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海と金木犀

作者: みずぶくれ

なんだかさいきんなんだかなあ。

こんな時は海に行こう。


そうして海に着くと、海辺に全身ずぶ濡れの女が立っていた。

今は4月なのに寒くないのだろうか。


私は驚いて、けれどこの時期にこれだけずぶ濡れの女と関わり合いになりたくないなと思い、なるべく目が合わないように気を配りながら女の姿が目に入らないような位置の、手近なベンチに腰掛けた。


私は海辺で海の香りを感じたかったのに、とんだ邪魔が入ったなあと思った。


すると視界の端からあの女が映った。

私の目の前を通り過ぎようとしてるのだ。

なんでわざわざ。


困惑している私の鼻先を香木の香りがくすぐった。

これは金木犀の香りだ。

通り過ぎる女から漂ってくる。

思わずむせそうなくらいだ。


さっきは気づかなかったが、女は手に金木犀の枝を握っていた。

それは今朝咲いたばかりのように瑞々しく、小さな花をたっぷりと咲かせて秋の香りを振りまいていた。


香りに気づいてから女をじっと見つめた。

横顔がいつのまにか背中になって小さくなるまで見つめていた。

女がようやっと見えなくなってからふと気がついた。


あれだけずぶ濡れだったのに、海の香りはひとつもしなかったな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 季節がごちゃまぜになっていて面白かったです。噛み合わない不思議さが魅力的な作品でした。
2019/03/12 15:29 退会済み
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