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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

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570/721

570 exhibition match 【特別試合】

挿絵(By みてみん)


「さあ続いては今夜の見どころ、エキシビジョンマッチでございまーっス」


 歓声が大きくこだまする。

 明らかに先ほどまでの殺伐とした雰囲気が一変したことにウシツノは動揺を隠せない。


「なんだ? なにが始まるんだ」

「わたくしの出番なんです」

「ダーナの? 君も今日試合があるのか」

「はい」


 会場にはピースウイングによる選手入場のコールが発せられている。


「特別試合なので命の心配はないとマネージャーにも言われています。それで、その……」


 ダーナはもじもじとしてそのあとの口をつぐんだ。


「あ、ああ。その、なんていうか、その鎧、か?」


 ダーナの顔が赤くなる。

 彼女の着ている鎧は薄いピンクで肩と胸、腕、脚、それとわずかばかりの腰回りを覆っているに過ぎなかった。

 長い黒髪はいつものようにひとつに束ね、編み上げている。

 いつものように流していないため、ぱっくりと露出した背中が見えていた。

 一応得意の二本の小太刀は帯刀している。


「ほ、ほとんど裸に近いじゃないか。それにその鎧も」

「はい。ほとんど飾り(イミテーション)です」


 ダーナの登場を急かす会場のコールがここまで聞こえてきた。


「では行ってまいります」


 意を決してダーナは闘技場へと出て行った。

 露出の多い姿で現れたダーナを見て、一斉に下卑た歓声が巻き起こる。

 ダーナはいつになく羞恥に身を硬くしていた。


「あんな状態じゃ満足に戦えない。何考えてるんだ、インバブラの奴」

「ファンサービスに決まってるだろ」

「インバブラッ」


 あまりの異様な状況にインバブラが近付いていたことにも気づかなかった。

 そのことを反省しきるよりもダーナの状況の方が理解できない。

 ウシツノはインバブラに詰め寄ろうとした。


「あー、あー、落ち着けってウシツノ。今夜のダーナに危険はないって。全部計算ずくさ」

「なに?」

「ほれ。対戦相手を見てみなって」


 現れたのは魔物だった。

 しかし奇妙な形をしていてウシツノにはその正体がわからなかった。

 魔物は灰色がかった岩石のような色をしていた。

 体長は三メートルに届かないぐらい。

 岩肌のようだが縦に置いた円錐のような形をしている。

 どでかい目玉がひとつと、大きく裂けた口が中心にあり、見えている歯は結晶(クリスタル)のように輝いている。

 巨大な切り株のような、岩山のような体に、大きな目と口がひとつずつあるのだ。

 そして、ヒュンヒュンと風を切る音がする。

 目を凝らすとようやく見える。

 魔物には六本の縄状肢があるのだ。


「ローパーだ。とても珍しい魔物さ。あの触手のような腕で獲物を絡めて捕食するんだ」


 得意げに解説するインバブラだったが、ウシツノはダーナの身が心配だった。

 ローパーという魔物を前にして、さしものダーナも緊張を隠せなくなっていた。


「あんな魔物と戦わせてなんになるんだ?」

「だからファンサービスだって言ったろ」

「どこがだよ」


 やれやれという具合にインバブラはため息をついた。


「ウシツノよお。お前もニンゲンの世界に身を置いてだいぶ経ったろう。もうこの種族(こいつら)の狂った習性だって気付いてんだろ? ぇえ?」

「習性?」

「性癖でも嗜好でも呼び方は何でもいいさ。ニンゲンてのは食う、寝る、生む以外にどうでもいい、変なこだわりを追い求める特徴があるんだよ。そういうおかしな刺激に人生をかけるような、変態的な性がな」

「それとダーナに関係があるのか?」

「おおありさ。ここの観客どもはどいつも狂った価値観と倫理観しか持っていねえ。自分の不幸は全力で避けるが、見下す存在に対しては最高級のあがくさまを要求する。オレ様はそういうシーンをお膳立てしてやって、喜んでもらおうとしてんのさ。立派な仕事だろ」


 軽蔑の目でインバブラのご高説を窺っていたウシツノも、試合が始まると会場に目が向いた。


 しかし開始早々にダーナは窮地に立たされた。

 とても目で追えないスピードで振り回されるローパーの縄状肢に早くも全身を縛められてしまったのだ。


2025年6月9日 挿絵を挿入しました。

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