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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: あずえむ
第七章 神威・継承編

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550/721

550 battle2 【元国王vs司令官】


「ヴヴヴヴヴゥ、ギャオオォォォッッッッッッ!!!!!!」


 天に向かって吠えるサチ。

 両肩の触腕が呼応するように周囲に広がる。

 それは天使かはたまた悪魔か、雄々しく羽を広げた様にも見えた。


「怒っているんデシね。何に対してアンタがそう怒っているのデシか? 呪われた境遇に? それとも他に哀しみがあるデシか」


 海のように青い薙刀を構えると、藍姫サチは雄叫びを上げてバンへと突進した。

 迎え撃つバンも牙を鳴らして威嚇の咆哮を上げる。

 ボディのサイズはサチに対してバンの方が圧倒的に巨体だが、広がる無数の触腕や触手がサチのボリューム感を邪悪なまでに増大させている。

 加えて後方から藍姫を支援しようと二人の戦闘怪人(ケンプファー)が虎視眈々と隙を狙っていた。

 バンはめまぐるしく周囲を目で追う。

 多方向から来るであろう必殺の脅威に対し、常に意識を全方位に向けなければならない。


(多数相手に強さを見せるタイプのようデシ。一対一(タイマン)好きのバンとは相性最悪デシ)


 待っていては不利になる。

 そう判断したバンは後足を蹴り、サチ同様、相手へと真っ直ぐに突撃した。

 バンの身体が再び白く輝くと、彗星のごとく光をなびきながらサチへと直進する。

 その光量と熱量、質量と迫力にサチは意表を突かれ、たまらず立ち止まった。

 広がった無数の触腕と触手がバンを止めようとして次々と弾かれる。

 微塵も勢いを殺すことも出来ずにサチは突撃をもろに食らい吹き飛ぶ。

 バンは上空に跳ね上がると急転直下、サチに向かい上空から落下による突撃を開始する。

 今度は多くの触腕でその突撃を食い留めるも、両者の身体はまたしても〈アリの巣〉の縦穴に吸い込まれるように落ちていった。

 このままバンはサチの身体を最下層の地面に押し潰す勢いであったが、触腕が縦穴のヘリや壁に突き立ち勢いを止め、触手が手すりや欄干に絡まり穴の中途で制動を掛けた。

 サチは薙刀で目前の白い巨体の腹を滅多刺しにしてやろうとする。

 しかしすかさずバンはサチを踏み台に岩壁に飛びのき何層目だろうか、飛び出た通廊へ着地するとすぐさままたサチに向かい牙を剥いて飛び掛かった。

 着地した通廊はバンの重みで崩れ去り、何人かの兵が巻き込まれ落下していく。

 触腕を幾本か壁に突き立てたまま空中でサチもバンを迎え撃ちやり合う。

 一撃弾き返すたびにバンの巨体は縦穴の壁面を崩しつつも再攻撃を繰り返す。

 そのたびにサチも青い薙刀を打ち払い、あるいは触手で応戦し、水撃を撃ち、外れた攻撃は無慈悲に施設に詰めた人々を巻き込んでいく。


「なんという事だッ! 藍姫と互角にやり合って居る、あの獣はなんだね?」


 サチが正体不明の獣と暴れているとの最初の一報を受けて、三人の白衣の博士が現場に駆け込んできた。

 そこは最初にバンたちが落下してきた最下層の厩舎広場である。


「あんな高いところに! ここからじゃよく見えないわ」

「しかし近付くのも、危険でしょう、ゴホッ、ほら、ここにも落下物が次々に……」


 施設の中心である巨大な縦穴内で戦う二匹の化け物に、みな目を奪われている。

 そんななか、ただひとり、上空の戦いではなく現れた三博士に向かい敵意をみなぎらせた者がいた。

 そいつは長剣を鞘走らせるとたまらず気合と雄叫びを上げて三博士、それも一番手前にいたカルスダという女に向かい剣を突き刺していた。


「ハッ!」


 普段冷たい眼差しに感情を見せないカルスダですら驚きに身を硬くした。

 全身群青色(ネイビー)の革鎧を着た男が、両手でもって突き出した長剣が目の前に迫っていたのである。


 だが剣は女に届かなかった。

 間に割って入った者がいた。

 軍服を着た巨漢。

 この施設の司令官を務める男、ベリンゲイである。

 不敵な笑みを浮かべながら、両手に嵌めた武骨な腕甲からせり出す巨大な刃を盾にして、男の長剣を防いでいた。

 ベリンゲイは相手の顔を見て下品な笑みをこぼす。

 よく見知った男だった。


「これはこれは、ヤソルト・クシャトリヤ元国王陛下。お久しぶりでございますな」

「ベリンゲイ……貴様ッ」


 ヤソルトと呼ばれた男の顔に憤怒の表情が浮かび上がる。


「このような場所で何をしておいでです、陛下? あなたの国、マハランディア王国はすでにこの世に無いのですぞ」

「まだ国王(オレ)がいるッ」

「ぶぁッハッハァッ! 王ひとりだけの王国とは笑わせますなァ。今度こそその首ッ、叩き落してくれましょうぞ」


 ガキィンと鋼の音をさせてベリンゲイはヤソルトの長剣を払いのけた。


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