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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第七章 神威・継承編

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656/722

656 tournament 【大闘技会参加条件】

挿絵(By みてみん)


「よし行くぞ。お前ら、準備はいいな?」


 シャマンが一同に声を掛ける。

 時刻は早朝。

 一週間の休暇を終え、宿を引き払った所だ。

 これから南のアーカム大魔境へと旅を再開する。

 目的地は鉱山都市コランダム。

 同行する魔物使い(モンストル・テイマー)ラゴの本拠地(ホーム)だ。

 エスメラルダ国内は巡礼者向けではあるが、いくつものルートを騎士が同乗する乗合馬車が走っている。

 砂漠の旅は過酷であるが、この馬車を乗り継ぐことができれば、幾分楽に旅ができる。

 とはいえ乗合馬車の運行時間は早朝から午前に集中している。

 昼日中の砂漠越えは無理して行うものでもない。

 アーカム領内では基本、徒歩での移動を考えている。

 無法者の地とも言われる魔境であり、シャマンたち熟練の冒険者と言えども油断はならないのだ。

 それでもひと月もすれば目的地に着く算段である。


「大丈夫だ。大闘技会の開幕には十分間に合うさ」


 今は神の月(2月)

 大闘技会の開幕は鋼の月(5月)の最終週だと聞いている。


「着いてからも二ヶ月は猶予がある」

「それまでに誰がレッキスに付き合ってやるか決めないとな」

「ムゥー」


 レッキスがふくれっ面をしてみせる。


 話は昨夜にまでさかのぼる。


 予定外に大きな騒動に巻き込まれた彼らは、休暇の予定日後半をほとんど大人しく過ごしていた。

 とんでもないご神木が地下から生える原因の真っただ中にいたとはいえ、事実は王宮と神殿に隠蔽されてしまった。

 その結果シャマンたちの勇名が馳せることはなかったが、法王や銀姫、騎士団、重臣、富豪、それに盗賊ギルドといった面々との知己を得た。

 一介の冒険者である彼らにすれば大変な見返りと成り得ることだ。

 当座の旅費にも困らない程度に報奨もいただけたので、字面通りに時間を休息にあてがうことができた。

 そしていざ、大闘技会の催されるアーカム地方の都市、コランダムへと旅立とうと言う前夜。

 ラゴが街で配布されていた、その大闘技会の開催を伝えるチラシを持って帰ったのである。


「大会参加についての概要が記されてますぜ」

「どれどれ?」


 大闘技会はアーカムを統べる妖精女王が主催する、不定期の武術大会である。

 開催時期は定まっておらず、おおむね十数年に一度のタイミングで開催されてきた。

 闘技場(コロッセオ)のある街が会場となるので、当然多くの剣闘士も参加することになる。

 過去の優勝者の半数以上はその当時、コロッセオに在籍していた剣闘士である。

 前回大会の優勝者は今でも現役の闘技場チャンピオン、豹頭族(パンテラ)のクロヒョウことアナトリアである。


「もちろん、剣闘士でなくとも、外部からの参加も受け付け中ですね。優勝すると多額の賞金や、それに見合う栄誉も得られるので毎回とんでもない数の参加者が集まるもんです」


 自分の故郷の話であるため、いつになくラゴの声にも熱がこもっていた。


「賞金って、どれくらいもらえるにゃ?」

「ええとですね、ん? なんだこれ?」

「どうしたにゃ?」

「いえね、賞金が書いてないんですよ。代わりに別のことが書いてあります」

「なんでい?」


 シャマンも気になって、チラシを覗き込むラゴに先を問う。


「こう書いてます。優勝した暁には、アーカムの支配権を譲渡する。その証として……」

「アーカムの支配権?」


 レッキスがラゴを遮って素っ頓狂な声を上げる。


「……その証としてですね」


 ラゴが続ける。


「その証として、優勝チームの代表者には、藍姫との結婚を約束する。とありますよ」

「藍姫と結婚?」


 レッキスがますます大きな声で反芻する。

 そしてついミナミの顔を改めてしまう。

 ミナミはよくわからないと言った顔をしていた。


「待て。今チームっつったか?」


 シャマンがラゴに確認する。


「ええ、そのようです。ここに書いてありますね。今回の大闘技会は各チーム三人一組でエントリーする必要があるみたいです」

「個人戦じゃないのかよ」

「これは初の試みだと思いますね。確かに以前は個人参加でしたから」


 レッキスがラゴからチラシをひったくって凝視する。


「ほんとだ。三人対三人の闘いになるみたいよ」

「だがそれならば我らに有利ではないか?」


 クルペオが酒を傾けながら言った。


「なんでよ?」

「我等にはミナミがおるではないか。姫神に敵う者などそうはおるまい」


 今度の一件で、彼らに最も恩恵があったとすれば、それはミナミの完全復活であろう。

 メンタル部分によるものが大きかったが、危機に瀕したことで結果、旧きモノを呼び覚ましレベルアップすることができた。

 それも通常では考えられない、二人の旧きモノ同時覚醒である。


「間違いなくミナミは姫神の中でも最強であろう」

「確かに。となれば我らがアーカムを統治する権利を得られるというのか」


 ウィペットも頷くのを見てミナミは逆に困惑してしまう。


「でも私、藍姫さんと結婚なんて考えられないよ。会ったこともないし、たぶん女の子でしょ?」

「男の姫神なんていねえだろ」

「シャマンのツッコミはともかくとして、そこには代表者が結婚できると書いてあるのだろう? なら別に代表者をたてればいい」

「シャマンでいいんじゃない? リーダーなんだし」

「なんでオレが!」

「そろそろ身を固めてもいいんじゃないかにゃ」


 メインクーンがニヤニヤして言う。


「同性婚だって構やしねえだろ。オメーでもレッキスでもいいじゃねえか」

「いや、駄目なんよ」


 レッキスがチラシを見ながら遮った。


「なにがでい?」

「ミナミは参加できない。ここに書いてある」


 チラシをテーブルの真ん中に放りだす。

 全員が参加条件の項目に目を走らせた。


 ※なお、本大会に姫神様ご本人の参加はお断りさせていただきます。


「お断りさせていただきます」

「姫神様ご本人の」


 全員が沈黙した。



 そして今朝である。


「とにかく、レッキスとシャマンの出場は決定にゃ。あとひとりをどうするか?」

「なんでオレまで決定なんだよ!」

「リーダーじゃからな」

「う~、個人戦が良かったんよぉ」

「まあまあ、道々決めていけばいいじゃないか」


 そうしてシャマンたちはエスメラルダの王都を後にした。


 彼らと同様に、大闘技会に向けて多くの者がコロッセオに集まりだしていた。





2025年9月21日 挿絵を挿入しました。

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