表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

562/721

562 Mummy the Bee 【ネダ】


 近づいてくる者たちを見てダナナはあからさまにため息をついた。


「またあなたたちですか。いい加減わたくしに付きまとわないでくださいます?」

「アンタが嫌がってるんなら、それだけでも意義があるってことよ」


 先頭を歩く女が答える。

 そのあとを数人の剣闘士がにやけた笑いを張り付かせながら追随した。


「なんだ、こいつ? 剣闘士なのか?」

「ええ。木乃伊蜂(マミー・ザ・ビー)ネダ。ここで最も嫌われている剣闘士です」


 少々驚いた顔をしているウシツノの問いにダナナが答えた。


「ずいぶんな紹介ね。人気者に胡坐をかいていて? 剣の舞姫(ソードダンサー)ダーナさん」


 ネダという女が笑う。

 その声は少しこもっていて聞き取りずらい。

 それもそのはず。

 ネダは全身を包帯でぐるぐる巻きにしているのだ。

 目元以外、身体すべてを包帯で巻いている。

 全身のプロポーションを惜しげもなく披露している。


「変わったファッションセンスだな」


 ヤソルトもあまりに奇異な出で立ちについ口をついてしまう。


「新人ね。デビュー戦を見たわ。でもあれじゃあ到底生き残れないんじゃない?」

「……フン」


 ヤソルトは不機嫌そうに顔を背け、残っていた鶏肉にかぶりついた。


「ネダさん。御用がないのならそろそろ何処かへ行っていただけませんか」


 ダナナの発言にネダの目元が険しくなる。


「なんだい? あたしが新人に挨拶しちゃいけないってのかい? 先に仲良くなって味方を得たとイキってるんじゃないだろうね」

「……」

「この際だからハッキリさせとくよ。あたしはアンタが気に入らないのさ。ここのほとんどの奴らは好き好んで剣闘士やってるんじゃない。捕虜や奴隷だったり、分の悪い契約を交わされたり、食い詰めて仕方なくって奴も大勢いる。だから裕福な実家を捨て剣闘士に志願したアンタを、ここの奴らはみんな心の底で疎んでいるのさ」


 バン、と机をたたき身を乗り出してネダはダナナに顔を近づける。

 真正面から睨みつけるネダをダナナも真っ直ぐ見返した。


「せいぜい気をつけな。アンタに襲い掛かる刃は何も闘技場だけではないってことをね」


 ネダの取り巻きらしい剣闘士たちが囃し立てる。

 それでもそれ以上の反応を見せようとしないダナナに対し、ネダは舌打ちすると踵を返して食堂を出て行ってしまった。


「なんなんだ、あの女? 嫌がらせだけしに来たのか?」

「申し訳ありません。わたくしといたばかりに」


 頭を下げるダナナにウシツノは気にしていない旨を告げる。


「けれどネダの実力は本物です。もし対戦することになったら気を付けてください」

「そうなのか? あの包帯女がねぇ」

「噂ですが、マラガの盗賊ギルドで暗殺を請け負うチームにいたことがあるそうです。ただ全身をひどく火傷して今はあの姿でいるのだとか……」

「アンタは戦ったことはないのか?」


 ヤソルトの問いにダナナは首を振る。


「ネダとはありません。ですが彼女の取り巻きを二人殺しました。その辺りからわたくしに対して当たりが強くなりましたわ」

「なんで剣闘士に志願したんだ?」


 ヤソルトの次の問いにはダナナは答えようとしなかった。

 静かに席を立つと二人に小さく頭を下げる。


「お会いできて光栄でした。剣聖と、元マハラディア国王」


 去り行くダナナの背を見つめ、ウシツノとヤソルトは肩をすくめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ