


「ああ! 割り勘だ!」


 まだまだ袋から溢れてくる品を出しながら友貴が明るく答える。だが、その言葉は俺と明良を凍り付かせた……。


「えっ……俺今月金欠なんだけど……」


「僕も今月は苦しいな。年末の分もあるから」


 俺と明良の言葉に友貴は愕然とし、わざとらしく両手を上げ、棒読みで「わーどうしましょう」と言う。


「お前の反応に対して、わーどうしましょうだよ。後先考えずにそんなに買い込んでくるなよ……」


 俺がそう言うと、友貴はシュンと項垂れて、両手を顔に当て、乙女のように泣く。


「うぅぅ……酷いわ、酷いわ直輝くん! 私、あなたのためにたくさん買ったのに!」


「いや、あんた誰だよ……」


 女口調で喋る友貴がキモかったので適当に答えておく。

 俺の反応に特に文句を付けず友貴は普通の口調へと戻した。


「まあ、別にお年玉で払ってくれればいいさ」


「こっちに俺、親戚居ないけど……」


「じゃあ僕はそうするね」


 しょげる俺を気にせず、明良はチョココロネをくわえながら友貴の提案に賛成した。いつの間にチョココロネを開けた? というかなんでチョココロネ?

 さり気無い疑問を浮かべる俺に友貴が別の提案をする。


「ん〜じゃあ直輝はツケで、何かあった時に奢って」


「了解」


 そういうことになり、お金の問題は解決した。

 その後は、適当に雑談をしながら、お菓子をつつきあう。これでは、いつもの遊びにお菓子が付いただけで何も変わらない。パーティーグッズはあるが、三人だと盛り上がらない。


「なぁ友貴、他に誘ってないのか?」


 友貴は胸に手を当て、まるで懺悔するように言った。おぉぉ……友貴の背に輝かしい後光が。


「イエス! 神に誓って誘っていません!」


 余りの清々しさに俺は、涙が溢れて…………、


「格好付けて言うな、アホが!」


 脳天をしっかりと捉えた究極のチョップを友貴に叩き込む。


「ぐぉぉっ!」


 友貴は頭を押さえ、部屋中を転げ回った。

 それをロケットパンに噛り付きながらボンヤリと眺める明良が、ボソッと呟く。あれ? いつの間にロケットパンへと変わったんだ?


「直輝くん、お客さんみたいだよ」


「え……? あ、本当だ」


 耳を澄ますと、玄関のチャイムの音が聞こえてくる。

 俺は今だ苦しむ友貴とロケットパンを完食した明良に一声掛け、部屋から出て、玄関へと向かった。




「直輝くん、その、今日さ……一緒に晩御飯食べない?」


 訪問者は、お隣さんの水無瀬さんだった。私服で、抜群のプロポーションを隠すように胸元にフリルが付いた白い服を着ているが、その『隠す』というので、何故か余計にエロく感じる。下は長めで控えめにフリルが付いたピンクのチェックのスカートだ。


「な、なにうえ?」


 声は上擦り、何故か普段使わないような言葉を……。不味い、あからさまに緊張している。これじゃあ女の子に誘われたのをデートと勘違いする馬鹿野郎じゃないか……。


「あ、その深い意味はないんだけど……。えっとね、今日ね、お父さんとお母さんが帰ってくるはずだったんだけど、仕事が行き詰って帰れそうに無いっていうメールが来て……。帰ってくると思ってたから作り過ぎちゃって……」


 そういうことか、と納得するのと同時に正直残念だなと思う気持ちも……。

 水無瀬さんのご両親は仕事で、いつも家を開けている。だから、水無瀬さんは大体家では独りぼっちなのだ。それで、今日はクリスマスというのもあり、帰ってくる予定だったのだが、仕事の都合で伸びてしまい、作った料理は三人分で余ってしまうから一緒にどうか、って事だろう。

 でも……恐らく、友貴と明良は夜まで居るだろうしな……。折角来てくれたのに帰すのも、だけど水無瀬さんの誘いを断るのもな……。


「あっ、無理なら無理って言ってくれていいよ。直輝くんの都合もあるし」


 俺が無言だったので、水無瀬さんはそう優しく言ってくれる。でも顔は本当に残念そうにしてるから逆に俺の心を抉る。

 これは、恐らくわざとでは無いだろうけど結構(こた)えるぞ。


「それならば! 水無瀬もこっちで一緒にワイワイやればOK!」


「……ん?」


 振り返るといつの間にやら友貴が居て、親指を立て、完璧だろう? って顔をしている。

 友貴の存在に気付き、水無瀬さんの顔が更に暗くなる。


「あれ? 藤崎くん。あ、もしかして遊んでる途中だった……。やっぱり無理みたいだね」


 見捨てられた子どものように項垂れる水無瀬さん。うぉぉ……そんな顔をされたら。

 俺は友貴と明良を見捨てる覚悟を決めた。これが、思春期男子のなせる裏切り奥義!

 その裏切りの言葉を紡ごうとしたその刹那、


「だから、水無瀬も一緒にパーティーに参加すればいいんだよ。わかるか、えぇ? このタコ助が! 貴様だけ水無瀬の手料理を味わおうとはいい度胸だ!」


 とドスの利いた声で脅し、更には俺の首根っこを掴んで持ち上げ、壁に押し付ける。


「な、何をそんなに怒ってるんだよ?」


「あぁんっ! てめぇ、男だけのクリスマスなんて寂しいだろうが!」


 結局はそこか。よかったよかった、いつもの友貴だ。それがわかり、俺はすぐに冷静になれた。その首を掴まれた状態で、


「水無瀬さんも一緒にクリスマスパーティーどうかな? そうすれば料理も皆で食べられるし」


 と体勢の割には紳士的に誘う。

 持ち上げられている俺の状態に困惑しながらも水無瀬さんは答える。


「えっ……あ、うん。それはいいけど……邪魔じゃない?」


「邪魔じゃないですよ〜、えーもう是非ともって感じです」


 俺の首を掴んだまま、にこやかなスマイルを浮かべる友貴。ちょっと……苦しくなってきた。早くこの話に決着をつけねば……。


「うんうん、あ、女の子一人で不安だと思うから、誰か誘ってもいいよ」


「わかった……けど、直輝くん、……大丈夫?」


「大丈夫と言えばそうだけど、でも大丈夫じゃないと言うとそうでもあって……」


 そこら辺で意識が掠れてきた……けど心優しい友貴は降ろしてくれた。

 降ろされてやっとこまともに酸素補給が出来、何度か大きく息をし、乱れた呼吸を戻す。


「よくわからないけど……その大丈夫かなぁ? えっとじゃあ、わたし、友達を誘ったらまた来るから」


 そう言って、立ち去っていく。後姿も可愛いじゃないか……ってこれじゃあただの変態のおっさんだな。

 見送る友貴はなんだか幸せそうだ。


「水無瀬と家近かったんだな。へ〜……え、あれ? さっき隣りの家に入っていったような……まさか貴様! お隣さんとでも言うのか!?」


「グホッ!!」


 不意に鳩尾みぞおちを正確に突かれ、多大なダメージを受ける。


「なぜだぁ! 何故貴様だけハッピーライフを送ってやがる!! お隣さんになんであんな可愛い子が居るんだよ!」


 超絶コンボを受け、気を失いかけるも、相手が友貴だと思い出し、反撃し、逆転勝利を収めた。やっぱり友貴だと気兼ね無く殴れる。

 玄関に倒れる友貴の姿は何故か物悲しい雰囲気を醸し出していた。


「直輝よ、水無瀬の事は頼んだ……」


「いや、頼まれても……。というかさ、なんでお互いに知ってたんだ? なんか接点あったっけ?」


「俺が可愛い女の子のチェックを怠ると? 笑止千万! 抜かりは無いわ!!」


「黙れけだものがっ!!」


 俺は下品に笑う最低男に本当の最後の止めを刺し、玄関を去った。

 数分後、ケロリとした何食わぬ顔で戻ってきた友貴に感服する。こいつ……某四コマ漫画の校長先生並みのタフさだ。




 そして、数十分後……俺は水無瀬さんを誘った事を後悔する事になった。水無瀬さん自身には確かに罪は無いのだが、原因ではある。いや、俺の方に事情があるから、結局は俺が一番悪いんだけどね……。


 俺の部屋は広い。だから広さには問題は無い。

 今、室内にはミニテーブルをぐるりと囲む様に七人の人物が居る。


 まずは、俺。そして友貴と明良。

 そして女性陣、水無瀬さんに山下、純岡に荒内さん……。現在最も俺が顔を合わせたくない人たちです。

 もちろん向こうもそのようで、山下は睨んでくるし、荒内さんは隠そうとはしてるけど、俺と目を合わせようとしない。

 さて、情報を整理してみようか。


 純岡:単純に俺の事を嫌っていて、ましてや俺の家など居心地が悪いだろう。


 荒内さん:昨日の事があってお互いに目を合わせ辛いし、どうしていいかわからない。


 山下:こいつは全力で俺をいじってくるに違いない。


 水無瀬さん:上の三人が揃った事で、今まで築いた俺の紳士的印象が打っ壊される。



 俺に対してのみの修羅場が展開した。

 不穏な空気が室内に漂い、その中には殺意やら戸惑いやら歓喜やら……。

 どうしてこうなってしまったんだろう。



 寿命が縮みそうだ。誰か助けてくれ。

 やっときた休日でのパーティーをどうして血生臭い事件が起こりそうな、修羅場へと変貌させる!?

問題は山積みです。作品内でも書いてる著者にも。

もうそろそろで、学校編というか日常編は一区切り付け、水道局編です。多分、どっちかに偏るというより、日常と非日常が交錯するような展開になるかと。(ならなかったらごめんなさい)


説明を入れるのを忘れましたが、『放課後の学び舎』というゲームのタイトルは著者が三秒ほど真剣に考えたネーミングで、実在しません。実在していた場合は、これとは全く別物です。

実はこのゲーム、設定が作られているので、単独で話を書けるのです! 何故か、本編以上に設定を考えてしまったある意味すごい奴です。


次回予告?

集まった七人、全員片想いのこそばゆい恋物語が始ま…………る訳がありませんので、ご了承下さい。

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