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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第二章 魔都・動乱編

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073 気高きサキュラの司教


 退出するマユミを見送ってから、エルフの女王ト=モはもうひとりの虜囚に視線を移す。


「さて、お待たせした。サキュラ正教第一支部、ハナイ・サリ司教」


 後ろに控えるエルフの戦士に小突かれて、ハナイは女王の御前に立たされた。


「あなたがこの森を治めるエルフの長、トレーンラルーニ=モルネオローネ殿ですか」

「ト=モでよいぞ。我らエルフの真名(まな)はニンゲンには正確に発音できぬからな」


 ハナイは静かに目を閉じて了承の合図とした。


「フフ、なかなか肝が据わっておるな。だがそなたは桃姫のように手厚く歓迎とはいかぬぞ。覚悟はできておろうな」


 そう言ったト=モの口の端が笑みで吊り上る。

 極上のおもちゃを前にどう楽しもうか思案しているのだ。


「人質、身代金、奴隷落ち、または処刑。どれが一番こたえるかのう?」

「わたくしをさらったところで、何も変わりはしませんよ」


 ハナイの口調はとても穏やかだ。

 その落着き具合にト=モは興味を掻き立てられた。


「そうであろうか。確かにそなたは聖女と呼ばれるだけの器かもしれぬがな。果たして(くだん)の銀姫は、いかがであろうか」


 わずかにハナイの瞳が揺れる。


「半年前、銀姫がエスメラルダに降臨してからはハナイ司教、そなたが随分と面倒を見たのであろう?」

「あの方はわたくしなどが関わらなくとも、立派に今の地位に就いたことでしょう」

「本人はそう思ってはいまい」

「……」

「エスメラルダ、いや、ニンゲンと我らエルフは長いあいだ相容れなかったが、姫神の降臨で状況は動きつつある」

「……」

「よもや砂漠に潜むニンゲンどもの地に姫神が舞い降りようとはな」


 ト=モの表情が少しだが苦々しげに歪んで見えた。

 ハナイは静かにいつも思う言葉で返した。


「サキュラ神の思し召しです」


 ト=モの表情に侮蔑の色が広がる。


「しかし今日、我らの元にも桃姫が舞い降りたぞ。一連の動き、サキュラなど一介の地方神の御業ではない。これはまさしく〈大いなる存在〉の啓示であろう」


 一瞬にしてハナイの顔が怒気で赤くなる。


「我がサキュラ神を冒涜することは許しません!」

「今そなたと神について議論する気はない。だが、二千年ほど生きてきたが、神などに出会うたことはなかったわ。なにより世界は精霊で成り立っておるのだしな」

「……」

「故に精霊の存在を弱らせる、ニンゲンとその社会をエルフは見過ごすことができぬ」


 しばしの沈黙が時を支配した。

 お互いの信じるものがどこまで受け入れられるのかを試されている時間でもあった。

 その時間を遮ったのは入室してきたエルフの部下による報告だった。


「……そうか」


 報告はエルフ語であったため、ハナイには詳細がわからなかった。

 ト=モは面白そうに報告の内容をハナイに聞かせてやる。


「ハナイ司教。そなたを助けるため、銀姫が軍勢を率いて出陣したそうだ」

「まさかッ」

「フフ。臆病者の法王が銀姫の出兵を許可すると思うか?」

「どういうことです」

「銀姫の独断専行……であったとしたら、あの国はどうするであろうか」

「それが狙いですか!」


 ハナイはうつむきながら唇を噛んだ。

 法王と大司教が自分と銀姫を快く思っていないことはわかっている。

 ハナイにその気はなくとも聖女と称えられるほど国民人気が高く、さらに一騎当千の銀姫を抱え込んでいるのだ。

 エルフはその隙を突いてエスメラルダを揺さぶりにかけようとしている。 


「そなたはそなたが思う以上に、銀姫にとって大きな存在のようだのう。なんとも仲睦まじい。健気ではないか」


 ト=モが思い出したかのようにキセルをくゆらせる。

 満足そうに煙を吐き出しながら笑った。


「そなたをさらうだけで、あの国は瓦解するやもしれぬな。まったく、姫神の降臨は世界を動かしめる。何度味わっても面白いわ」


 トントン、と火皿に詰まった灰を落とすと、ト=モがお付きのエルフに戦支度を命じた。


「銀姫を迎え撃つ。戦闘配備につけ」

「ハッ」

「それと……」


 ト=モが舌なめずりしながらハナイを下から上といやらしくねめつけた。


「司教殿をわらわの寝所に」

「なんですってッ」


 ハナイが咄嗟に身を固くする。

 エルフの女王の言葉には真面目とお巫山戯が入り乱れている。


「銀姫に最も大きなダメージを与える方法を思いついたわ」


 愉快に嗤うエルフの女王にハナイは初めて戦慄した。


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