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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

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578/721

578 street 【横丁】

挿絵(By みてみん)


 その後もウシツノとダーナはとりとめのない話を交わし、ある程度お互いの事情を通じ合った。

 ダーナは父の死を伝え、故郷へ戻ることを訴えるためにシバを追って里を出た。

 各地を放浪するつもりでいたが、旅立って二ヶ月もしないうちにここでインバブラと出会い、今の立場に落ち着いてしまったらしい。

 インバブラには「闇雲に世界を旅したって彼氏は見つからねえさ。それよりここで有名人になれば向こうから会いに来てくれるって寸法さ」と説得され今に至るらしい。


「でもそれでシバに会ったウシツノさんと、自来也にも会えたんですもの。マネージャーの言うとおりかもしれませんわね」


 そう言ってダーナはころころと笑った。

 ウシツノはと言うと、カザロの村を出たところから話したのでは一晩あっても語り切れない。

 なのでヤソルトと出会ったあたりから〈アリの巣〉で妖精女王と相まみえたこと、結果この闘技場へと連れてこられた下りを話すにとどめた。

 

 それで、というわけではないが、ウシツノは反省室という名の独房にいた三日間で気になっていたことのもうひとつ、ヤソルトはどうしているか、という件を思い出した。

 ダーナもヤソルトのあの敗戦以降は一度も顔を合わせていないらしい。

 もちろん昨夜自室に戻ったウシツノも、同室のヤソルトとは会えずじまいだった。

 戻ってきていないのだ。


「アイツのこと、それほど深く知った仲ではないが、いつまでも塞ぎ込むような男ではないだろう」


 とはいえ今時分、どこで何をしているかもわからない。

 とにかく探してみようと思った。


 このあとインバブラと仕事の打ち合わせがあるというダーナと別れ、ウシツノは街区へと向かった。

 ヤソルトの好みそうな場所の見当もつかず、土地勘もないので、足の赴くままに通りを渡る。

 コランダムの街は元々は鉱山で働く鉱夫たちで栄えた地底都市だ。

 地底と言っても地面の下にあるのではない。

 岩山の中に広がる洞窟がベースになっている。

 その岩山の外に巨大な三角塔の形をした闘技場(コロッセオ)があるのだ。

 街は元々の坑道に沿って広がっているので、全体が迷路のように入り組んでいる。

 そんななかに種々の商店や酒場、さらに住居も混み入っているのだ。

 そして人の数も多い。

 時には人混みをかき分けるようにしなくては前へと進めないこともあった。


「これはダーナと来なくて正解だったかも」


 アイドル剣闘士の彼女がこんな場所に現れては、たちまちパニックを引き起こしかねない。

 そんな物思いに耽っていると、いつの間にか怪しげな露店が軒を連ねる通りに出てしまっていた。

 多くの商人が道端に敷物を敷き、あるいは粗末な机を並べ、所狭しと商品を陳列している光景が目に付いた。

 古びた武具から何に使うかもよくわからない雑貨、きれいに輝く魔法の水晶やアミュレット、怪しげな薬、植物、花々。

 ほかにもいかがわしい衣装や道具、それに愛玩用やら労働用やらに使える動物や、奴隷もいる。

 多国語が飛び交う喧騒の中、売り手だけでなく買い手となる連中も異常なほどに高揚している熱気の高い区画だった。


「すごい人だかりだ。闘技場だけではないな、この街は」


 ウシツノの知る街としては北のハイランドと盗賊都市マラガがあるが、そのどちらよりもこのコランダムは活況しているように思えた。


「アーカム大魔境にこんな街が存在しているなんて」


 それは荒廃した大地のイメージが強かったアーカムの印象を大きく変えるものだった。

 ウシツノは物珍しそうに商店の品々を見て回った。

 そうして通りの端から端へと見て回るうちに知っている人物の後姿を見て取った。


「あれは、ネダだ! あの包帯姿、間違えようがない」


 それは正真正銘、ダーナを嫌い、リオを脅す、木乃伊蜂(マミー・ザ・ビー)ことネダだった。

 そのネダがひとつの商店の裏へ回り、店主らしき人物とこそこそと話している。


 ウシツノはそっと物陰に潜み、ネダと相手の会話を盗み聴こうとした。


2025年6月18日 挿絵を挿入しました。

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