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異世界の盗賊。  作者: 佐藤 崇 satou takasi
ダズデラ王国と記憶の種
11/12

11話 貧乏な二人組の旅

 ドミノンに着いた後、僕達は有り金全てを叩いてダズデラン行きの馬車の切符を買った。夜に走り、昼は各街に止まるという旅行者用の馬車で観光地を経由しながら行く。

 昼間は観光地に止まるので少しは金を稼げるのではないかと思ったのだ。だからダズデランに着く時には結果的に節約ができているだろう。まあ、時間は掛かるだろうが。

 しかし、そのおかげで

「有り金を使い果たしたレイさん」

「どうしたの?有り金を使い果たしたショウマ君」

 先程から僕たちの間では「有り金を使い果たした」というフレーズを名前の前に入れるのが大流行している。

「僕達、お金を稼がないとなんと今日のお昼ご飯すら食べれないけど」

「そりゃ大変だね」

「うん、という訳で早速日雇いのバイトを探しにでも行こうか」

「ハンター?」

 レイさんが期待に満ちた目で僕を見る。しかし、僕は笑顔で言う。

「土木工事」

「え、、、」

 レイさんがさも意外そうな顔をする。

 国境を無断で超えた奴の言えることじゃないが、無駄に命をかけたくはないのだ。ハンターのような死亡率がダントツで高い職業なんてもってのほかだ。

「ハンターの方が絶対手取り早いって」

「嫌です。無駄に命を賭けたくありません、はい」

 僕の断固とした姿勢を見たレイさんは、それに感動したようだった。呆れているのと区別がつきにくいが、これは感動だろう。

「はいはい、分かりました。とりあえずドミノンの真ん中に行こうか」

「そうしましょう、そうしましょう」

 そうして僕達はこの街の中心地へと歩いていった。


 ドミノンは(というかダズデラ王国の街は)祝日になると、ダズデラの国旗をよく見かける。それは中心に行くほどに顕著になり、役所の前の通りは道の両側で国旗がはためいていた。

「綺麗だね。ダズデラ王国の国旗は」

 レイさんが大通りに面した家々に飾られた国旗を見ながら言う。ダズデラ王国の国旗は右上が赤色、左下が黄色となっていて右上の方に黄色の菱形が描かれている。

 ドミノンの中心地に着くと、そこには周りの建物とは一線を画した建物が建っていた。

「おおー」

 レイさんは目をキラキラさせて、その建物を見ていた。父母を探す旅で旅をしてきたレイさんですらこの反応である。日本の建物に例えるならば東京ドーム。実際はその四分の一サイズだがそれでも衝撃的である。

「入口はあっちかな?」

 レイさんの言葉に周りを見ると確かに入口がない。

「そうじゃないか?ここにはないし」

 僕達が建物の反対側に行ってみると、予想通り入口があった。入口にドアはなく、誰もが簡単に出入りできるようになっていた。

 つまり、ここから中の様子が見えるのだ。そこはマミルスのセントラストとは比べものにならないほどに治安が悪そうに見えた。

 少なくともで五つのグループが昼間から酔っ払って騒いでいる。ダズデラとアーデミナルは話す言語は同じなので酔っ払い達の話していることもわかる。端的に言って危ない話ばかりだ。

 喧嘩しただの、それで死にかけただの。ハンターは魔獣を討伐するのが仕事なので、人を殺すこともできてしまうだろう。

「覚悟はいい?」

「うん」

 レイさんの答えを聞いてから僕は街の中心地の建物に入るにしては、あり得ないほどの覚悟をして入った。

 中は見た目通り酒臭かった。しかし、外から見えていたのは酒場だったようで役所としての機能を果たしている場所には酔っ払いはいなかった。

 おそらくその原因となっているのは、カウンターに立っている怖そうな中年の男のせいだろう。普通の人は睨まれただけで逃げ出しそうだ。

 そんな人がいる中で騒げるなんて、この街の酔っ払い達は只者ではなさそうだ。気をつけよう。

「ねえちょっと。俺達と一緒に呑まないか?」

 僕達に話しかけた男は五人グループで酒を飲んでいた内の一人だった。目つきが悪くヤクザみたいな人だった。同じような雰囲気をだす他の四人もこっちを見ている。

 しかし、僕はこの人達と関わる気は全くないし第一未成年だ。その上有り金を使い果たした僕とレイさんでは酒代を払えない。

「すいません、僕達いまお金持ってないんです。なので、すいません」

 男は少し憐むような顔をした後

「そうかい。まあ、大変だろうけど頑張んな」

 と言って僕の手をとり、アーデミナルでは50ミストほどの価値のある500ドズ銀貨を握らせた。思ったよりいい人だったようだ。人は見た目で判断するなとはまさにこのことである。

 僕達はお礼を言って、カウンターに向かった。

 僕はカウンターの男を勇気を出して話しかけた。

「すいません、ここで土木工事は出来ますか?日雇いでお願いしたいんですが」

 カウンターの男は何も言わずに奥へ行ってしまった。確認しに行ったのだろう。それを見ているとレイさんが小声で

「ちょっと、ショウマ君。土木工事じゃなくてハンターの仕事を聞くんでしょ」

 と言ってきた。それを聞いた僕は勝ち誇ったようにドヤ顔をして

「早い者勝ちという名言がある」

 と言った。レイさんが恨めしいという顔で僕を見るが、僕はそんなものには屈しないのだ。

「悪いが土木工事で日雇いは今日ないな」

 カウンターから低い声が聞こえて、そちらを向くと、男が戻ってきていた。

「今日稼ぎたいなら、ハンターの仕事をやるしかないな。あっちの掲示板に依頼が書かれた紙が貼ってあるから選びな。受けたい依頼があればその紙に書いてある番号をこちらに伝えてくれ」

 男の言葉にレイさんは勝ち誇ったようにこちらを見てきた。そして、ドヤ顔で言った。

「それじゃ、依頼を選びましょう」

 その言葉に僕はただ項垂れて

「そうしよう」

 と言うしかなかった。


 掲示板には思ったほど依頼の紙は貼られていなかった。ペット探しが1件手紙を届ける依頼が2件、他は魔獣の討伐依頼だ。

 手紙を届けるのは安全そうだが、報酬も少ないし料金は着払いとなっている。その上届けるのは馬車の止まらない街だった。やる意味が全くない。

「ショウマ君、これ。これいいじゃん。難易度は高めだけど、その分報酬が結構いいんじゃない?」

 レイさんが指差していたのはこの辺に最近現れた猪の魔獣の討伐依頼だった。一般的に魔獣になるとその動物の危険度は1.5〜2倍になると言われている。

 猪は魔獣になっていなくても危険な動物だ。そんなものが魔獣になれば危険度は高くなって当然だ。

「この前のハクビシンでも危険度はこいつの半分だよ?あれにも苦労したのにそれの二倍も危険な奴とは戦いたくない」

 僕がハクビシンの討伐依頼を指差しながら言うと、レイさんは少し顔を引きつらせた。そして掲示板をもう一度見て、

「あれなら大丈夫でしょ」

 今回はレイさんも危険度のことを考慮したのかハクビシンの半分ほどの危険度となっていた。報酬もその分安いが、それでも45000ドズ。450ミストだからまあ妥当なところだろう。依頼の場所も街中となっている。僕達にはベストな依頼だ。番号を確認した僕達は、もう一度カウンターへ向かった。

 カウンターにはさっきと同じ人がいた。

「15番でお願いします」

 僕が言うと、男は手続きをして最後に

「ドブネズミは臭いから気を付けろよ」

 と言った。まあ、僕のテレポートで一発で仕留められるだろうから臭いがついたりはしないだろうが、一応気を付けて行こう。油断大敵だ。

「分かりました。気を付けます」

 僕たちはそう言って建物から出た。場所は街の中心部から少し離れたところにある下水道らしい。それも街の隅々から集められた下水が流れ込んでくるので僕達が問題なく立てるぐらいには広いようだ。だからテレポートもあるし簡単だと思っていた。

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