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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第八章 王者・無双編

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736 Aブロック一回戦第一試合

挿絵(By みてみん)


 どいつも凶悪なツラをしているな。

 アナトリアは相手を見てそう思った。


 Aブロック第一試合を戦う六人の戦士が三人ずつ、向かい合って立っていた。

 片一方はカエル族のウシツノとニンゲンの女剣闘士ダーナ、そして黒豹アナトリアだ。

 対面に立つのは三人ともに豹頭族パンテラの戦士。

 アナトリアとは違い三人とも薄い毛色に黒の斑点のあるボディだった。

 そろって使い込まれた武具を着込み、筋肉のいたるところに古傷を帯びている。

 たたずまいを見るにとても野蛮な雰囲気があり、それに相当な戦慣れであることも確かなようだ。


「クク、まさかこんなに早く黒豹と戦うことになろうとはな」


 おそらく三人のうちでリーダー格であろう、右目に黒の眼帯を締めたパンテラが口を開いた。


「戦場に出ず、このような箱庭でチャンピオンを気取っている面汚しがいると聞いてはいた。が、まさか黒豹だったとは。ククク、納得だ」

「どういう意味だ?」


 真意を測りかねてウシツノは尋ねてみたが、眼帯の戦士はウシツノを無視した。


「さて、お互いが納得すれば戦い方は好きに決めていいルールだそうだ。どうだ? 六人入り乱れて戦うのもいいが、一対一の勝ち抜き戦で最後まで残った方が勝ちということで」


 眼帯の申し出にウシツノは振り返るとアナトリアもダーナも異存はなさそうだった。


「それでいいぞ」

「おおっと! 本当にいいのか?

「ん?」


 すんなり受け入れられたことに眼帯は大げさに驚いて見せた。


「大前提として、ルールでは代表者が死んだ場合、そのチームは即失格になるそうだが」

「そうだな」


 平然と応えるウシツノにパンテラのリーダーである眼帯の眉間に深いしわが寄った。


「代表者はお前だろう? わかっているのか? タイマンでは黒豹に庇ってもらうこともできないのだぞ」

「…………」

「まさか自分の番が回る前に黒豹が我らを倒してくれるとでも期待しているのではあるまいな? 言っておくが我らはひとりひとりが最強の傭兵だ。去年までは北方のアイスノー戦線でフェルディナン帝国の撃滅作戦において……」

「わかったわかった。さっさと始めようじゃないか」

「ッ! ……ヌウ」


 凄まじい怒気をはらんだ形相のパンテラたちに背を向けて、ウシツノたちは風神門の前まで下がった。

 パンテラの方も悪態をつきながら雷神門前へと下がる。


「生意気なカエルだ」

「もうほっとけ。黒豹の前で威勢がいいだけだ」

「しかし噂通り本当にあのチビに負けたんなら黒豹(ヤツ)はパンテラの恥さらしだ」

「所詮ロートルの剣闘士さ。戦場から逃げた腑抜けさ。オレがボコボコにしてやるよ」


 三人の中で比較的若い男が名乗りを上げた。


「レオパルト。お前はまだ若いが最強のパンテラになれる資質がある。よし、おそらく黒豹はひとり目で出てくるはずだ。お前に任せるぞ」

「承知ッ」


「なあアナトリアよ。アイツらなんであんたに食って掛かるんだ?」


 ウシツノは黒豹を見上げて尋ねてみた。

 カエル族には同族同士のいがみ合いが理解できないのだ。


「剣闘士であるオレが気に入らんのだ」

「なんでだよ」

「パンテラは戦士の一族だ。戦うことで己の証明を、存在を世に広めることを誉れとしている。ひるがえってそれが一族の誇りともなるんだ」

「でもあなたはコロッセオで最強だったではありませんか?」


 ダーナの指摘にもアナトリアは苦笑交じりに首を振った。


「パンテラの武は世界に捧げるべき。それがパンテラの誇りなんだ。コロッセオでいくら武を示したところで称えるのは金を賭けている観客だけだ。それに……」

「それに?」

「コロッセオで最強となれば自由民として出ていく権利も得られる。だがオレはここに残った。それが気に食わないのさ」


 最強の称号を確固たるものにすれば自由となれる。

 それどころか栄誉と金、女、権力すらも夢ではない。

 そのモチベーションが続く限り剣闘士たちは戦える。

 パンテラであるならばその栄誉を持って広い世界に打って出て、己の武を示すべきなのだ。

 しかしアナトリアはそうしなかった。

 それは一度敗れた相手、ウシツノの父である大クラン・ウェルに敗北を喫した意味を見出すため。

 その戦いを己に課したからだ。


「でも過去には自由を与えられず飼い殺しにされた剣闘士もいると聞きます」

「パンテラにそれは言い訳としか聞こえない。最強なら殺してでも外へ出るはずだとな」

「そんな……」


 ダーナが悲しそうな顔をする。

 アナトリアが、パンテラという戦うことのみに己を賭ける種族がいると知り悲しくなった。


「さあお待ちかね! Aブロック第一試合を始めるヨッ」


 会場に実況を担当するゴブリンのピースウィングの声がスピーカーを通してこだました。


「両チーム、ひとり目、前へ出るネッ」


 観客のボルテージが上がった。

 声援がひときわ大きくなる。

 いよいよ長きにわたる大闘技会キングストーナメント本戦が始まるのだ。

 会場の四隅に焚かれた篝火が一層大きく燃え上がった。


「さあ黒豹! 一族の恥さらしめッ、その首叩き落としてやらァ」


 レオパルトが剣を振り回しつつ試合場の中央へと進み出てアナトリアを睨みつけた。


「どっち見てる。相手はオレだぞ」

「なッ!」


 客席からの歓声がより大きくなった。

 中央に進み出たひとり目はカエル族の剣聖こと、ウシツノだったのだ。


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