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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

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564 fixed match 【八百長】

挿絵(By みてみん)


 大男の肩の上に担ぎ上げられて、美女が背骨を反らされている。

 大男、ラクレスは断続的に力を籠めて美女、ダーナに苦悶の喘ぎを発させる。

 会場の盛り上がりはヒートアップしていた。

 長くじっくりと責められるダーナを鑑賞できると大盛り上がりだ。

 自然とラクレスの調子に合わせて掛け声まで上がり始めた。


「ダーナの方がオッズが高いんだろ? 負けそうなのになんで盛り上がるんだ?」


 ウシツノの素朴な疑問だったが答える者はいない。


「あぁっん」


 その時ひときわ大きなダーナの苦悶が響いた。

 ラクレスが(しま)いにしようと気合を入れて腕に力を込める。

 歓声の中に悲鳴も交じる。


「んッ?」


 その時ウシツノは違和感を覚えた。

 同時にダーナが苦しみながらも持っていた左手の小刀の柄でラクレスの側頭部を叩く。

 ゴスッという鈍い音が響く。


「うがぁ」


 その一撃が効いたのか、腕の拘束力がゆるみダーナがするりと地面に降り立った。


「やぁッ」


 掛け声とともにダーナのハイキックがさらにラクレスの側頭部を襲った。

 大男が膝を突き体勢を崩す。

 すかさず走り寄ったダーナ突きだったがラクレスはそれを躱すと再びダーナを掴み上げた。

 身体を上下さかさまに腰のあたりで掴まれる。

 そのままダーナの脳天を地面に叩きつけようとする。

 しかしその動きが途中で止まった。

 ダーナの両足がラクレスの首を絞めているのだ。


「ぐぉ……」


 逆さになったダーナの股間から青黒く染まった大男の顔が覗き見える。

 頸動脈を完ぺきに抑えられている。

 ついに失神したラクレスが背中から倒れた。


「勝者ッダーナァッッ」


 会場にダーナの勝利を告げるアナウンスと大きな歓声が鳴り響いた。


「おい、あそこ」

「ん?」


 ヤソルトが指さす先に全身を包帯で巻いた女がいた。


「昨日ダーナに絡んできた女だ。たしか、ネダ」


 ネダは憎々しそうに喝采を浴びるダーナを見つめていた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「あら、見にいらしてくれたのですか」


 控室のそばを通るとちょうど会場から降りてきたダーナと鉢合わせした。


「ああ、その、おめでとう」


 ウシツノの祝辞にダーナはにっこりとほほ笑んだ。


「それにしても、その、きわどい衣装だな」

「これですか? まあ、こういう恰好すると皆さん喜んでくださいますので」


 特に感情を込めることなくダーナは答えた。


「勝敗の方もきわどかったがな」


 ヤソルトの言葉にウシツノはドキッとしたが、当のダーナは事も無げにうなづいた。


「ピンチシーンも見せておいた方が盛り上がるんです。半分は余興ですよ」


 そう言って彼女は控室に入っていった。

 ウシツノとヤソルトは場所を変えて試合の話を続けた。


「違和感があったんだ」


 ウシツノがそう切り出す。


「ダーナが反撃に出る直前、あの大男のダーナを掴む力がスッと抜けたようだった」

「それはつまり……ああいうことか?」

「え?」


 ヤソルトが指差した先はピースウイングの執務室がある場所だった。

 その扉からラクレスが出てきたのだ。


「よかったゾ。次の機会もまた頼むからネ」

「へい。へへ、どーも」


 そんな掛け合いが聞こえた。

 ウシツノの前を通り過ぎるラクレスがチラリとこちらを見たが何も言わずに去っていった。


「駄賃をはずんでもらったようだな」

「おいヤソルト、それってまさか」

「ああ」


 ダーナの勝利は八百長、というより台本通りといったあたりか。


「あのゴブリンも闘技場の経営には人気者が欠かせないと思っているのだろう。ダーナはうってつけだった。ピンチになりながらも最後は勝つヒロイン剣闘士、ってところか」

「ダーナは知ってるのか?」

「だろうよ。志願してきたってのもどこまで本当か」

「それでまたあの包帯女が気に入らないわけか」


 ウシツノは複雑な気分になった。


「とはいえだ、オレたちの境遇に変わりはないさ」


 自室に戻るとヤソルトが腰かけながら重いため息をついた。


「オレもお前も話題性のある剣闘士に仕立てられる。ただ彼女のようにスターにしてくれるほど甘くはない」

「実力で生き残るしかないってことか」

「少なくとも半年はな。大闘技会とかいうのに強制参加だろう」

「うん、まあ、悪くはないかな」


 ウシツノの言葉にヤソルトは眉をしかめる。


「少なくともここでは戦いが毎日繰り広げられている。オレにとっても修行になる」


 自身の強さを確かめたい。

 ウシツノはここ最近、そのことばかりを考えていたのだ。


「ちょっと、前向きに取り組んでみてもいいかなって思ってるんだ。オレは」


2025年6月9日 挿絵を挿入しました。

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