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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第八章 王者・無双編

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679 大会の裏で


「では内務卿、報告をしておくれ」

「はい、妖精女王陛下」


 メイドの差し出したワインに口をつけながら、妖精女王ティターニアは円卓に居並ぶ面々を見渡した。

 右隣に座るのはたった今返事をした内務卿デルフィーン。

 彼は改造手術を受けたイルカの戦闘怪人(ケンプファー)であるが、知能の発達に優れたため、妖精女王の隣で内政に励む日々を送っている。


「大闘技会キングストーナメントは明日より開幕いたします。一ヶ月に及ぶ大会期間中の観客動員数は百万は下らないと見ております」


 内務卿はその後も大会の収支予測やら、各国から訪れるであろう重要人物やらの報告を済ませ、その間における自国の公務についての対策を述べた。


「ではベリンゲイ将軍」

「はっ」

「警備体制についてはどうなっておる」


 正面に座っているのがベリンゲイ将軍。

 禿頭で濃いヒゲを口回りに生やした大柄の男だ。

 〈アリの巣〉と呼ばれる重要施設で司令官を務めていたが、今回一軍を率いて大会の警備任務に就くことになっている。


「街の治安に関しては巡視隊のアサルトウイングに一任しております」


 ベリンゲイの隣に座るゴブリンが(うやうや)しく頭を下げる。


「よって吾輩(わがはい)の率いるインスマス隊が会場の警備に当たります。加えて……」


 ベリンゲイは妖精女王の様子を確認しながら慎重に言葉を紡ぐ。


「……大会参加者も含め、世界中から大勢の有象無象が押しかけております。そこで吾輩の弟の力も借りたいと存じまして……その……」

「弟とは何者じゃ」

「はっ、その、この街の盗賊ギルドを取り仕切っております、ドルコンと申す者で。裏の情報網は警備にとても役立ちます。もちろん巡視隊とも連携いたしますれば……」

「よい。そのように計らうがいい」

「あ、ありがとうございます」


 ホッとしたようにベリンゲイが頭を下げる。


「大会参加者についてはどうじゃ。ピースウイング」


 闘技場(コロッセオ)を仕切るピースウイングが立ち上がった。

 彼は隣に座る巡視隊の隊長アサルトウイングの兄だ。

 この街は普段、娯楽と治安という両面をこのゴブリン兄弟に仕切られているのである。


「大会への参加申請は今夜日付が変わるまで受理されまス。今大会は例年になく、三人一組での参加となるために参加者数も例年の三倍近い数ですナ」

「今回も盛況ってわけダ」

「その通リ」


 ゴブリン兄弟が顔を見合わせニンマリする。


「最終的には二百チーム程度が参加する見込みなので、まずは予選で相当数を振るい落としまス。勝ち残った三十二チームによるトーナメントが本番ですナ」

「ルールは?」

「コランダム直上のレジン山脈内に造られた特設リングでのみバトルすること。ひとりでも生き残った方のチームの勝ち。次戦で欠員が出た場合の選手補充は自由。ただし最初に登録されたチームリーダーのみ替えは効かず、その者がリタイアした場合もチームの敗退となりまス」

「三博士よ、我がアーカムからも精鋭が参加するのよな」

「左様」


 妖精女王の左側に並んで座る三人に注目が集まる。

 年配のホルゥ博士が立ち上がった。


「この大会は我らがアーカムに外貨を稼がせるだけでなく、世界中の英雄候補をあぶり出す名目もあります。当然どの国も自国の英傑を宣伝し、それが威嚇や抑止に繋がることもありましょう。しかし今回に限ってはそれらもみな、私共の用意した新生戦闘怪人、ネオ・ケンプファーのお披露目により霞むものとなりましょうぞ」

「ネオ・ケンプファーだって? ハッ、オレ様の抱える剣闘士どもと張り合おうってカ」


 ピースウイングが面白くもない冗談だ、と笑い飛ばす。

 過去の大会において、アーカムの顔として戦士を排出してきたのは闘技場(コロッセオ)だった。

 研究室で生まれた異形どもにデカい顔をされるのは気に入らない。


「今年の剣闘士は歴代最強ダ」

「それも大会が始まればわかること。ふぇっふぇっふぇ」


 いきり立つゴブリンに老博士は嫌な笑い声で応えて見せた。


「優勝者には藍姫が与えられる」


 妖精女王の一言に場が沈黙する。


「ご安心を、女王陛下。ネオ・ケンプファーこそが次代のアーカム主戦力となりまする」

「いいや、うちの剣闘士どもに決まっていル」

「どちらでもよいのじゃ」


 女王が不敵な笑みを見せる。


「どこの誰でも構わぬ。強い者が勝ち、藍姫を娶る。そしてそやつはわらわの言いなりとなるよう改造してくれる。その時こそアーカムが世界を支配する第一歩となるのじゃ」


 女王の静かな笑いにみな反応できずにいた。

 ただひとり、老博士の隣に座る女、カルスダだけは挑むような目でそれを見つめていた。


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