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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第八章 王者・無双編

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681 リオのこと


 リオにより母屋に通された一行は、その後、沈痛な面持ちでしばらくの時を過ごさねばならなかった。


「そんな……親父が殺されただなんて……」


 椅子に座りこんだラゴは口の端から血が滲むほどに唇を噛み締めた。

 たったいま、リオにこの数ヶ月で起きた身の上を聞かされたところだった。


「まさかこの牧場に強盗に入るなんて」


 ラゴは信じられないと言った顔でリオの手を握りしめた。

 闘技場の見世物として使われるモンスターを飼育する施設である。

 当然闘技場側からしても大事な施設だ。

 そこへ寄りにも寄って剣闘士が強盗に入るとは前代未聞のことであった。


「けどそいつは親父さんが相討ちに持ち込んだってんだろ? 聞けば身体が不自由だったそうじゃねえか」

「そうにゃ! 親父さんは立派だったと思うにゃ」


 シャマンとメインクーンに励まされてラゴが弱々しく微笑んだ。


「しかしその親父さんが不自由になったのも逃げたもうひとりの容疑者……なんと言ったか」

木乃伊蜂(マミー・ザ・ビー)のネダです」


 ウィペットにリオが答えた。


「そう、そいつに因縁を吹っ掛けられたからだそうじゃないか」

「じゃがそやつも行方知れずか。とりあえず、捜査は打ち止めなんじゃろ?」


 クルペオの問いにリオはコクンと頷いた。


「そこまではわかった。で、リオ?」

「はい?」

「ここで飼育していたモンスターが一匹も居ないのは一体どういう訳だ?」

「ピィーッ」


 ラゴがリオに対し詰問したところで足元から抗議の鳴き声が聞こえた。

 鳴き声の主は赤茶色い羽毛を蓄えた四本脚のひな鳥だ。

 身体はほぼ頭部のみで細く長い脚が四本生えている。


「お前のことを忘れていたよ、ピイカー」


 ピイカーは床からリオの膝上によじ登り、もう一度ピィーッと一声泣いた。


「たしかにピィカーは地獄の魔鳥アケイライの雛だが、それ以外の魔物は何処へ行ったんだ、リオ?」

「ごめんなさい。お父さんが殺されて、未熟な私ひとりでは任せられないって、解雇……されちゃった」

「そんなバカな……しっかりとした捜査もしなかったくせに、一方的にお払い箱か」


 ラゴの声に怒りが混じる。


「それで、ここに居たモンスターたちはどうした?」

「ピースウイングさんが、全部連れてっちゃいました。新しく別に魔物使い(モンストルテイマー)を雇ったそうで……」

「連れてったって、無料(タダ)でか? お宅らの魔物だろ?」


 シャマンの質問にリオは首を横に振った。


「私たちは雇われた身で、モンスターは闘技場の備品だって。牧場は新しく作ったそうで、だから古いこの場所だけは残してもらえたんだけど」

「くっそぉ、あのゴブリンめが。偉そうにしやがって」

「ううん、兄ちゃん。ピースウイングだけじゃないの。モンスターを連れてったのは」

「なに? 誰だ?」

「三博士って呼ばれてた。妖精女王のそばで色々研究とかしてる偉い人なんだって。ピースウイングもへぇこらしてた」

「三博士だって! そいつは……」

「誰なのじゃ? ラゴや」


 クルペオの方を見てラゴは答えた。


「アーカムの主戦力とされる兵隊に戦闘怪人(ケンプファー)てのがいやす。人間に動物や昆虫の能力を付与された改造人間どもです。その責任者が三博士たち」

「大物らしいのう」

「これでもうちの牧場は、結構レアなモンスターを飼っていました。あっしが世界中を駆けずり回って集めたんでさ。それを何に使うつもりなのか」

「ふむ。なにやら薄気味悪い話じゃのう」

「それはそうとしてさ」


 それまで黙って聞いていたレッキスが口を割った。


「そのお嬢ちゃん、よくひとりで今日まで無事に過ごせてたね。言っちゃあなんだけど、この街の雰囲気から言ってさ、ねえ、クーン?」

「そうかもにゃ。悪い奴はいくらでもいるにゃ。闘技場の庇護も期待できないにゃら、なおさら」

「あ、それなら」


 リオの顔にようやく笑みが広がった。


「実は私のことを守ってくれるヒトも、ちゃんといてくれるんですよ」

「だ、だ、だ、誰なんだ? そいつは?」

「おちつけよラゴ」


 シャマンが苦笑しながらリオに掴みかからん勢いのラゴを引きはがした。


「もちろん剣闘士です! ちょうど今夜そのヒトの試合があるので観に行きましょうよ。兄ちゃんや皆さんを紹介したいですし」

「ど、ど、どんな奴なんだ? お前を任せられる奴なんて、兄ちゃんは簡単には認めやしないぞッ」

「ふふ。もちろん! チャンピオンだよ」


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