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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

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591/721

591 strength 【求める強さ】


「ガマ流刀殺法! 質実剛剣ッ」


 ウシツノから仕掛けた。

 剣の間合いは遥かに遠いながら、カエル族特有の跳躍力を活かし一足跳びにその差を詰める。

 白い砂地を蹴り上げた粉塵が、煙のように足裏からたなびく。

 急降下から脳天への振り下ろしが激しい打突音と共にこだました。


「チッ」


 ウシツノの重たい一撃をアナトリアはしっかりと防御した。


「その技は見た」

「ならこれはどうだッ」


 地面に着地することもなく、ぶつかった剣と刀を支点にして体を横にひねる。


「ガマ流刀殺法! 風林火斬ッ」


 身体を一回転する横薙ぎで相手の首筋を掻っ切ろうとした。

 その一撃もアナトリアは剣を立てて防いだ。


「それも知っている」

「なんだと?」


 少し離れた位置で着地したウシツノは首をひねった。


「この技はまだ闘技場(ここ)では使っていないぞ」

「お前の使う技は知っている。あの人ほど洗練されていないが」

「誰のことだ?」


 今度はクロヒョウから仕掛けた。


 真っ直ぐに突きを入れてくる。

 頭をひねり横に躱す。

 耳元でボッ! と風を巻き込む音がした。

 躱しながらクロヒョウの足元を切り払う。

 足を上げてその一撃を脛あてで防ぐ。

 ウシツノの腰が入っていないのを見てそれで十分と踏んだのだ。

 お互いが相対した瞬間にまたしても正面から剣がぶつかった。

 激しい火花が散りお互いの剣も弾かれる。

 ウシツノは握った刀ごと大きく後ろにふんぞり返った。

 体格に勝るクロヒョウが先に構えを取り、容赦なく追撃する。


「うぁッ」


 焦りつつもクロヒョウの剣筋を見定め、上体をひねり再度の突きを躱した。

 地面に両手を着きながらも必死に転がり距離を取った。

 振り向いた時にはもう次の攻撃が迫っていた。

 上、右、下がフェイントでもう一度右。

 相手の目線、筋肉の躍動、軸足の向き、呼吸のリズム、力加減。

 考えて捌く余裕はない。

 釣られるように自分の刀が相手の剣に向かい動かされている。


「この流れは非常にまずいッ」


 ウシツノはなんとか状況の打開を模索した。

 正直視界の中には黒い豹の戦士しか入らない。

 周囲は歓声と野次でうるさいだろうか?

 あるいは誰もが固唾をのんで見守っているのだろうか?

 気かける暇はない。

 強烈な斬撃をしのいだ直後に相手はもう次の攻撃モーションに入っている。


「ベェッ」


 突然アナトリアの視界にピンク色の鞭がしなった。

 当たることはなかったが、自身の攻撃は中断された。

 そこで一旦間合いが取られ、お互い相手の状態と周囲の観察に時間を割くことができた。

 ピンクの鞭、それはウシツノの長い舌だった。

 ゴクン、と喉を鳴らしてウシツノが舌を飲み込んでいた。


「……舌か」

「それがどうかしたか?」

「いや……」


 アナトリアが言わんとしていることがなんとなくわかった。

 剣で勝負しろと言うのだろう。


「悪いがオレはカエル族である自分に誇りを持っている」

「……」

「仮にニンゲンが四本腕の生物だったら四本の腕を使って戦うだろうよ」

「仮定の話か」


 ウシツノは首を振り、アナトリアに剣を向ける。


「お前はなんだ? お前は豹だろう? 牙でも爪でも使えばいい。それとも自ら制限を掛ける温い闘いしかしたことないか?」


 クロヒョウの目に先ほどまでとは違う光がともった。

 凄まじい剣気がほとばしるようである。


豹頭族(パンテラ)は戦士の種族だ。そしてオレは、ここで三十年以上勝利してきた。オレの闘いを侮辱するか」

闘技場(ここ)での勝利ね。所詮は自分、自分、自分。誰かのために()ったことなんてないんだろう」


 ウシツノは自来也を青眼に構えた。

 それはとても静かで流れるような一動作だった。


「オレはアンタとは違う強さを求める。それは助けを乞う誰かのためであり、そしてカエル族の誇りを誰にも踏みにじらせないためにだ」



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