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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第七章 神威・継承編

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649/722

649 gold and silver 【金と銀】


 ヘルスライム・デーモンは、ミナミの攻撃をいくら受けても都度回復しているようだった。

 ミナミは手も触れずに念動力で地面から泥を大量に空中へと上らせる。

 そうして巻き上げた大量の泥を様々な形に変えて攻撃に使っていた。

 泥を固めて作った槍や斧を飛ばしたり、無数の弾丸にして射出したり。

 しかしそのような物理攻撃はヘルスライム・デーモンにとってなんら痛くも痒くもなかった。

 たしかに一撃もらうたびにデーモンの身体は弾け飛ぶ。

 しかし粘液質の身体はどれだけ四散してもすぐに寄り集まって元通りになってしまう。


『愚かしいぞ、太古の女神よ! いい加減そのような術は無意味と知れ』

「ならばこれはどうじゃ」


 ミナミがそれまでよりも特大の泥を集めて頭上に大きな玉を作り出す。

 次から次と泥が集まり、強大な圧力がかかって泥玉はみるみる黒く、大きくなっていく。


「ただの泥の玉と思うでないぞ。重力千倍」


 巨大な泥の玉がデーモンめがけて落下した。


『くだらぬ…………むッ』


 傍目にも避けるのはそう難しいとは思えなかった。

 しかしデーモンはどういうわけかその場を動こうともせず、泥玉の落下地点に留まり続けている。


『む……ぐ』

「どうした、避けぬのか? その重量を受けて潰されない自信があるのか?」


 泥玉がデーモンに直撃した。

 その重さに耐えられず、デーモンは地面に潰される。

 即座に人型を保てなくなって弾ける粘液質の身体が四散する。

 ここまでなら先ほどまでと変わらない。

 四散したスライム状の身体がまた寄り集まれば元に戻るだけのことである。

 だが今度はそうはいかなかった。

 飛び散った粘液のかけらも泥と同じように玉に吸い寄せられ引っ付いていくのだ。


「理解したか? そなたがこの泥玉を避けられなんだは、その玉が千倍の重力で寄り集まっておるからじゃ」


 泥玉の表面に細かく分かれたヘルスライムの残骸があちこちにこびり付いている。

 どれもかろうじて震えているが、それだけだ。


「ふむ。どうやら人型になれねば憎まれ口も叩けぬようじゃな。所詮は上位魔神(エルダー)。わらわの相手をするならせめて魔神将(アークエネミー)程度はなくてはの。さて……」


 ゆっくりと眼下を睥睨すると、ミナミ=女媧はシャマンらと共にいる新顔に目を付けた。


「目覚めて早々の準備運動はちと物足りなかったが、早速本番といこうか。銀姫や」


 ミナミはナナの目の前に降りてくるなりそう告げた。


「本番?」


 ナナは警戒を怠らずにそう聞き返す。

 ミナミの後方で泥玉に押し潰されながらも蠢いている、ヘルスライムの動向も気にしていた。


「決まっておろう。姫神と姫神がまみえたなら、すなわちそれは開戦の合図じゃ」


 突然ミナミの黄金のドレスのスカートの裾から九つの狐の尻尾が飛び出して、強烈な打撃をナナにお見舞いした。

 意表を突かれたナナではあったが、咄嗟に両腕に鋼鉄の盾を作り出して衝撃を防いだ。


「待てッ! 私は姫神同士の争いに参加する気はない!」

「そちらになくてもこちらにはあるのじゃ。世界を創造する権利は姫神ひとり分しか与えられないのだから」

「よせッ! いまはそれよりも彼女たちをッ」


 ナナに抗議の間も与えずミナミの大剣が振り下ろされた。

 刃に無数の蠢く爪が敷き詰められた禍々しい大剣だ。

 仕方なくナナも自身の剣を閃かせて受け止める。

 〈銀星号(ザ・シルバー・スター)〉。

 ナナが姫神に転身することで刃がクリスタル化する美しい剣だ。


「そのままでよいのか、銀姫や」

「なに?」


 打ち合わされた二つの剣だが、勢いは俄然ミナミの〈土貴王飢(ライドウ)〉が上回った。


「わらわは今、覚醒態じゃぞ。もう一度問う。そのままでいいのか?」


 〈土貴王飢(ライドウ)〉の刃で蠢く複数の爪が発射された。

 ひとうひとつが自由意志でもって動き回り、あらゆる角度からナナを襲う。

 二、三発弾いたが全てを防ぐのは困難だった。

 たまらず亀のように防御の姿勢をとる。


「銀姫や。そなたが戦わないなら戦う気にさせてやっても良いのだが?」

「なんだと?」


 見るとミナミがナナではなく、離れた位置で縮こまる、助けたばかりの女たちを見ていた。

 ミナミの顔に残忍な笑みが広がる。


「貴様ッ」


 ナナの身体が銀色の光を放つとスーツが同色のメタリックドレスに変化していた。


「私は銀姫。〈守護の道標〉だ。この国を守るのが私の役目」


 ナナも覚醒態に変化していた。


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