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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第八章 王者・無双編

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740/752

740 見目麗しき双美姫

挿絵(By みてみん)


「さあAブロック一回戦第二試合! 試合場にはすでにホブゴブチームが登場しているゾッ」

「ウッホ! ウッホォーッ」

「ブルゥオオオオォォォ」


 奇怪な雄叫びを上げる三匹のホブゴブリン。

 彼らはそろって頑健な肉体を惜しげもなく披露している。

 見たところ武器の類は何ひとつ見えない。

 腰回りにまとった派手な色の布切れと、腕や足に装飾性の高い防具を身に着けた以外は特に目を引くものはない。

 褐色の肌は毛深く、硬い剛毛に覆われたその肉体もまた鋼のように固く引き締まっていた。


「このホブゴブチームはホブゴブ流格闘術の使い手ダ。今回、東の未開地より参戦とのこと! そして対戦相手は今大会随一の可憐なチーム!」


 歓声を浴びて登場したのは白い鎧をまとった老騎士と、左右に並んだ同じく白い鎧姿の双子の姫騎士であった。


「白騎士ロビン・グッド老と可憐な双美姫アリス嬢とクリス嬢!」


 捲き起こる歓声は下衆な雰囲気も併せ持ち、第一試合とはまた違った期待と興奮が押し寄せていた。


「さてホブゴブチームはこの大陸共通の東方語を話せないと自己申告があったため、現在試合場中央では通訳を介してバトルルールの取り決めを行っておりまス! なお事前の話ではホブゴブチームはポイント制の個人戦を要望するとのこと! おっと今話し合いがついたようダ! どうやらホブゴブチームの要望が聞き入れられた模様」


 両チームがいったん風神門、雷神門にまで下がる。


「試合は二ポイント先取したチームの勝利となる様子! 大丈夫なのかホワイトナイトチーム! あの可憐な双美姫がひとりで屈強なホブゴブリンに立ち向かえるのかァ」


「あの方たちとお知り合いなのですか、ウシツノ様は?」


 試合を風神門裏で観戦することにしたウシツノたちは、三人の白騎士たちとした最前のやり取りについて話していた。


「いや、覚えがないんだ。ところでホブゴブ流格闘術ってどういうモノなんだ?」

「ごめんなさい、わたくしもわかりません」

「アナトリアは?」

「ずいぶん昔に手合わせしたことがある。基本的には身体全部を使った打撃、関節、投げを総合した何でもありだった。ただし型や技といったモノは対して記憶にも残らん。もっとずっと野蛮で単純な暴力に近かった」

「あの体格差でもやれるのかな」

「と言っても娘の方は武器を使うだろうからな。ほら」


 ひとり目として中央に立ったのはアリスと呼ばれた方の娘だった。

 薄い刃をした実に見事な剣を引っ提げている。

 対するホブゴブリンはホブメンという名で、予想の通り武器の類は何ひとつ持たずに出てきた。


 試合が始まるとホブメンはアリスをおちょくるように動き出した。

 笑いながらノーガードで顔を突き出したり、殴りかかると見せかけて拳を引っ込める見え見えのフェイントを入れたりする。

 だがそのたびにアリスは咄嗟に目を閉じたり身を固くする。

 どうにも戦いそのものに慣れていない様子が素人目にもよくわかり、もはや観客の興味はこの可憐な少女が野蛮なホブゴブリンにどんな残酷な目に遭うのだろうかと、背徳的な楽しみへと移行していた。

 アリスはいっぱしに剣を振るってみるものの、ホブメンは笑いながらひらひらとかわし、そのぶんだけ相手をおちょくる回数が増えていった。


「どうにも本当に戦闘経験がないお嬢様らしいぞ」

「ええ。なのにどうして個人戦なんてルールを受けたのでしょう」


 ウシツノとダーナは見るに堪えないこの戦いに、心の置き場を見失ってしまった。

 どう見てもあの少女に勝ち目はなさそうだ。

 それなのに味方の老騎士も、もうひとりの姫騎士もまったく動く気配がない。


「やぁーッ!」


 可愛らしい掛け声とともに振るったアリスの剣が、初めてホブメンのガードを上げたその腕に当たった。

 しかしその剣は、カァンッ! という軽い金属音を響かせただけで、ホブメンの金属製の腕甲(ガントレット)にむなしく弾かれた。


「ウホホッ」


 ホブメンがニヤニヤと笑う。

 それでもアリスは躍起になって何度も何度も防御するホブメンのガントレットに向けて剣を打ちつけた。

 客席からもついに失笑が漏れだす。

 対戦相手のホブメンも同様だった。


「たァーッ!」


 それでもアリスは剣を振るった。

 同じことが繰り返されると誰もが思った。



 ズバッ!



「ギッ?」


 ホブメンの腕が斬られて宙を飛んだ。

 アリスの剣がすっぱりとホブメンのガードしていたその腕を斬り飛ばしていた。

 さらに腕だけでなく、ホブメンの上半身も同時に斬り離していた。

 左肩から右わき腹にかけて斜めにスジが走ったかと思うと、断面を滑り落ちるようにホブメンの肉体は両断されていた。

 物言わぬホブゴブリンの上半身だけが地面に落ちて沈黙した。


「キャーッ! やったやったァ! 斬れましたァ」


 斬ったアリス本人は無邪気に小躍りしているが、会場にいた者ほぼ全員が事態を飲み込めずに呆然としていた。


「ウム。まずは我らの一勝じゃな」

「はっ! ホ、ホワイトナイトチーム予想外のまずは一勝ォッ!」


 老騎士の言葉で我に返ったピースウイングの、決着を告げるアナウンスが場内に響き渡ったが、依然どよめきは残っていた。


「さてと、次はわたくしの番ですわね」

「がんばれぇクリス」

「ええ。ありがとうアリス。では行ってまいります」

「ウム。がんばるのじゃぞ」


 どよめきが残る中、中央に双美姫の片割れクリスが立つと、ホブゴブチームの二人目ホブスラストが躍り出た。

 明らかに目は警戒の色を強くしていた。


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