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第十六章 ちょっと覚醒いってくる

3月25日、大幅修正。

 宙に浮く俺の体はゆっくり地面を目指す。

 俺が死ねば……その後、アズハが殺されるかもしれない。こんな事態になったは確かにアズハが俺を巻き込んだからだ……。しかし……誰かが死んでいい気分などしない。俺はそこまで歪んじゃあいないし、アズハを嫌ってもいない。


 助けたい……!!

 でもどうやって? 俺が本気を出せば確かにそこら辺のチンピラなら余裕で片付く。だが、奴は人外だ。まぁ今は俺の姿を形作っているけど、意味の分からん能力をもっていやがる。

 俺は、俺はっ……。


『あ、あの……ありがとう……ね』


 戸高さん……。


『助けてもらって……悪いんだけど……さ。やっぱり暴力は……あのダメかな、って思うから。一緒に謝ろう?』


 なんで戸高さんを苛めてた奴に一緒に謝るんだよ。普通は殴った俺だけだろう?

 あの時、そう思った。でも、成長してわかったよ。


『ずっと……守ってくれるのっ? ずっとって……いつまでかな?』


 約束か……。ずっと……ずっと……って本当に俺は無責任な事を言ったもんだ。


『あははっ、直輝くんは本当に面白いね』


 懐かしい……戸高さんの笑顔だ。

 本当に意地張って名字にさん付けで……俺ってやっぱシャイボーイかな。


『嘘吐き』


 俺が裏切った。ずっと、という約束は一年も経たずに破られた。

 守ってやれなかった。

 嘘吐きって本当だね……俺は本当に馬鹿だね……。


 次の瞬間、俺の体は地面に強く叩きつけられた。衝撃で息が止まる。苦しいし痛いしで最悪だ。だが、なんだか気分がスッキリした。別にマゾって訳じゃないぞ、念の為。


「守りたかった……」


 仰向けに地面に寝転ぶ自分の体を捻り、うつ伏せの状態で腕立てをするようにして上半身を起こす。


「守りたかったんだ……」


 足を引き寄せ、四つん這いの体勢にし、ガクガクと震える足を踏ん張る。


「ずっと……ずっと……」


 思うように力が入らずバランスを崩しながらも、俺はフラフラと少しでも押されれば倒れてしまうような、よろよろでヘロヘロの体を……立ち上げる。


「傍にいて、守りたかった」


 子どもの絵空事だったのかもしれない。でも、それでも、あの時の俺にとってはすべてだった。


「ほう、まだ立つ力がありおるか」


 奴が感心したように呟く。あの状態で立ち上がった俺に素直に驚いているようだ。俺自身、戸高さんの事がよぎらなかったら再び、こいつと対峙するなど無理だった。諦め、あのまま倒れたままだっただろう。

 だけど、今は逆になんだか力がみなぎってくる。もうぼろぼろで本来の力など出せないし、出したところでたかが知れているというのに、俺は負ける気がしなかった。


 戸高さんは……きっともう守って上げられない。いや、たとえ再会したとしても拒否するだろう。俺は裏切り者だから。

 アズハはまだ手が届く場所に居る。守れるんだ。

 奴との勝負は一対一の真剣勝負なので、アズハに手助けは出来ない。それに俺からも危なくなっても手を出さないように頼んである。


 ここで勝たなきゃどっちにしろ死ぬんだから……。


「俺は……最後まで戦う」


 奴を霞む視界の中、捉える。

 逃げるなんていう選択なんてねぇ、もちろん土下座も無しだ。

 死ぬまで戦ってやる。なんかもうやくを決めたみたいに最高にハイってやつだぜ!!


 悠然とたたずむ奴はこちらに攻撃を仕掛ける様子は無い。好都合だ。なんとか食らい付いてやる。

 目算で奴との距離を測る。大体、5メートルぐらいかな。


「こっちは命を賭けた戦いなんでね……」


 いきなり異世界に連れて行かれたり、獣に襲われるし、水道局の真実(?)を知っちまうし、死亡フラグの連続だし……。

 もう意味わかんねぇよっ!!

 そんなに俺に死んで欲しいのか!? って感じだ。


 わかんねぇな、何もわかんねぇ……俺がなんでこんな所に居るのかもわかんねぇ……。

 でも……とりあえず、今言えることはな……もしかしたら俺の所為で死んじまうかもしれない女が居るって事と、俺が死にたくないって事だ!!

 だから、負けられねぇ!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおっっ!!」


 全身全霊の一撃をかましてやるぜ!

 まだ反撃や防御の構えを取らない奴から一瞬たりとも目を離さない。

 きっと誰かを守りたいとか綺麗な感情じゃ無いかも知れない、ただの自分の生への足掻きの様な……本当に本能の選択とも言えるある意味では純粋な答え…。

 軽蔑してくれても構わない。

 俺は、生きたいんだっ!!



 ――その時、時間の流れが遅くなったような気がした…………。



 一歩踏み出しただけの俺の体はすでに奴の前まで来ていて、振り被った俺の右腕の拳は真っ直ぐに突き出すだけで奴の顔面に抉り込むベストポジション。

 一秒を細かく切り刻んだような時間の流れの中、俺は唖然とする。

 奴の顔は驚愕の色に染まっていた。


 不思議な現象を真剣に考えると泥沼的思考になるのはわかっている。

 なら、俺の取るべき行動は必然的に決まってくるものだ……。

 奴の顔面を打ん殴る、ただ、それだけ。


 振り上げられた腕はゆっくりとだが、確実に奴を目掛けて進んでいく。

 遂に到達し、驚愕の表情を歪ませる。

 体を捻りバランスを崩す奴の体、俺は殴った腕を振り抜き、もう一度構えなおそうとする……が、急に全身から力が抜け、奴より先に地面に倒れた。


 何が起こった…………?


 俺の体はどうなったんだ……?


 何故ピクリとも動かない……?


 動けよ! もう一発叩き込めばこちらに流れが来るんだぞ!?



 再び、視界が霞み出した。仰向けになった俺の体は曇天を全身で浴び、干乾びた魚の様に力が出なかった。

 俺の定まらない視線が立ち上がった影を捉える。

 立ち上がった奴が俺の顔を覗き込んで来ていた。もう金髪の俺の姿をしていない、元の金色に包まれた気品のある獣姿だ。


「お主……気に入ったぞ、契約だ……」


「契約……?」


 まどろむ視界とボンヤリとした頭、まるで頭が働かない。その言葉が意味するところがまるで理解できない。


「契約の話はまた今度としよう……。それより、ボロボロの体で……慣れない事をするとそうなる。しかし、死ぬ訳ではない安心しろ」


「全然……意味わかんねぇよ……」


 意地の様なものでこの状態だというのに、悪態をついてみせる。

 俺の態度にも奴は一切気にする様子を見せず、離れていく。奴が歩いていく先にはアズハの姿があった。

 何をする気だ!? まさか…………。

 動けっ! 動けよ、何で動かない!!


 どんなにジタバタとしようとしても足も腕も動かない。

 あ、ああああ……視界が段々と暗くなっていく…………やめろっ! まだ、俺はやらなくちゃいけないことが……!!

 失われていく光を必死で集め、意識を保とうとするが……やがて俺は深い闇へと堕ちていった。


 …………


 ………………


 ……………………



 俺の巻き込まれ人生にここにきわまる。

 だが、世界はこの程度の巻き込みをいとわず、俺の人生をどこまでも狂わすのだった…………。

さて、ここらで一区切りです。ん〜表現はわかりませんが、自分的には序章が終わった感じ?

え……この作品、そんなに長いの? とかいう突っ込みは禁止。

まぁ水害獣が出てきてないですしね。


そういえば、主人公は直輝です。すいません…格好付けたかっただけなんです…。(前回のあとがきの事)

えっと……読んでくださってる方、今後ともよろしくお願いします。

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