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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

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582 backing 【後ろ盾】


「こいつはもうあかんな。両手と右足の腱がスッパリやられとる。二度と動かんだろうよ」

「グオオオオォォォッッッ! カエルめぇ! 切り刻んでやるゥゥ」


 奥の部屋から牛頭ブロウのけたたましい怒号が聞こえてくる。

 取り巻きの連中が何とか鎮めようとするが聞く耳持たない。


「ネダさん、なんとかしてくださいよ」


 たまりかねたひとりがネダに助力を仰ぎに来たが、たったいま、医者の見立てでこの暴れん坊は二度と戦えやしないことを告げられたところだ。


「はあ? なんであたしが」

「え、ネダさん?」

「動けないミノタウロスなんてもういらないわ。さあもう行くよ」


 ネダは取り巻き立ちに帰り支度をさせる。


「おいおい、このデカブツを置いていかないでくれよ」

「知らないよ。あたしはもう他人なんだ。患者の面倒を見るのは医者の仕事だろ」

「わしゃ闘技場の雇われで病院経営者ではない」

「ならとっとと転院の手続きをしなさいな。料金その他は本人に請求してよね」


 無駄なイキりちらしを背後にネダは取り巻きを連れて出ていった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 翌朝早々にネダはひとりで魔物使い(モンストルテイマー)のエリアへとやって来た。

 牛頭ブロウはもう終わりだが、リオの弱みは握ったままだ。

 魔獣の卵の件を利用して、まだまだ稼がせてもらうつもりだった。

 リオは朝早くから起きて魔物の世話をしていた。

 父親が牛頭ブロウによって寝たきりになっている以上、リオはひとりでここのやりくりをしているはずである。

 気弱な少女にすぎないリオにいう事を聞かせるぐらい訳はない。


「朝からご苦労ね、リオちゃん」

「ネダさん」


 リオの声には警戒の固さがある。

 ネダは心中でほくそ笑んだ。


「ご用は何ですか」

「余所余所しいこと言わないでよ、あんたが大変なのをあたしは承知しているのよ」

「……」

「ユニコーンの角ならもうすぐ来るはずだから。でもね、ちょっと値が張っちゃってるらしいのよ。だからもう少し卵を……」

「嘘です」

「……は?」


 リオがネダから身を遠ざける。


「あなたは私に噓をついて、卵を別の人に売りつけたんです」

「何言ってるのよ。そんなわけないでしょう」

「ユニコーンの角なんて、最初から手に入れるつもりなんてなかったんでしょ」

「怒るわよ。あたしを疑ったらどうなるか」


「どうなるんだ?」


 そばの小屋から小さな影が出てきた。

 ネダはその正体に驚いた。


「お前、どうしてここに」

「オレがここに居て何か不都合でもあるのか?」


 ウシツノだった。

 さりげなくリオをかばうように前へと出てくる。


「メルナ魔法雑貨店」

「ッ!」

「お前が卵を渡した商人だな。どうやらマラガへは行ってないようだが」


 ネダは舌打ちした。

 どうやら今は分が悪い。

 出直そうと考えた。


「二度とこの子に関わるな」


 しかしウシツノはそう警告した。


「はあ? そんなのあんたに関係ないでしょう」

「警告はしたぞ。牛頭ブロウとの試合はオレから望んで組んでもらったものだ」

「……?」

「次は試合はお前が相手でもいいんだぞ。いつでもな」

「ッ! チッ」


 それ以上何も言わずにネダはこの場を去っていった。

 しばらくしてリオが大きく息を吐き出した。

 だいぶ緊張していたらしい。


「もう大丈夫さ。何かあったらオレに言ってくれ」

「でも、魔獣の卵は……」

「卵はカルスダという妖精女王配下の博士に売られたらしい。何に使うかは知らんが、少なくとも市場に出回ることはないはずだ。これ以上拡散されることもないだろう」

「うう」

「大丈夫さ。もう忘れちゃえって」





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「クソッ! クソッ! クソッ!」


 ネダは怒り心頭で街区の雑踏をかき分けていた。

 ウシツノとやり合って勝てる見込みはない。

 そんなことはわかっている。

 今までは暴虐な牛頭ブロウを後ろ盾にして好き勝手にやってこれた。

 ある程度の金と従える子分も持っていた。

 それが少しずつ不穏な感じになってきている。

 このままでは自分もいつまでこうしていられるかわかったもんじゃない。


「早急に、新たな後ろ盾を探さないと」


 しかし候補がいない。

 牛頭ブロウより強いヤツは思いつくだけでチャンプとあのカエルぐらい。

 チャンプであるクロヒョウは絶対に自分にはなびかない確信がある。

 せめてこいつらに匹敵する実力者を探さなくては。

 考えに考えて、ようやくひとりの候補を思いついた。

 幸い、魔獣の卵を売りつけた相手との因縁もあると聞いている。

 この辺から突けば自分の味方に引き込めるかもしれない。

 少なくとも、半年後に開かれる大闘技会までは持つだろう。


「嫌われ者の元国王、ヤソルト・クシャトリヤなら悪役としてもピッタリよね」


 ネダは(きびす)を返すとコランダムにある盗賊ギルドへとその脚を向けた。



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