12話 貧乏な二人組の旅2
しかし、僕達は下水道に入るところで躓いた。この街は造られてからかなり経っているので下水道への入り口が崩落で塞がってしまっているのだ。そのため、下水道が流れ込む街の外の川から入る必要がある。
というわけで僕達は街の城壁の西側に行くことにした。途中に石がごろごろ落ちていたので拾っておいた。最悪投げられる。旧石器時代に逆戻りしたかのような考えだが、案外投石はのちの時代でも使われている。
その程度の困難で終わればよかったのだが、少なくとも10匹のゴブリンを発見してしまった。ゴブリンというのは猿が魔獣化したまま繁殖した結果生まれた生物で魔獣と区別して魔物と呼ばれる。魔物は種類が少なく確認されている種は10種程度だ。
しかし魔物というのは常に魔力が必要なため多くはいない、ゴブリンを除いて。ゴブリンは必要な魔力が少ない上、とんでもない繁殖力を持つ。
恐らく今見えているのは10匹だが、100匹はいるだろう。ゴキブリと同じ原理だ。とりあえず………戻るか。
「よし、戻ってギルドに報告しよう。すぐさま討伐隊を呼ばないと」
「そうですね、まずはさっさとネズミを退治しちゃいましょうか」
「それじゃあ、行くぞ、急げ」
「はい!」
そして僕は街の方、レイさんゴブリンの方それぞれ別の方向へと駆け出していった。そして振り返り同時に言った。
『そっちじゃないでしょうが』
レイさんはさも当たり前かのように言っていたが、ゴブリンは単体ではそこまで強くはないものの知能が高く群れになると飛躍的に強くなる。それに汚いし、見た目がキモい。
そんなところに2人で乗り込むのは無謀だ。せめて5人は必要だろう。
「さすがに2人じゃ無理。早くギルド行って報告だよ」
……
「レイさん聞いてる?おーい」
と言うとレイさんは振り返った。青ざめたような顔をしながら。
「さっきの『そっちじゃないでしょ』でゴブリン私達に気づいちゃったみたいなんだけど」
あーーーー。やってしまった。前もハクビシンに追いかけられたし、なんでこうも僕達の旅は上手くいかないだろうか。そう思いながら僕は叫んだ。
「逃げろー」
僕は街の方を振り向き、走り出した。しかし、
「前、前!」
レイさんの声が聞こえた。
前を見るとなぜかゴブリンの群れが僕達を囲むように並んでいた。素早く辺りを見渡すと、穴が5個ぐらいポツポツとあった。どうやら石で巣穴を隠していたらしい。
「戦うしかない?」
レイさんが叫ぶ。
「逃げられないだろ」
僕はそう言ってレイさんのところに走っていった。既に周りのゴブリンは40匹まで増えている。かなりまずい状況だ。
早速レイさんの後ろからゴブリンが飛びかかってきた。魔力を頭の辺りにねじ込んでナイフをテレポートさせる。ゴブリンは空中で痙攣しながら死んだ。
しかし、ナイフを打ち込めるのは多くても30発。実際打ち込めるのは20発ぐらいだろう。圧倒的に足りない。
「レイさん、街の方のゴブリンを重点的に倒して」
「了解」
レイさんはすぐに魔法を打ち込み始めた。レイさんの魔法はゴブリンを即死させられはしないが、手数が多いからゴブリンの動きを次々と止めていく。なんとか街の方に逃げられそうな穴が空いてきた。
「よし、5秒後に突っ込もう」
「了解」
レイさんが応えるのを聞いてから僕は叫び始めた。
「5、4、3、2……」
「後ろ!」
レイさんの声と同時に背中に強い痛みがはしった。僕が振り返ると同時にゴブリンが飛びかかってきたのだ。傷は深くはないようだが、痛みのせいか集中できずテレポートも発動しない。日本という温室育ちの僕には痛すぎる。その上、
「レイさん!右!」
レイさんまでもが飛びかかられてしまった。レイさんは倒れ込みながらもなんとか抵抗している。
僕もせめての抵抗をしようと、ポケットから石を投げる。その石は見当違いの方向へ飛んでいってしまう。さらに石を取り出そうとした。
その時、頭にまた強い衝撃がはしった。持っていた棒で殴られたのだろうか。
レイさんの声とゴブリンの声がぐわんぐわん頭に響く。目は開いているはずなのに視界が暗くなる。
自分が倒れる衝撃だけはしっかりと伝わって来た。




