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第十八章 ちょっと決心いってくる

3月25日、大幅修正。

 数分待つと、戸高さんの涙は止まり落ち着きを取り戻した。


「大丈夫?」


「う、うん……大丈夫だよ。ごめんね……もう出て行くから」


「いや、別に……というかそんな目が赤くなってちゃ色々と不味いと思うけど?」


 立ち上がり、恐らく……教室に戻るであろう戸高さんを呼び止める。心配なのか? それとも何故泣いているのかを知りたい好奇心で…? 確かに好奇心は混ざってる、100%の心配じゃない。

 最低だな俺……となんだかブルー気分になる。


「で……でも、ここに居ちゃ邪魔でしょ……?」


 昼寝には邪魔……いやいや、ここを出るべきは俺だ。それに、もう眠気なんてこなそうだ。


「むしろ俺が邪魔なやつだから。俺が場所を変えるよ。だからこの体育倉庫はご自由にどうぞ」


 僅かに開いた入口を目指し、足を進める。入口の隙間に手を掛けたところで、今度は戸高さんに呼び止められた。


「待って……あの、えっ……と……や、やっぱりいい。ごめんね……」


 どうも歯切れが悪い。なんか、このままここを去ったらダメな気がする。でも、ここに残って何をするんだ? 話を聞いてやるのか?

 逡巡…というより葛藤が俺の心を揺るがす。

 何かをするべきなのはわかる、でも何をすればいい? 問題はそこなんだ。

 今ここで、俺にも出来る事………………それは…………それは、


「戸高さん、邪魔じゃなければ俺も一緒にここに居ていいかな?」


 おいおいおい……やっぱダメだな、考えた結果がこれかよ……。俺はやっぱダメダメだ。

 不安を抱き、後ろを振り返った俺を迎えたのは、弱々しい笑みを浮かべる戸高さんだった。


「あたしが後から来たんだから……そんな選択権なんてないよ……」


「んじゃあ遠慮無く」


 許可がおりると、なんだか正しい選択をとった気がして安心できる。

 俺は戸高さんから少し離れた位置に腰を下ろした。


「戸高さん、別に話したくないならいいけどさ、なんで泣いてたの?」


「んっ…………日下部くんはあたしが……いじめられてるって知ってた……?」


「え……?」


 いじめ? 俺のクラスで? 戸高さんが? だって、一人が好きで一人で居たんじゃなくて?


「もしかして、いつも一人で居るのって……しょうがなく、なの?」


 返事は無かった。でも、薄暗い闇の中、戸高さんがこくんと頷くのが見えた。


「日下部くんとは、六年になって初めてクラス、一緒になったよね。だから……知らなくても普通だよ」


 そうか。どこかクラスの奴らの戸高さんに対する態度が不自然だと思えたのは、いじめだったのか。それに、いつも一人で居たのは……これは俺の推測だけど、クラス全員でいじめているとは思わない、現に俺はいじめの事実をしらなかった。つまり、戸高さんは誰も信用できなかったんじゃないか?

 なんだろう……。物凄く悔しいのは……助けられなかったから? いや、クラスを理解できていなかったから?

 一人で勝手に苦悩する俺を見て、戸高さんが自分が受けてきたいじめについて語ってくれた。


「四年生ぐらいから、かな……」


 そう切り出した戸高さんの学校生活は俺を震え上がらせるものだった。


「クラスの人が、あたしに、でこが広いとかブスとか言い出した…。最初は三人ぐらいだったのが……その内、五人に……六人に……十人に…………三学期に入る頃にはクラスのほとんどの人があたしに悪口を言った。ある日、先生が気付いてくれて……クラスで話し合いをした。これで解放される……そう思った……。

 でもね……本当に辛いのはその後からだった……」


 そう語る戸高さんの声は震えている。まるで、その時の恐怖を思い出すように……。


「五年になってもいじめは続いた……。先生達にばれないように、陰湿に……。物を隠したり、仕事を押し付けたり……。見た目の事も文句を言われた。だから、前髪を長くしておでこを隠したの……でも、そんなの意味が無かった。更に馬鹿にされるだけだった……」


 体まで小刻みに震えだしていた。喋るのはつっかえつっかえになっている。


「誰も……助けて、くれなかったっ……。先生達に言うのも……恐かったっ。後で何をされるかわからなかったから……。お父さんとお母さんにも……言えないっ。いじめ……られて……るなんて恥ずかしくって……言えないっ」


 遂に泣き出してしまった。戸高さんの泣く声は静かに、空間に浸透していくようにとけていく。大粒の涙を流す割に静かなのは、泣いてやるものか、という強い意志の様なものを感じる。

 そのいじめは現在も続いているのだ。俺が知らない所で、いや……俺はなんとなくわかっていて目を逸らしていたんじゃないか?


「ごめんねっ……こんな話、して。ごめんね……」


「俺から話してくれって言ったんだよ。謝らなくていい。むしろ、俺がごめんだよ」


「んーん……日下部くんは何もしてないよっ……。だから謝る必要なんて……」


「だからだよ。俺は、何もしてあげられてない。最低だよ……」


 何故気付けなかった? 本人が一度でも、一人が楽しいって言ったか? 遊びに誘えばよかったじゃないか!

 くそくそくそっ!! 俺は馬鹿か!?


「なんで……そんなに悔しがってるの? なんで最低なの?」


 泣き顔に少し驚きの色が足され、困惑へと転じる。


「俺は最低だよ……勝手に戸高さんが一人で居るのが好きなのかと勘違いして……。いじめをしている奴らと同罪だ……。ごめん……ごめん、何もしてあげられなくて」


「なんで謝るの? 日下部くんは何も悪くないよ? 悪いのはあたしだけだよ……暗いし、ブスだし……。あたしがこんな話をするから、ごめんね……」


「違う、俺が悪いんだ……ごめん……ごめん!」


「だから……あたしが……罪を感じるような言い方をしたから……ごめんね……ごめんね」


 体育倉庫の中で、それしか言えないかのようにお互いに謝り続けた。会話ではなく、呼び掛けの様な繰り返し。

 そして、気付くと笑い合ってた。

 なんでここに来たのかとか、そんな下らない事は頭の端に追いやり、俺は戸高さんとの時間を満喫した。


 その後は、二人とも教室には戻らず、体育倉庫で語り合った。

 色んな事を話した。授業の事とか、趣味とか、家族の事とか……。

 ずっと話し続けた。今思うと、戸高さんはずっと誰かとのコミュニケーションを求めていたのではないのだろうか? いじめを受けて、独りぼっちで……話し相手なんて居ない。だから、こんなに必死に楽しそうに語り笑っているんじゃないか?


 そんな孤独な生活を二年以上続けていたのか?


 戸高さんは、本当の意味で強く優しい人なのだろう。だからこそ、耐えることができた、暴走することもなかった。

 でもきっと――――――――――


 俺と戸高さんは、お昼頃になって気温が上がり、体育倉庫の中も完全に蒸し風呂状態になったので、外に出ることにした。

 教室にはどうしても戻る気にはなれなかったので、二人で村をブラブラとすることにした。

 お昼になったのもあり、流石に腹が減ったので駄菓子屋に入ってそこでお昼の代わりのお菓子を買った。

 駄菓子屋の主人から、学校はどうした? と怪しげな視線を頂戴したが、特に何も聞かれなかったのでスルーする。


 腹ごしらえをした後は、もう何年も過ごし住み慣れた村内を散策した。

 見慣れたはずの村は戸高さんと一緒に居るだけで、まるで別物で……格別に感じる。

 夕暮れ時、二人で学校の裏山へと登り見晴らしのいい所で、村を見下ろした。


「綺麗だねぇ…………」


 村を見下ろす戸高さんの横顔を夕焼けが照らし、輝かせる。


「うん……綺麗だね」


 俺は何を綺麗と言ったのだろう? 戸高さんかこの絶景にか?

 風に吹き、戸高さんの前髪を吹き上げる、そこから覗かせた微笑みは本当に綺麗だと思った。そして、何故前髪で顔を隠すのか疑問に思えた。でこが広いといじめられたらしいが、別に問題ないと思うし、むしろ可愛いじゃないか……って俺は何を考えている。

 誰かが苦しむのを放っておけない性格なのは自覚しているが、どうしてここまで俺は戸高さんに肩入れするのだろう?


 今まで気付けなかった罪悪感からか? 日常に余裕がある自分が苦しむ人を助けなくてはいけないという使命感か? それとも、俺個人のなんらかの感情?


「考えるのはそう……。きっと、その内わかることだ…………」




 その日、家に帰ると親や先生、警察、村長……色々な人に怒られた。なんだか、誘拐事件だーと騒いでいたらしい。まぁ流石に素直に怒られてあげたけど……。

 それまで村総出で探していたという。ご苦労様です、と頭が下がるが、発見されず戸高さんとの時間を邪魔されないでよかったと思う。


 そして次の日、俺は戸高さんと居る時間が大幅に増えた。

 近くにいるとすぐにいじめの存在に気付く事が出来た。どこか余所余所しかったり、言動がきつかったりする人もいた。

 いつしか、俺もクラスから孤立していった。別にそこまで気にしてないけど。俺は戸高さんを守れればそれでいいや、と思えたから。



 戸高さんは俺なんかよりも、遥かに強い。

 でもきっと、一人ではいつか壊れてしまうだろうから……俺が、守る!!

これで、夢の話は終わりです。

「嘘吐き」と言われた時の話はまたこんど〜。はい、もったいぶってます。

次は、少し水道局でのお話が入って、その後はしばらくは学校がメインになるかと……たぶん。

なので、水害獣の存在はまた先に……いや、早く出してやりたいんですがね。

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